打ち砕かれた従業員の希望。PE流の「工場改革」

2017/2/8
米国のビジネス界で存在感を高める、プライベートエクイティ(PE)。近年、その投資分野は、企業のみならず、公共インフラ、自治体にまで拡大している。全米を席巻するプライベートエクイティの全貌にニューヨーク・タイムズの取材班が迫る(全8回)。 
予告:年収800億円。プライベートエクイティ幹部の3つの収入源
第1回:現代プライベートエクイティの「冷徹な儲けの原理」
第2回:プライベートエクイティと年金基金の互恵関係

突然、希望が潰された

イリノイ州シラーパークは、シカゴ郊外の労働者階級が暮らす小さな町だ。
昔ながらのお菓子・トゥインキーの生産は約1世紀前、ここにあるレンガづくりの工場で始まった。2013年にプライベートエクイティのアポロとメトロポウロスが、トゥインキーの生産を担うホステスの工場とブランドの一部を買い取ったとき、シラーパーク工場もその中に入っていた。
ホステスがこの町に出した巨大広告には、「シラーパーク、ウィー♥ユー」と書いてある。ハートの部分のバックには、誰かがかじったトゥインキーの写真が配置されている。
だが、お祝いムードは長続きしなかった。
工場の本格的な再開から1年後、ホステスは再び閉鎖を決めた。すぐに415人の従業員全員が解雇され、た。シラーパークは最大の雇用主の1つを失った。近くにあるオヘア国際空港よりも古い工場は、突然がらんどうになった。
「希望を取り戻したところだったのに」と、バーバラ・ピルテーバー市長は語る。「突然つぶされてしまった」
 シラーパークのバーバラ・ピルテーバー市長(写真:Joshua Lott/The New York Times)