スポーツ界の常識を破る、スマホを活用したデジタル戦略とは

2017/5/31
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
31日は、サンウルブズの野田大地さんが出演。「Bリーグ運営、スポーツ界の常識破る デジタル重視徹底」(朝日新聞デジタル)を題材に、スポーツビジネスのデジタル戦略について解説しました。

Bリーグで進むスマホの活用

サッシャ 今日は、「Bリーグ運営、スポーツ界の常識破る デジタル重視徹底」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の野田大地さんです。
野田さんは、ゴールドマン・サックス日本法人で証券アナリストとして活躍後、昨年から世界最高峰のプロラグビーリーグSUPER RUGBYに日本から唯一参戦するプロチーム、サンウルブズのビジネスデベロプメント部マネジャーを務めていらっしゃいます。おはようございます。
野田 おはようございます。
サッシャ 今回のニュースの注目点は、どこでしょうか?
野田 デジタル重視と書かれているタイトルの通り、今年Bリーグが盛り上がった一番のポイントは、お客さんを呼ぶため、つなぎとめるための施策が革新的であった点です。そのため、今回このニュースをピックしました。
サッシャ たとえば、どんなところでしょうか?
野田 記事で挙げられている例としては、これまで紙のチケットが一般的でしたが、スマホにすることによって、様々なデータが取れるようになりました。ここが、新しいポイントかなと思います。
寺岡 女性が多いのか、年齢がどうなのか、とかもわかるんですね。
野田 まさにその通りです。今までは、チケットが買われても、それを買った人が使っているのか、家族が使うのか、またお客さんに配っているのか、つまり「誰が来ているのか」を、主催者側が分かりませんでした。
主催者側は「20代が減っているな」「女性が減っているな」といった問題が分かれば対策を打てるのですが、誰が来ているのかが分からなければ、それができない。
今回のように、スマホチケットを導入すればデータが取れるので、可能になるんです。

デジタル戦略の“共有”

サッシャ それ以外のデジタルの利用で言うと、どんな注目ポイントがありますか?
野田 デジタルを活用した「チーム間の競争を促す仕組み」ですね。
「あのチームがこんなことをやっているよ」「こんな施策で盛り上がったよ」ということを、全チームで共有される仕組みがあるんです。
コートの上では敵同士ですし、どちらが勝つかが重要なんですけれど、そこから離れたときに「どうやってBリーグを盛り上げようか」と、手を取り合っている。これは、まれなケースだと思いますし、デジタルベースのデータで共有されることも、革新的かなと思っています。
サッシャ なるほど。Bリーグで言うと、ツイッターのフォロワー数やリツイート数をクラブごとに比較したり、バレンタインの日に各クラブのイケメン選手をピックアップして、ナンバーワンを決めたりしていたのは、面白かったですね。
また、オールスターゲームのMVPの投票も、SNSの投票を活用しています。普通、MVPって関係者が決めますよね。
さらに、今回のファイナルの時は、会場に入ると「アプリを入れて下さい」という促しがありました。そこでアプリを入れておくと、クラブが入場する時に自分の好きなクラブの色を出せるんです。
実際に、会場は栃木ブレックスと川崎ブレイブサンダースのチームカラーである黄色と赤色の2色がバーッと広がりました。これもスマホを利用した演出ですよね。
Bリーグは川淵(三郎)さんや大河(正明)さんなど、サッカー界から来た人が多いのですけど、サッカーよりも先進的なことをしています。
野田 そこでは、やはり人の部分も大きいと思います。他にも、事務局長の葦原(一正)さんも野球界からきています。
成功しているスポーツから新しい才能を採用して、新しいことにチャレンジしているのがカッコいいなと、スポーツに関わる人間として思います。
サッシャ ビジネスの観点で言うと、新しくできたリーグで、すごい先行投資しているなと思うんです。
ファイナルの試合も普段の試合も、演出がド派手じゃないですか。これは、絶対にお金がかかっています。ということは、リーグが担保してお金を使っているはずなんです。
その辺のシステムもすごいなと思うんですけれど。
野田 そうですね。LEDのコートをつくるなど、こんなにお金を使えてうらやましいなと思います。
その意味では、ソフトバンクがお金をかけて大きく成長させようとしているのが、よく見えますよね。

お客さんを知ることが大事

サッシャ いちファンとして心配なのは「来年以降、グレードダウンしないかな」ということなんですけれど。
野田 そこはやはり、お客さんをたくさん連れてくることで収益を上げて、より会場を盛り上げることに投資するという循環を、生んでいくのだと思います。
そのためには、冒頭にお話ししたように、お客さんのことを知って、どういうお客さんにアプローチして、より楽しめる環境をつくるか、について継続して分析する必要があります。
「来年以降、どうするか」を考えるうえで、お客さんを知ることが大事だからです。
Bリーグでは、すでにその仕組みづくりをやっているので、さすがだなと思います。
サッシャ ブームはいつか終わりがくるので、ブームを文化にするための先手を打っているということですか。
野田 そうですね。さらに次の施策も考えていると思います。
サッシャ 野田さんのご専門はラグビーです。2019年には日本でワールドカップも開催されますし、SUPER RUGBYにはサンウルブズも参加しています。
その意味で、ラグビー界はどうなんでしょうか?
野田 ラグビー界も、大きな変革の時期に来ていると思います。サンウルブズができたことも大きな変化ですし、ワールドカップに向けて盛り上がってきているので、新しい挑戦をしていくのでご期待いただければと思います。
サッシャ ラグビーにおいて、デジタルの活用はどうなんでしょうか。
野田 今回のようなスマホの活用に関しては、かなり現実味を帯びた検討もしていますので、背中を追っている感じかなと思います。
サッシャ 今年スタートしたBリーグは、去年のNBLとBJを合わせたお客さんよりも140%増加したと言われています。
この成功に寄与した施策などは、これから他のスポーツにも波及していくことになるんですか?
野田 まさに、そうだと思いますね。Bリーグの事務局長などからは、「一緒に手を取り合って盛り上げていきましょう」と声をかけていただいています。
エンタメとしてはライバルかも知れないですけれど、「すべてのスポーツが盛り上がるように色んな知恵をシェアしますよ」と言ってくださっています。
サッシャ なるほど。サッカーにお客さんを取られたから、野球のお客さんが減る、とかではないですよね。
色んなスポーツが見たくなれば、野球も、サッカーも、バスケの試合にも行きたいはず。いわゆる「客の取り合い」ではないなと思います。
野田 そうですね。違うと思います。
サッシャ 今後は、そこにラグビーも入ってくるということですね。野田さん、ありがとうございました。
野田 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした野田さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
1日はmanma代表の新居日南恵さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください