[東京 22日 ロイター] - 8月のロイター企業調査によると、日本証券業協会が新たに導入する情報開示に関するガイドラインについて、アナリストに対して「定性的な内容をどこまで発言してよいか」が不透明で、困惑していると回答した企業が65%にのぼった。

日本証券業協会が10月に導入する予定のアナリストへの情報開示に関する新しいガイドラインでは、企業がすでに発表済みの決算以外の情報をアナリストに提供することを原則として禁止する。新指針は、証券会社(セルサイド)のアナリストに適用され、企業や運用会社(バイサイド)のアナリスト、ファンドなどには適用されない。

企業はバイサイドのアナリストともIR説明などで面談するが、27%の企業はセルサイド、バイサイドといったアナリストの所属によって「話す内容を変えてよいか」が不透明と回答。実務上の対応に迷いがあることが示された。

この調査は、資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に8月1日─16日に実施した。回答社数は260社程度。

新指針では、情報を発信する企業側にも、アナリストが取得できる情報がこれまでと違うことを認識することが求められ、公平で公正な情報開示が定着することが期待されている。

しかし、コメントを寄せた企業からは、コーポレートガバナンスコードの導入により企業との対話が促進される中での新指針について、「対話が委縮する可能性が否定できない」(通信)との懸念も聞かれた。

「新指針の導入による今後の情報開示の仕方」について自由回答を求めたところ、120社がコメントを寄せた。その内訳は、アナリストへの対応はこれまでと、1)変わらない、2)慎重に対応する、3)情報を増やしたり積極的な開示をする、4)その他──の4パターンに大きく分かれた。

このうち19%(23社)は何も変わらないと回答。「ガイドラインがどうあろうと実態は変わらない」(化学)、「現状と変わりない 」(運輸・ユーティリティー)などのコメントがあった。

次いで18%(22社)はアナリストがルールを順守できるよう慎重に対応し、公正な情報開示に努めるとコメント。「公平・公正な情報開示の徹底を今まで以上に意識する」(機械)、「東証の適時開示を積極的に利用する」(非鉄金属)、「個人投資家が不利にならないような、公平な開示姿勢がより重要」(サービス)などの声があった。

一方で、15%(18社)は情報を充実させたり、ホームページの積極的な活用を挙げた。具体的には、「情報開示の内容を増やし、IT(情報技術)をさらに活用して積極的に進めていくべき」(食品)、「IRでアナリストに提供してきた情報をできる範囲で開示していく方向」(機械)、「事業会社側がより能動的に情報提供する体制が必要と考える 」(精密機器)といった声があった。

このほか「より中長期的な視点での情報発信に注力する」(電機)、「開示は詳細に行い、短期の予測はアナリスト・投資家に任せ、トップが中心になって中長期の会社方針を説明する方向がよい」(電機)などと、会社への理解を中長期のスタンスで促す考えを示す企業もあった。

(江本恵美、編集:石田仁志)