学生起業はノーリスク・ハイリターン、日本に必要な起業家精神

2017/8/7
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
7日は、Forbes JAPAN WEB編集長の谷本有香さんが出演。「ベンチャー教育に敵なし!  九州大『起業部』熊野准教授」(Forbes JAPAN)を題材に、学生起業について解説しました。

150人の部員を集めた「起業部」

サッシャ 今日は、「ベンチャー教育に敵なし!  九州大『起業部』熊野准教授」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の谷本有香さんです。
谷本さんは、証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、フリーのジャーナリストに。現在は、Forbes JAPAN副編集長 兼 WEB編集長としてご活躍中です。
谷本 おはようございます。
サッシャ まずは記事の内容ですが、九州大学に「起業部」という部活があるんですか?
谷本 今年の6月23日に設立されたばかりという、できたての部活なんです。
サッシャ それでは、これまでの成果というよりも、「なぜこれができて、何をやるのか」に注目なんですね。
谷本 これは九州大学の熊野正樹先生が立ち上げました。熊野先生は前職の崇城大学でも同じように起業部をつくっていて、「日本一の学生起業家をつくる」として、成果を上げていました。
そこで、九州大学でもニーズがあるだろうと立ち上げたところ、1か月で150人の部員を集めたんです。
サッシャ ええっ。では、それほど九州大学の中に「起業したい」という気持ちを持つ学生がいるということですよね。
谷本 しかも、入部には色々セレクションがあり、そのうえでこの数字なので、実際にはもっと多くの学生が「やりたい」と言っていたそうです。
サッシャ 入部条件があるんですか。
谷本 「起業部に入ったら絶対に起業をしなければいけない」というのが条件です。
それくらいの熱量があるか、プランがあるかといった点などを見て、セレクションするようです。
サッシャ それでは、150の会社ができるということですよね。
谷本 チームでやるケースもあるので、150ではないかもしれませんね。また、チームによっては複数の会社が立ち上がるかもしれません。

起業家教育がなっていない

サッシャ なるほど。では、そもそもなぜ起業部をつくろうとしたのでしょうか?
谷本 いくつか要因があると思うんですけれど、一つは起業がブームになっていることですよね。
今あちこちで起業に関するピッチコンテストが開かれていますし、資金も手にしやすくなっています。
もう一つは、起業家や起業したい人が増えているにもかかわらず、「起業家教育がなっていない」と熊野先生が考えていたんです。
今、日本では「起業家教育がリーダーシップ教育に成り代わっている」と言われているんです。
また、起業家教育にもかかわらず、起業したことがない人が先生であることがとても多いんです。
だから、九州大学以外にも起業部はたくさんあるんですけれど、学生が実際に起業しているかというと、起業せずに就職している。そのため、熊野先生は「起業家教育は成功していない」と考えたんです。
サッシャ じゃあ、熊野先生も起業経験があるんですか?
谷本 あります。しかも、この方はすごく面白くて、起業しただけではなく、銀行やコンサル、テレビ制作会社で勤めた経験もあるんです。

起業家が日本復活のカギ

サッシャ なるほど。アメリカなどでは、優秀な学生は起業し、その次に優秀な学生は良い企業に就職して働く、といったイメージだと思うんですけれど、日本だと事情が違いますよね。起業したい人を支援することに意義があるということですか?
谷本 そうですね。先週、 駐日米大使を務めたジョン・ルースさんにお会いしたんですけれど、ルースさんといえばベンチャーキャピタルの総本山であるパロアルトの有名な弁護士でもあります。
ルースさんは安倍総理に「起業家をどんどん増やしていかなければいけない。それが日本にイノベーションを起こし、復活させるキーになる」とおっしゃっていたそうなんです。
そこで何をしたらいいかというと、彼は「若い人に起業家教育をすべきだ」と。なぜかというと、若い人には、パッションがあったり、向こう見ずであったり、社会人にはないアイデアもあったりするんですけれど、起業家スピリッツは一度企業に入るとなかなか育つものじゃないからです。
サッシャ 会社員になると、発揮できないですもんね。
谷本 なので、起業家スピリッツというアニマルスピリッツを育てることが、日本の生き残る道であると。
そもそも第二次世界大戦の後に、日本ほど起業家大国だった国はありません。それで大成功したわけです。
サッシャ そうですよね。今の大企業って戦後に起業されていますもんね。
谷本 そこで、若い人にアニマルスピリッツを思い出してもらうことが、日本復活のキーになるとおっしゃっていたんです。それは、熊野先生がやられていることと同じですよね。
サッシャ 「日本人は起業に向いていない」と思いがちだけれど、戦後の状況を見ると、日本ほど起業に向いている国民性はないかもしれないわけですよね。
谷本 おっしゃる通りです。そのアニマルスピリッツを思い出してもらうことと、その仕組みをつくってあげることが、今後重要になってくると思います。

ノーリスク・ハイリターンの起業

寺岡 実際に、部活から起業に一歩踏み出すっていうことが面白いなと思うんですけれど、まだ学生なので最初からうまくいくわけではないですよね。
そこが難しいところでもあると思うんですけれど、そのあたりはいかがですか?
谷本 それもおっしゃる通りだと思います。私は僭越ながら色んなベンチャー企業やスタートアップの審査員みたいなことをする機会があるんですけれど、そうすると学生のコンテストは「学生なのにすごいね」「学生なのにこんなことできたね」と、「学生なのに」という枕詞が付くわけです。
つまりは、大企業の方であれば一日でできることを、「1~2年かけてつくりました」というケースも多いんです。
なので、そういう学生が社会に出たときに、経験のある方と戦えるかというと、戦えないわけです。
そこで、学生にはメンターが必要です。メンターは熊野先生のような方かも知れないし、先陣を切っている起業家かもしれないし、大企業で技術などを研究してきた方かも知れません。
そうした方々と組んでいくことが、若い人の能力を伸ばすうえで重要なポイントになるのではないかと思っています。
サッシャ それに、若いうちに失敗することも重要ですし、それが次に活きるかもしれませんよね。また、海外のウェブ系の企業の例で言うと、学生のうちにアイディアを企業に買ってもらうことによって、新たな資金を得て、次の起業につなげることもあります。
谷本 ありますね。実際に起業家サイドからそうした機運も出てきています。
つまり、IPOだけがイグジットではない。M&Aで会社を売ることも出てきています。ただ、大企業側が買うかというと、そこまでの動きにはなっていません。
「本当にこの事業は大丈夫か」「こいつは信用できるのか」と、なかなか進んでいないのが現状です。
ただ、アメリカなどを見ると面白いもので、例えば自分の会社にハッキングしてきた14歳の子を雇ってしまこともあるわけですよね。
大企業側も、アニマルスピリッツがないのであれば、それを外部から取り入れて、イノベーションの種にしていくことを、やる必要はありそうですよね。
サッシャ なるほど。こうした企業や起業が増えて行くことで、日本の起業機運が高まって経済が活性化する。その中で、新たなものが日本から生まれていくと。
谷本 そういうことだと思います。熊野先生は学生のうちの起業は「ノーリスク・ハイリターン」とおっしゃっています。
それは若い人自身だけでなく、日本経済にとっても大きな影響を与えるという意味では、大きなウェーブになる気がします。
サッシャ なるほど。株式会社も安価につくれるようになりました。九州大学から世界的なサービスが生まれる可能性もありますね。期待しましょう。
谷本さん、ありがとうございました。
谷本 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした谷本さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
8日は、銀座テーラー専務の鰐渕祥子さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください