【侍03】テスラに正面から反論! Mr.水素が語る「ミライ」の未来

2016/7/5

テスラに送った「アンサーソング」  

2015年4月、トヨタの一風変わったプロモーション動画が、アメリカでちょっとした話題を呼んだ。
タイトルは「Fueled by Bullsh*t(燃料は牛の糞)」
トヨタが2014年にデビューさせた「ミライ」は、水素エネルギーで駆動する燃料電池自動車(FCV)。その水素は石油や天然ガスなどの改質だけでなく、「牛の糞」から取ったバイオガスでもつくり出すことが可能だ、というアピールだ。
実はこれ、アメリカの電気自動車(EV)メーカー、テスラモーターズに反撃したもの。
テスラのイーロン・マスクCEOは2013年、とある懇談の席で燃料電池について、ロケットにこそ向いているものの、車には向いていないとして「fuel sells are so bullshit」(燃料電池なんてばかげている)と発言し、話題を呼んでいたのだ。
他にもイーロンは、燃料電池を意味する「fuel cell(フューエル・セル)」をもじって「fool cell(フール・セル)」とこき下ろすなど、明らかにトヨタのFCVをライバル視した発言を繰り返していた。
これに対しトヨタは、公式の場でこそコメントしてこなかったが、まさに牛の糞(bullshit)で水素をつくり出すという、ウィットの効いた“アンサーソング”を仕立てあげたというわけだ。
トヨタが革命児テスラの向こうを張ってまでFCVに注力するのは、それが走行時に水しか出さない「究極のエコカー」と言われるからだ。
水素は多様な一次エネルギーからつくることができ、再生可能エネルギーから水素を取り出せば、完全なCO2フリー社会も夢ではない。しかも水素は、貯める・運ぶのにも適している。
もっとも、FCVの課題は水素を届けるインフラ整備と、燃料電池のコストダウンにあった。しかし、これまでトヨタは、これらを何とかクリアできる算段をつけてきた。
そのキーマンの1人が、政策面からトヨタを影で支えてきた、安藤晴彦だ。日本の新エネルギー政策に長年携わり、資源エネルギー庁の初代・燃料電池室長も務めた人物である。