“高学歴女子”が、総合職ではなく一般職を目指す理由

2017/7/19
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
19日は、manma代表の新居日南恵さんが出演。「高学歴女子はなぜ今、あえて一般職なのか」(Business Insider Japan)を題材に、女子大生の就活事情について解説しました。

なぜ、一般職を選ぶのか

サッシャ 今日は、「高学歴女子はなぜ今、あえて一般職なのか」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の新居日南恵さんです。
新居さんは、「今の女子大生が安心して母親になれる社会をつくる」をコンセプトにした団体manmaの代表です。新居さんご自身も、慶應義塾大学大学院に在籍していらっしゃいます。
サッシャ 二度目の登場です。おはようございます。
新居 おはようございます。
サッシャ まずは、学生の方も聴いていると思いますので、一般職と総合職の違いからおさらいしてみたいと思います。
新居 会社によって、どういう分け方をしているかはまちまちなんですけれど、学生から見た一番の大きな違いは、転勤の有無であったり、業務における責任範囲の大きさであったり、労働時間の長さだと思います。
サッシャ その中で、高学歴の女性は「責任のある立場につきたい」と考えていると思いきや、一般職を選ぶ女性がちょっと増えていると。
新居 まさにその通りで、少し前までは女性でも「男性と同じくらい働きたい」「男性に劣りたくない」という意欲がすごく高かったと思います。
けれど、今では高学歴だからこそ、将来結婚や出産をした後でも働きたいと考えたときに、総合職として男性と競い合って仕事をするのは大変だろう、と。
「働き続けたいからこそ一般職の方がいいんじゃないか」という考え方に変わってきているという感じですね。
サッシャ 総合職だと、結婚や子育てにとって不利だということですか?
新居 イメージとしては、40代など上の世代が仕事中心のために結婚や子育てができなかったとか、両立しているけれどすごく大変そうな姿を見て、「そこまで頑張れないかも」という揺り戻しが来ている感じですね。
サッシャ それって要は、まだ日本の企業が全体として、女性が子育てをしながらキャリアを積むことへのサポートが充実していないことの表れですか?
新居 そうですね。あとは、働き方改革と言われていますけれど、やはり総合職として働く以上は、まだ労働時間が長いですよね。
保育園のお迎えは18時までとかなので、会社を17時に出なければいけない。すると、他の方が19時や20時まで働いている中では、罪悪感も覚えます。
なので、全体としてもう少し働く時間が短くなったり、休みが取りやすくなったりすれば、働くお母さんも生きやすくなると思うんです。
まだ会社全体としては、子育てをしながら働く女性にとって、心地よくないということですね。

イメージ先行とPR不足

サッシャ そんなに仕事をしたくないとか、責任のある立場につきたくないために一般職を選んでいる場合は別ですが、本当はキャリアを積んでバリバリと仕事をしたいけれど、家庭のことを考えて一般職を選んでいるとすれば、日本は人材を有効に活かせない社会で、活躍したい人が活躍できなくてもったいないということですよね。
新居 おっしゃる通りです。また、学生たちに話を聞いてみると、すごくイメージだけが先行してしまっています。
総合職といえども、会社によっては早く帰れたり、労働時間に関係なく活躍できたりするんですけれど、一般的には「無理だ」と思い込んでいるところもあります。
だから、「残業も深夜までじゃないのであれば、総合職でもいいんですか?」と聞くと、「それなら、いいです」という学生もたくさんいますので、本当にもったいなくて、社会の中で活かしきれていないと感じますね。
サッシャ これは新居さんから見て、学生の不勉強ですか、それとも会社側の説明不足ですか?
新居 もちろん両方あると思うんですけれど、学生側は出来うる最大限の努力をしている印象があります。
高学歴で一般職を目指す子は、OB・OG訪問で先輩と会って、会社の実情を聞いたり、家族に相談したり、彼女たちの精いっぱいをやりつくしたうえでの決断をしていますので、これ以上の情報収集をしてもらうことは無理だと考えています。
もっと会社や社会から主体的に「両立しているお母さんがいるんだよ」「総合職でもこういう働き方ができるよ」と見せていかないと、このまま変わらないなという気がします。
サッシャ 世の中は少子化になってきて、労働人口は減るわけですよね。そうすると、今後日本が世界で輝く国になるためには、仕事をしたいと思う人が輝ける社会にならなければいけないと思います。
そう考えると、社会としては選択肢を用意したうえで「どっちを選ぶか」ということについて、もっと伝えなければいけないですよね。
新居 そうですね。これだけ少子化や女性活躍と言われていますが、この問題にもう少し目を向けて行かないと、これから先に日本を担う人たちがスタートの時点で責任の少ない仕事を選んでしまっているので、すごくもったいないです。
もっと学生の段階、採用の段階から、女性が結婚や子育てをしながら活躍し続けられる仕事があるんだと、もっともっとPRしていかないと、ずっと変わらないと思います。
サッシャ 政府主導で働き方改革と言っているわけですが、厚生労働省の役人は、あんまりわかっていないということですか?
新居 ここまでの問題は分かっていなくて、今回取り上げた記事が載っているBusiness Insiderというメディアも、働き方に感度の高い記者が記事を書かれているので、なかなか表に出てこなかった問題だと思うんですよね。
40代くらいの方々は、女性が総合職を目指しているものだと考えていると思うので、一般職が増えていることは、まだまだ認知されていないと思います。
でも、今では慶應の大学院を出た子も銀行や商社の一般職を受けている時代です。
また、大人は「女性活躍が進んでいるから、女性も働きやすいでしょう」と思っていますが、学生はその点に関して昭和的で「女性は会社の中で活躍できないんじゃないか」「女性は不利で、昇進できないんじゃないか」と思っている方がたくさんいます。
そのイメージチェンジをしないと、この流れは止まらないと思います。
サッシャ ここでの問題は、意思を持って選択しているのか、消極的に選択しているのか、ですよね。やりたいのにやれない状態は、国としての財産の喪失ですよね。
それに、一般職で入社して結婚・出産をした後で、総合職につくのもなかなか難しいでしょう。
新居 本当にその通りです。また、一般職でも総合職の方と結婚して転勤が決まった場合は辞めなければいけなくなるかもしれません。
さらに、一般職の事務などの仕事も、今後AIなどによって代替されるかもしれません。
大人から見るとこうした「危うさ」はあるんですが、本人としては精いっぱい考えた結果です。就活時点では、大人が持っている情報とは大きなギャップがあります。それはこの記事のNewsPicksのコメントを見ても感じました。
だからこそ、諦めたり、一般職という選択をしたりすることもあると思います。
サッシャ なるほど。やはり、「もったいないな」という感じがとてもしました。新居さんありがとうございました。また来てください。
新居 ぜひ。ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした新居さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
20日は社会保険診療報酬支払基金の吉井弘和さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください