【横山×軍地】リーダーとして“天狗になっていた”私の転機

2016/9/18
AKB48グループの2代目総監督を務める横山由依さんがNewsPicksのプロピッカーと対談する新連載「教えて!プロピッカー」。政治・経済からカルチャーまで、第一線で活躍しているキーパーソンと対談し、基礎から学んでいく企画だ。
今回は、ファッション・クリエイティブ・ディレクター、雑誌編集者として活躍する軍地彩弓さん。ファッションの流行をどう生み出してきたのか、また女性をどのようにマネージメントするのか、などについて横山さんにレクチャー。
後編では、軍地さんが女性リーダーとして失敗した経験や、そこから得た学びについて話が展開した。
“女性の組織”が抱える難かしさ
横山 『GLAMOROUS』や『ViVi』は、どのくらいの人数で作っていたんですか?
軍地 編集者からスタイリストまで全部入れると、40~50人です。AKB48クラスの人数はいますよね。
私はディレクターとして企画のラインアップを決めて、それに合わせて「モデルの子は誰を使おう」「スタイリストは誰にしよう」と決めていました。
実は、私は学生時代から男の子が多い環境で育ってきたので、女性の集団は苦手でした。「おい、軍地!」みたいに、男扱いをされる環境の方がホッとするんです。
それがある日、『ViVi』に行った途端に、ほとんどが女性だったんですよ。カメラマンも女の子だったりするので。初めてロケバスに入った時に、女くさくて、「ウワーッ!」ってなりました(笑)。
この仕事は、女の子をちゃんとマネジメントしていかないと、何も回らない。一般的な意味でチームを束ねることも大事なんだけど、「誰々ちゃんと誰々ちゃんを組み合わせるとダメ」とか、「この子とあの子は、けんか中だから離さなきゃいけない」という、女の子同士で起きる諍いに対するケアが必要なんです。
中学生ぐらいの時の女の子の環境だなと感じましたね。どんな仕事も、女の子が集まれば、女子校の延長なんです。
横山 AKB48も同じだと思います。それを、まとめていらっしゃったんですよね。
横山由依(よこやま・ゆい)
1992年12月生まれ。京都府木津川市出身。2009年9月、AKB48第9期研究生として加入。2010年10月に正規メンバーとなり、2015年12月、AKB48グループ2代目総監督に
軍地 でも、結構失敗した時代もあったんです。『ViVi』の頃に「軍地さんと仕事したくない」って言われたことがありました。
横山 えっ、何があったんですか?
軍地 私が主張しすぎたんです。「この雑誌は、こうしなきゃいけない!」って、ストイックになりすぎて、周囲に自由を与えなかった。すべて、自分の意思を形にするために、考えを押し付けてしまっていました。
「良い物を作るためには、しょうがない」「結果で頑張ろうよ」と言っていたんだけど、「なんで、そんなふうに指示されなきゃいけないの」と反発されることもあって。
批判的なことを言われた時には、「売れることがみんなのためになると思って作ってきたのにな」と、トイレで泣いたこともあります。
仲間の言葉をとにかく聞く
横山 そんなことがあったんですね。それから、チームのメンバーに対しては、どんな部分を変えていったんですか。
軍地 「一緒に仕事をしたくない」と言われたとき、「相手に対するリスペクトが足りなかったんだな」と思ったので、まずは相手の考え方に立つように心がけるようになりました。
そして、相手が言うことを100%全部聞くことにしました。それまでは、誰かに声をかけられても「忙しい」と言いがちでしたが、正面を向いて、ちゃんと話を聞くようにしたんです。
また、人に対して感謝を伝えることも大切にして、「ありがとう」を口癖にするようにしました。
横山 相手に向き合うことを大切にしたんですね。
軍地 リーダーになった以上は、一緒に仕事をする仲間の言葉は聞くことが大事。話を聞いてあげると相手は安心して「それじゃあ、どうしようか」って次のステップに進めるんです。
反対に、「話を聞いてくれない」と思われると、起きたトラブルよりも問題が大きくなることもあるんです。
また、相手に何か言うときも、同じテンションで言葉を返しちゃうと、けんかになっちゃう。だから、言われた言葉を1回自分の中に吸収させて、一呼吸置いてから「こうじゃない?」って言うように少しずつ努力しました。
横山 ある意味で「一緒にできないです」って言ってきてくれた人が、きっかけになったんですね。
軍地 それを言われた時は、自分の中で『ViVi』を引っ張っている意識もあったし、周りにちやほやされ始めた時だったので、どこかに驕りが絶対にあった。
20代後半から30代の前半くらいは、天狗になっていたんだと思います。今は、その反省の下に生きているんですけど(笑)。
それに、当時の自分は人の上に立つ意識が、すごく弱かったと思います。
軍地彩弓(ぐんじ・さゆみ)
「ViVi」でファッションライターとして活躍、ギャル、109ブームなど数々のブームを仕掛ける。「GLAMOROUS」の創刊メンバーとして参加し、ファッションディレクターに就任。アラサーブームを生み出す。コンデナスト・ジャパンに入社後、「GQ JAPAN」編集長代理、「VOGUE girl」クリエイティブ・ディレクターをつとめ、2014年より「Numero TOKYO」エディトリアル・ディレクターを務めると同時に自身の会社「gumi-gumi」を立ち上げる。活動は、ファッションコンサルティング、講演など多岐に渡る。ドラマ「ファーストクラス」(フジテレビ系列)などの衣装監修も務めた。
“自分”を主語にすると壁にぶつかる
横山 私も、立場が変わったことで、自分がどうあればいいのか、すごく悩みました。後ろ指を指されたり、風当たりも強くなったりしたので。
軍地 みんな言いやすくなるんだよね。「リーダーだから」って。
横山 「リーダーなのに、こんな感じなのか」みたいになっちゃう。私は、元々スピーチやトークが上手くないけど、リーダーになって表に出る機会が増えると批判されることもありました。
「こんな人がリーダーなんて駄目だ」「たかみな(高橋みなみ)はできたのに」って、誰かと比べられることも増えたので、「今までの自分でいいのかな」「変化が必要なのかな」って、すごく悩みました。
そんなとき、私もメンバーからの一言が転機になりました。私がチームに対して上手く対応できなかった時に、ある後輩が「今日は、良くなかったですよ」「昔の横山さんとちょっと違いますよ」って言われました。その時、「何が違うんだろう?」って考えたんです。
そうしたら、「AKB48の総監督として頑張らなきゃいけない」って気持ちばっかりが強すぎて、自分を見つめ直す時間もなかったし、メンバーと向き合う時間もとれてなかったことに気付いたんです。
「なんで、私が総監督になったんだろう」って考えると、先輩も後輩も関係なくコミュニケーションをずっと取れていたからだと思いました。それをおろそかにしたら、自分には何もなくなってしまう。
後輩に指摘された時は、グサッと来て、実はすごく泣いてしまったんですけれど、それによって、自分を見つめ直せたんです。
軍地 私が失敗を通して学んだのは、力で抑えようとしたら絶対ダメだということ。「私がこうしたい」とか、主語を自分にすると、だいたい壁にぶつかります。
雑誌でいえば、「みんなで良い雑誌を作ろうよ」「次の号で、ムーブメントを作ろうよ」と、みんなの目標をゴールにしなきゃいけない。それができなかったから、みんながついてきてくれなかったと思うんです。
そして、改善は必要だけど、根本から変えてしまうとメンバーの不満が先だってうまくいかない。男性誌で初めて男性の部下を持ったときに、すべてを変えようとして強い抵抗にあいました。
だから、今の小池百合子さんの大変さも理解出来るんです(笑)。
横山 焦ると駄目なんですね。
リーダーとして必要なこと
軍地 リーダーは、ゴールを見せることと、人の話を聞いて感謝ができれば、80%は上手くいくんだと思う。その後の20%は、時代をつくるという、天才性もないとできないけど、これはできなくてもいいかもしれない。みんながついてきてくれることが一番じゃないかな。
AKB48も、大変なことがあっても「ゴールは、このコンサートのため」「最高のステージを作ろう」って言ってあげることが、メンバーの救いになると思うんですよね。
秋元(康)さんが由依さんを総監督に指名したのは、やっぱり、たかみなちゃんと違うリーダー像を考えたからだと思います。
たかみなちゃんって、すごく強いんですよね。私もよくAKB48の撮影に行っていたんですけど、やっぱり彼女がいてくれると、まとまることがすごく多かった。私たちだけだと人数が多くて収拾がつかない(笑)。
たかみなちゃんが、寝ている子やメールをしている子に「ダメだよ!」と注意して、すぐにチームがまとまっているのを見て「この子、すごいな」って感じていました。
横山 本当、そうですね。
軍地 だけど、秋元さんは同じものを求めてないと思うんですよね。今は、強いリーダーが引っ張るんじゃなくて、みんなが納得して「横山さんが言うことだったらついていきたい」と、良い意味で緩い集団みたいになるフェーズなのかなと。
秋元さんって、あえて「この人には無理」って思えるような、大きな器を与えると思います。私があっちゃん(前田敦子)を見ていた時に、そう感じました。
あっちゃんは、「自分はセンターの器じゃない」って、ずっと思いながらやっていた。でも、私たちから見ると、彼女が抜けた後では「やっぱり、あっちゃんはセンターだったな」って思いますよね。
あっちゃんと話した時に印象的だったのは、「私はもう、真空みたいな存在なんです」「自分がすごく輝くというよりは、みんなが私に集まってきてくれて、それでチームができている。私が真ん中にいることで、みんながまとまるんだ」と話していたこと。彼女はいろんな思いでセンターを務めていたんだと思います。
秋元さんって、そういう人の育て方をする人だなと思っていたので、由依さんは、それだけのことができるって思ってもらえているんだと思います。その信頼があることを、バックボーンに置けばいいんじゃないかな。
横山 ああ! それを自信にすればいいんですね。
軍地 そう。もう認めてもらっているんだから。「私なんか」って、ずっと言っている人は、「私なんか人生」になっちゃうから。出来るって思ってそこに向かっていく方が良いと思います。
それにね、そんじょそこらの組織より、女の子をまとめる方がずっと大変ですよ(笑)。
横山 ありがとうございます。すごく参考になりました。軍地さんでもたくさん失敗しているんですね。それに、その失敗を糧にどんどん自分自身が更新されて、新しい考えになって今があるんだとわかると、私も「頑張れそう!」って思いました。
横山由依はオシャレになれる?
横山 最後に、私も雑誌が好きでオシャレをしたいんですけど、全然オシャレにならないんです。これは、どうしたらいいでしょう(笑)。
AKB48に入りたての頃に、バラエティー番組で、私服チェックがあって、普通に着ている服に対して、すごくダサいっていう認定を受けてしまいました。
私は、普段の私服で派手なのを着たいとかもなくて、オーソドックスなものを中心に選んだら、地味でダサい、みたいな印象がずっとついちゃっているんです。
軍地 その場合は、アドバイザーみたいな友達をつくると良いです。やっぱり、雑誌だとモデルが着ている服だから、それを選んだとしても必ずしも自分に似合うわけじゃない。オシャレな服と似合う服って違うんです。
篠田麻里子ちゃんや、あっちゃんは、すごく私服がオシャレだから、そういう先輩とお買い物に行って、「これが似合うよ」って言われたものを、ちょっとずつ試すと変わってくると思います。
私もそうなんだけど、ファッションって自分では変えられないんですよ。自分の視点だけのオシャレには限界があるから。
横山 確かに、わからないですよね。
軍地 やっぱり服の傾向が似てきて、ルーティンになっちゃうじゃないですか。だから、一緒に洋服を探してくれる友達を見つけるのが、一番早いです。
横山 それで言うと、私がダサいところがあるということで、この間、小嶋(陽菜)さんがお買い物に連れていってくれたんです。
軍地 小嶋さんもオシャレで素敵ですね。どこのお店に行ったんですか。
横山 aquagirlとかAcneとか。小嶋さんが「こういうのが良い」とアドバイスしてくれたんです。
私が「じゃ、これはどうですか?」って服を選んだら、「それだと“参観日”になるからダメ」って言われちゃいましたけど(笑)。
軍地 オシャレって、自分が着ない服、行かなかったお店とかに触れないと鍛錬にならないんです。そして、客観性ってすごく大事で、人の目を通してオシャレなものを、ちょっとずつ取り入れていくと変わると思いますよ。
横山 ちなみに、軍地さんから見たら、どんな服が似合いますか。
軍地 私だと、ツモリチサトとか似合いそうだなと思います。ちょっとガーリーで、柄が可愛いものとかね。あとはsnidelやFRAY I.Dとかも、すごく似合うと思うけど。
横山 わあ。一緒にお買い物に行ってほしい。
軍地 ぜひ。私は「悩んだら買おう!」って買わせちゃうかも(笑)。
(構成:菅原聖司、写真:是枝右恭)