Google Lensは、今後の“検索”のあり方も変える

2017/5/30
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
29日は、東京大学大学院准教授の牧野泰才さんが出演。「AIで世界を認識する新技術Google Lens発表。被写体の情報をその場で調べ、AR表示やアクションを実行」(Engadget 日本版)を題材に、今後の展開や可能性などについて解説しました。

スマホの画像で検索が可能に

サッシャ 今日は、「AIで世界を認識する新技術Google Lens発表。被写体の情報をその場で調べ、AR表示やアクションを実行」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の牧野泰才さんです。
牧野さんは、東京大学大学院新領域創成科学研究科の准教授でいらっしゃいます。
ご専門は、タッチパネルに代表される、皮膚に備わっている触感に働きかけて人間を支援する研究「ハプティクス」です。おはようございます。
牧野 おはようございます。
サッシャ 今回の記事をピックアップした理由は何でしょうか?
牧野 今、機械学習や人工知能が非常に話題になっています。私の専門はハプティクスなのですが、われわれの分野でもどんどん機械学習が使われています。
その先頭を走っているのがグーグルやフェイスブックなどの企業ですので、そこで出される新しい機能にはとても興味があります。
特に、Google Lensはスマホで映像を撮ると、その情報が見えるものです。個人的にすごいなと思い、ピックしました。
サッシャ テリー(寺岡)は、「Google翻訳」は使っている?
寺岡 使ったことないですね。どんな感じなんですか?
サッシャ もともとは、文章を書くとそれを様々な言語に翻訳してくれるものなんだけど、今はあらかじめ言語を設定してカメラモードにすると、画像内のテキストを翻訳してくれる。
これとは、何が違うんでしょうか?
牧野 この記事で挙げられている例で言うと、野に咲く花にレンズを向けると、「この花が何の花なのか」という情報も出てくるんです。
寺岡 画像でもオーケーなんですね。
牧野 たとえば、子どもと道端を歩いているときに「この虫は何?」「この木は何?」と聞かれた時に、今は調べようがないですよね。
図鑑を持っていても、見た目の色だけでは検索できない。
それが、スマホの写真でそのまま検索できるようになるので、非常に便利だなと思いますね。

“検索させる手間”を省く方向へ

サッシャ すごいなあ。牧野さんは、具体的にどんなことができるようになると、未来が面白くなると思いますか?
牧野 この技術に関して、グーグルとしてはまだ途中段階じゃないかなと、思っています。
少し前に、「Google Glass」という眼鏡でAR的に情報を提示する技術を発表しましたけれど、そうしたものに今後繋がっていくんじゃないかなと思っています。
つまり、今はまだスマホをポケットから出して、対象にかざしてキャプチャーを撮る動作が必要です。
でも、眼鏡をかけたとき、目の前のすべてのものに情報が載っている状態になれば、こうした手間もどんどんなくなっていくんじゃないかと思います。
おそらく、「グーグルは“検索させる手間”をどんどん省いていく方向に進むんじゃないか」と予想しているところです。
寺岡 なるほど。もう、入力することが時代遅れになるんですね。SFの世界が現実に、という感じですね
サッシャ グーグルの中の人は、「ドラゴンボール」が好きなのかな? もしくは「ターミネーター」。相手の強さを分析する「スカウター」みたいなものだよね(笑)。
そういえば最近、電車に乗っていて、ちょうど思ったことがあるんです。
今、東京オリンピックが近づいていることもあって、駅の情報が色んな言語に対応し始めていますよね。
これに関して、たとえばGoogle翻訳を特定の設定にして駅内の情報に照らすと、どんな日本語も自分の国の言語に変換されたり、観光スポットが表示されたりすることも、実は可能なんじゃないかなと思ったんです。

検索のあり方が変わる

牧野 まさに、そういうことも可能だと思います。
そして、個人的に興味があるのは、これが一般的にできるようになると、“この形式で検索しやすくなるような情報の出し方”を、みんなが考え出すと思うんです。
どういうことかと言うと、今回の記事のコメントにも書いたのですが、たとえばリアルな世界にある看板が、正確に文字を読み込んでもらえるように「検索しやすいフォント」や「検索しやすい文字の並び」にするなど、リアル側が“SEO対策”することも生まれるかもしれません。
サッシャ 世界中、どこに行っても同じフォントになるかもしれないと。
牧野 そのため、グーグルが今までのようにインターネットの中の世界だけでなく、外の世界でもルールを生むかもしれない。これは、面白いなと思います。
サッシャ これには「全部機械に支配されて大丈夫なの?」というような脅威論もあると思うのですが、その点はいかがですか?
牧野 個人的には、技術で世の中が便利になるのであれば、ポジティブに捉えています。
心配される方がいるのは分かるんですけれど、こうした技術によって無駄な作業がどんどん減っていき、自分のリソースを別のことに使えるようになる社会の方がいいなと思っています。
サッシャ 翻訳するなど、調べる時間が減れば、その先のことができると。
今、牧野さんはハプティクス、触覚の研究もされていますが、このニュースと絡めると、どんな進化があり得るのでしょうか?
牧野 今、何もない空間で“触った感じを出す”という研究をしています。
サッシャ ええっ。空中なのに、グニュッとなったり、ドンッとなったりするんですか。
壁ドンならぬ、“空気ドン”ができるようになるんですか。
寺岡 空気ドン(笑)。
牧野 そうですね。これが可能になれば、私たちが空中の色んな情報にアクセスしたり、タッチできたりする社会になったときに、そこで触感を含んだ形で触れることもできるようになります。
サッシャ 面白い。やっぱり、ドラマで空気ドンが流行るようになるよ(笑)。
また最新情報を色々と教えて下さい。今日はありがとうございました。
牧野 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした牧野さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
31日はサンウルブズの野田大地さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください