なぜ、日本の公立小中学校の教員数が不足しているのか

2017/8/3
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
3日は、リクルートマーケティングパートナーズの小宮山利恵子さんが出演。「公立小中学校の教員数 全国で700人以上不足」(NHKニュース)を題材に、教員が抱える課題について解説しました。

教員が確保できていない

サッシャ 今日は、「公立小中学校の教員数 全国で700人以上不足」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の小宮山利恵子さんです。
小宮山さんは、リクルート次世代教育研究院の院長をされています。おはようございます。
小宮山 おはようございます。
サッシャ まずは、この記事の内容を教えて下さい。
小宮山 今、50~60代のベテラン教員の大量離職が話題になっているんですけれど、「教員の確保」がすごく問題になっています。
さらに、教員志望の方は少なくなっているという課題があるんです。
サッシャ 団塊の世代がリタイアをしているけれど、それを補充するほどの新しい教員がいないと。どのくらい減っているんでしょうか?
小宮山 かなり減っています。2016年春の公立教員の採用倍率は5.2倍になっています。これは6年連続で低下していて、一般的に7倍を割ると、教員の質が担保できないという話があるんですね。
サッシャ すると、今までの教員は7倍の倍率を勝ち抜いた人が教員になっていたということですか?
小宮山 そうですね。とても狭き門でした。

教員の労働環境が問題に

サッシャ なぜ、教員になりたい人が減っているのでしょうか?
小宮山 いくつか要因があると思うんですけれど、一番は教員の労働環境が悪いことだと思います。
長時間労働や、部活もやらなければいけない、さらに教員のキャリアパスが見えない。教員を辞めた後に、違う職に移ろうと思っても、移れないんです。
サッシャ 予備校や塾の先生には、つながらないんですか?
小宮山 いらっしゃいますけれど、まだ少数ですね。
サッシャ 「夏休みが長そうだからいいじゃん」と思ってしまいすけれど、意外と出勤しているんですよね?
小宮山 部活動を持っている教員は、出勤されていますし、給与も少ないので、難しい環境だなと思います。
サッシャ 公立の教員の給与って低いんですか?
小宮山 一般的には低くないと思うんですけれど、朝から夜まで、土日も働くことを考えると、時給で計算すると低いと思いますね。
サッシャ あと、最近はモンスターペアレントに頭を悩ませている、という話も聞きます。
小宮山 はい。2015年の調査ですけれど、教員の中でうつ病などの精神疾患にかかって休職されている方は、公立校(小・中・高、特別支援学校などを含む)で5009人いるとされています。
サッシャ これって一般の企業に比べて、その割合は高いんですかね。
小宮山 一般よりは高いと思いますね。
サッシャ なるほど、ストレスなども多いと。
小宮山 そうですね、閉鎖された環境にいる一方で、学校だけでなく、親とも付き合わなければいけません。
サッシャ 昔は、教員が「偉すぎた感じ」もするんですよ。でも、今はその反対というか。
小宮山 社会的な評価を得られているかが、結構大きいと思います。
教員が「先生をやっていてよかった」「社会のためになっているんだ」という意識があるかが、議論になると思います。
例えば、OECDの調査を見てみると、フィンランドでは教員の約60%が「社会に役立っている」という意識があるんですけれど、日本では約30%です。
サッシャ 子どもたちに対する威厳は保たなければいけないんだけれど、教員の置かれている立場は難しいですよね。

需要と供給のバランス

小宮山 教員は高尚な職業で、社会から尊敬されていいと思うんですけれど、その反対の状況になっています。
あと、700人不足とされていますけれど、フィンランドの場合は需要と供給を調整しているんですよね。教育学部の卒業生の95%は教員になっています。
日本の場合は、40%くらいで、教員免許を持っていても教員にならない方がたくさんいらっしゃいます。
寺岡 私の友人でも、免許は持っているけれど一般企業に就職したとか、受験したけれど採用に至らなくて、違う職に就いた人もいますね。
サッシャ 日本では、採用の倍率が7倍を切ると質が担保できないとされる一方で、フィンランドでは95%が教員になります。そうすると、大学に入るときフィルターにかけられているということですか?
小宮山 フィンランドでは大学に入るときにもかけられていますし、修士課程を修了しないと原則教員にはなれないため、かなり専門的な知識が求められています。
そのため、質に関して保たれていると言えます。
また、日本では、教員免許を保険として取っている学生は多いのですが、経済的にも好況で民間企業に就職する方も多いのかなと思います。
サッシャ そうすると、システム自体がちょっと破たんしているということなんでしょうか。
小宮山 循環が上手くできていないところはあると思います。50~60代の教員がすっぽり抜けた穴を埋めるにはどうすればよいかを、詰め切れていないのかなと思います。

教員の負担が大きすぎる

サッシャ どうやったら、20代にとって魅力的的な職業になるかというところですよね。
小宮山 長時間両道で給与が低いため、憧れの職業にするためにはどうすればよいかという議論が必要かなと思います。
サッシャ 日本の教員って、色々も求められすぎていると思うんですよね。
ヨーロッパの学校って、勉強しに行くところなんですよ。だから、社会的な常識を身につけることや、しつけは家庭がします。ドイツの場合は、スポーツクラブでスポーツをします。
そのため、教員は勉強を教える人で、しつけが悪かったら親が呼び出されて怒られる。日本では、教員の負担がやたら大きいですよね。
小宮山 おっしゃる通りだと思います。フィンランドでも、教員は教科学習にだけ専念して、部活は外部に委託しています。そうすると、夏休みの2か月を丸々休みにできます。
日本では、事務管理や採点などに関して、テクノロジーを使って解決できるところもあると思います。
サッシャ 部活もアウトソーシングしちゃえばいいと思いますけどね。元スポーツ選手とかで、教えたいけれどその枠がないと思っている人もいるだろうし。
小宮山 そうですね。地域や民間にそうした人材がたくさんいるので、その人材をどう活用するかが課題だと思います。
サッシャ 自分に当てはめて想像してみると、勉強を教えていて、子どもの態度が悪い。それは親のしつけが悪いのに、親から「あんた、うちの子どもの態度が悪いってどういうこと」とモンスターペアレントに言われたら、やりたくないもんね。なんだよって(笑)。
寺岡 割に合わない感じはあるのかなあ。
小宮山 そうですよね。フィンランドでは、モンスターペアレントなんてきいたことがないそうです。
サッシャ 親と対話はするけれど、むしろ親が怒られますからね(笑)。小宮山さん、ありがとうございました。
小宮山 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした小宮山さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
7日はForbes JAPAN副編集長の谷本有香さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください