これからのテレビは、“放送”ではなく“サービス”と考えるべき
2017/8/1
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
1日は、メディア・コンサルタントの氏家夏彦さんが出演。「ネットの人気動画が一気に見れるアプリ『ViMET』、運営元が総額7000万円を調達」(TechCrunch Japan)を題材に、今後のテレビのあり方について解説しました。
テレビ離れに効くサービス
サッシャ 今日は、「ネットの人気動画が一気に見れるアプリ『ViMET』、運営元が総額7000万円を調達」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の氏家夏彦さんです。
氏家さんは、TBSで報道、バラエティ、情報番組の製作をされた後、TBSメディア総合研究所の社長を務め、現在はメディア・コンサルタントとしてご活躍中です。おはようございます。
氏家 おはようございます。
サッシャ 「ViMET」はどんなアプリで、どういう内容のニュースなのか教えていただけますか?
氏家 これはいわゆる動画アプリなんですけれども、動画の中身は大体数十秒から長くて数分です。
そして、ほとんどがYouTubeなどにユーザーが投稿した動画です。
実際に使ってみると分かるんですけれども、ユーザーインタフェースが良くて、すごく使いやすいんですね。サクサク見られるので、特に見たい動画がなくても、暇つぶしにはとてもいいものです。
サービスが始まったのは2年前なんですけれど、この6月で50万ダウンロードを突破しました。ベンチャーとしてはかなり勢いがあると注目されています。そこに7000万円が増資されたというニュースです。
サッシャ ユーザーが上げているのは、言ってしまえば違法動画なんですか?
氏家 もともと自分が撮ったものを上げるのであれば問題ないんですけれども、例えばテレビの画面をキャプチャーした動画を上げると、それは違法にはなります。
サッシャ それでも、これだけ増資を受けるということは、相応の注目される点があるということですか?
氏家 そうですね。僕は、このアプリに関して言うと、これを使うことでテレビ離れしたユーザーを、もう一度テレビに戻ってこさせる力があるんじゃないかと思っています。
今、若い人だけでなく、30~40代の人もテレビを見なくなってきています。
これは、確かにテレビがつまらなくなったこともあるんですけれども、それだけじゃありません。
一番大きいのは、他に面白いものが次々と現れていることです。スマホ一つとってみても、それだけでゲームやインスタグラム、LINEもできますし、動画サイトも見られます。
テレビが全てつまらないかというと、毎日放送しているたくさんの番組の中には、ちょっとは面白いものもあります。でも、これはリアルタイム以外だと、録画しないと見られません。
その中で、ユーザーがテレビを見て「ここが面白い」という個所を切り出して、動画サイトに上げている。それを次々に見られることは、有難いことでもある。もちろん、それ自体は違法アップロードです。
そして、それを見られるアプリも、アプリ自体が動画をアップロードはしていませんが、違法に上げられたものが見られる状態になっているので、グレーといえば「グレー」です。
だからと言って、このサービスを潰してしまえばいいかというと、違うと思っています。
こうした切り出しは、本来テレビ局がやるサービスを、ユーザー自らがやってくれているわけです。つまり、番組宣伝をしてくれているようなものです。これを見て面白いと思えば、本放送も見てくれるかもしれない。
そうしたことに役立つのではないか、という視点を持っているんです。
サッシャ 民間放送は、どうしてもスポンサーで成り立っているので、要するに番組を切り出してしまうとCMが飛ばされてしまい、スポンサーメリットがなくなってしまいます。
そのため、放送局はどうしても敬遠しがちというか、手を出しにくいんですけれど、それによって「この番組面白いじゃん」となって本放送も見られるようになれば、スポンサーメリットにもなるわけですね。
いかにネットと寄り添うか
氏家 さらに、未来のテレビを考えたときに、「どうやってネットと寄り添っていくか」がすごく大事なんですね。
ネットと寄り添うということは、つまり「ネットを使うユーザーと寄り添うこと」です。
これからのテレビは、放送と考えるのではなく、サービスと考えるべきなんです。視聴者と考えずに、ユーザーと考える。
サービスと考えた途端に、やることが全く変わってきますよね。放送だけじゃなく、その後もどう楽しんでもらうのか、いかにユーザー体験を豊かにしていくかを考えなければいけなくなります。
サッシャ 日本は、この点でかなり遅れていますよね。アメリカはケーブルテレビと契約すれば同時配信を見られるし、ドイツでもすべてのチャンネルがサイマル放送で見られます。
日本もそうした動きがありますけれど。radikoなどは、その試みですよね。
氏家 その話をしようと思っていました。まさに、ラジオではサービスができているんですよ。ラジオは聴き逃しに対応しています。
寺岡 タイムフリーですよね。
氏家 しかも、自分が気に入った番組の時間を指定したうえで、シェアすることもできます。
サッシャ 「ここから聴いて」ということができるわけですよね。
テレビには危機感が足りない
氏家 そういうお手本があるんだから、テレビも頑張ればいいと思うんですよね。
じゃあ、なんでテレビがそれをやらないかといえば、危機感が足りないからです。
テレビの視聴率は、2005年からずっと下がり続けています。特に、この数年は下がり方が大きくなっています。
それにもかかわらず、テレビの広告収入はじわじわ上がってきていて、この数年は横ばいです。
サッシャ 下がっていないんですか。
氏家 今のところテレビの広告収入が下がらないのは景気が良いからです。2020年までは続くと思われますが、そのあとは分からない。ドーンと落ちるかもしれない。
サッシャ そのために対策を打っておくのか、放置しておくのか、と。
氏家 テレビは将来どういう風にして生きていけばいいのか、どうイケているサービスに変わっていけばいいのか。
それは、2020年を過ぎてヤバくなってからいきなりやろうと思っても、そう簡単にはいきません。
サッシャ テレビは、コンテンツホルダーとして、リッチなコンテンツを持っているのに活かせていないんですね。
氏家さんとしては、ViMETのようなアプリが成功してくれた方が、時代は変わると考えていますか?
氏家 こういうテレビを材料にして遊んでもらえるサービスがどんどん出てきてもらった方が、テレビにとってはプラスになります。
テレビがあるからこそ、こういうサービスが出てくるわけですしね。
サッシャ あとは、いかにそうしたサービスに簡単にアクセスできるかを考えると。
氏家 その仕組みは、自分たちだけで考えてもできるわけないんですよ。ネットの人たちと一緒にやらなければいけない。テレビ屋はネットのこと全然わからないですから。
フリーの立場だから言えますけれど、驚くほど知らないですね。特に年齢が上の方は。
サッシャ 過去の成功体験があるから難しいんでしょうね。
氏家 成功体験が大きいのは、本当に大変ですよ(笑)。
サッシャ なるほど(笑)。
寺岡 実感がこもっていますね(笑)。
サッシャ 氏家さんはradikoに関しても思い入れがあるということなので、またぜひそうしたお話も聞かせてください。ありがとうございました。
氏家 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした氏家さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
株式会社ニューズピックスは、ソーシャル経済ニュース「NewsPicks」を提供する会社。2015年4月に、株式会社ユーザベースより分社化。 ウィキペディア
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