(Bloomberg) -- 東京証券取引所に25日に新規株式公開(IPO)する予定のJR九州は、本業の鉄道以外で海外収益の拡大を模索している。進出先として東南アジア周辺を検討している。唐池恒二会長(63)が11日、ブルームバーグとのインタビューで明らかにした。

「東南アジアあたりで具体的に何かないか検討している。外食のみならずマンションやホテルなど、私どもが持っている全てのサービスの中で検討している」と、唐池会長が福岡市内のインタビューで述べた。国を含めて、具体的に決まっていることはないという。JR九州はグループ会社を通じ、居酒屋「赤坂うまや」などを上海で計5店舗運営している。

中期経営計画によると、投資計画として本業の鉄道以外に九州における不動産やホテルなどの事業や九州以外への進出を打ち出している。2019年3月期までの3年間で650億円を鉄道事業における安全投資、800億円を成長投資に振り向けるとしている。JR九州は高配当と株主優待で投資家の取り込みを狙っている。

唐池会長は800億円の成長投資の累計目標について「さらに膨れあがる」との見通しを示した。「気がつけば、九州で最大の不動産業者になっていた。ナンバーワンになることにより、さまざまな優良物件の開発の話が舞い込み、今いろいろと精査している」と述べた。JR九州では鉄道以外の売上高の比率を前期(16年3月期)の60.3%から19年3月期に62%以上に引き上げる計画だ。

訪日客需要

政府は20年に訪日客4000万人を目指しており、JR九州ではこうした需要の取り込みを図っている。同社の新幹線や特急列車などの自由席に乗り降り自由の外国人向けフリーパスを前期に24万枚販売しており、今期は熊本地震の影響を受けながらも前期を上回る可能性があると唐池会長はみている。

「一時はアジアからの外国人訪日客は爆買いなどショッピングを目的として入ってきたが、徐々に日本固有の文化、歴史、食など極めて日本的なものに関心が移りつつある」と話す。特に中国人観光客は団体から少人数グループに変わっており「鉄道サービスを提供するわれわれには好ましい変化」だと述べた。

同社は、観光客向けにラウンジやダイニングを備えた高級寝台列車で九州を巡る「ななつ星 in 九州」など複数の観光列車を運行しており、国内外の多様なニーズ取り込みを狙う。

JR九州は6日、株価の仮条件を2400-2600円にすると発表。全株式を保有する鉄道建設・運輸施設整備支援機構は1億6000万株全てを市場に放出する方針だ。仮条件を基にすると最大で4160億円となり、国内では通信アプリのLINE(ライン)を上回り、今年最大規模の市場からの資金吸収となる。JRグループで上場するのは九州が4社目で、JR東海以来ほぼ19年ぶり。

(訪日客需要について第5段落以降に追加します.)

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