C(カジュアル)とS(シリアス)の対立と融合ハイブリッド

2017/4/26

SとCは対立概念

──GとLの議論もかなり浸透してきたと思いますが、冨山さんはもう一つSとCの議論を展開しています。改めて説明していただけますか。
冨山 Sはシリアス、Cはカジュアルです。このSとCは対立概念に近いです。
いわゆる「デジタル革命」が大体1980年代からどんどんその領域を広げています。このデジタル革命は大きく分けると第一期、第二期、第三期と分類できます。
第一期に起こったことはコンピューター産業のダウンサイジングです。この時はIBMという大帝国が倒産の淵に追い込まれました。IBMを倒産の淵に追い込んだのは、三菱でも日立でもなくマイクロソフトと、インテルです。この2社はもともとIBMの下請けでした。
第二期がインターネットとモバイルの時代です。このときも「通信の時代がくるぞ。勝者はモトローラやノキアだろう。国内だったらNECと富士通が有利だ」といった感じでしたが、現実に覇者になったのはFacebookやGoogleでした。また、インターネットとモバイルの時代になってAppleが劇的に復活しました。
このように第一期と第二期では各産業が従来とは全然違うゲームになってしまいました。
第三期はAIとIoTの時代です。これは自動車であれ何であれ、いろんな産業にその波が押し寄せています。
第二期まではこのデジタル革命はサイバーの世界で起こっていましたが、第三期はサイバーの世界を飛び出してきています。
今後出てくる自動車にしても、あるいは医療における本格活動にしても、リアルでフィジカルで、かつシリアスな領域です。これを「S」の世界と言っています。
第二期の象徴であるGoogleが伸びてきた世界はカジュアルな世界でした。これを「C」の世界と言っていますが、例えば「C」の世界においてスマートフォンが故障を起こしても、人は死なないですよね。
ただ、医療にしても、自動車にしても失敗をすると人が死んでしまいます。要するに、かなりカジュアルからシリアスにモードの転換が起きています。
この象徴が、昨年末に起きたキュレーションサイトの問題です。あの話は、もし医療サイトが絡んでなかったら、多分あのままです。キュレーションサイトでも、ファッションや映画の紹介で多少嘘や変なことを書いてあろうが、ちょっと炎上しておしまいですよね。
でも、あれが命に関わる医療や病気を扱っているキュレーションサイトだったから社会的に大問題となったわけです。
今後AIをやる企業で一番威力を発揮するのは、恐らくロボティクスや自動運転といったシリアスの領域でしょう。こういった領域には全部命が関わってきます。