[東京 6日 ロイター] - 日本たばこ産業(JT)<2914.T>は6日、無煙たばこ「プルームテック」の販売を今年6月から東京で開始すると発表した。全国販売は2018年上期に開始する。

「たばこベイパー(蒸気)」と呼ばれる同カテゴリーは紙巻煙草に代わる成長分野としてライバル各社の参入が相次いでいるが、小泉光臣社長は「拡販体制が整い次第、攻勢に出たい」と今後のシェア拡大に自信を見せた。

<「たばこベイパーは10年戦争>

同分野で先行しているのは、フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)<PM.N>の「iQOS(アイコス)」。充電式のデバイスが直接、たばこの葉を加熱する製品で、すでに全国展開をしており人気を呼んでいる。ブリティシュ・アメリカン・タバコ(BAT)<BATS.L>も昨年12月に、新型の電子加熱式たばこ「glo(グロー)」の販売を仙台市で開始した。

JTのプルームテックは充電式のデバイスにたばこの葉が詰まったカプセルとリキッドのカートリッジをセットし、蒸気をたばこに通して味わう方式。昨年3月から福岡市で販売をしている。

これら3社の製品は、ニコチンの入った液体を気化させる電子タバコとは区別されている。日本では、薬事法により電子タバコの販売が難しいため、たばこベイパーが各社の主戦場だ。

小泉社長によると、東京におけるプルームテックの販売時期は当初の予定よりも数カ月遅らせた。福岡でのテスト販売で予想よりも強い需要があったためで、同社長は会見で、販売後の品切れを避けるために計画を後ろ倒しにしたと説明した。

今年の年末には東京全域へ販売を拡大する計画。その結果、日本のたばこ販売に占めるベイパーたばこの割合(他社製品も含む)は昨年10─12月期の約5%から大きく伸び、15%程度に達すると同社は見込んでいる。

PMIのアイコスは昨年4月から全国販売をしているが、昨年12月最終週は国内市場シェアが7%に達した。たばこの新ブランドは発売から1年で0.5%のシェアが取れれば成功と言われる中では、異例の売れ行きだ。PMIによると、デバイスの生産体制は引き上げているものの、需要があっという間にそれを超えてしまう状況だと言う。

小泉社長は、「たばこベイパー戦争は今年、来年が終わりではない。10年戦争だ。あくまでもスタートライン」と指摘、プルームテック以外の製品についても研究開発を加速すると語り、今後もさらに同市場の競争が過熱するとの見通しを示した。

<17年は業績落ち込みでも増配>

JTは同日、2017年の当期純利益が4.7%減の4020億円になるとの業績見通しを発表した。たばこベイパー市場拡大の影響などで、17年の国内たばこ販売数量を9.6%減と見込んでいる。これは東日本大震災の影響など特別な要因があった年を除き、同社発足以来で最大の落ち込みとなる。

今年の年間配当金予想は10円増配の1株当たり140円とした。減益予想にもかかわらず増配を予定することについて、小泉社長は「プルームテックの市場投入とその伸びに経営陣が大きな手応えを感じた。これを株式市場にメッセージすべきだと思った」と説明した。

*本文中の誤字を修正します。

(浦中大我 清水律子)