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常にインプットとアウトプットは“ペア”にする

【堀江貴文×鈴木おさむ】面白い企画は“心の貯金”から生まれる

2016/3/21
さまざまなヒット番組の企画で知られる鈴木おさむ氏は、その企画術を初公開する書籍『新企画』を刊行した。同書には、新たに考案された新企画22個がケース・スタディー風に記されており、面白いアイデアのつくり方を具体的に学ぶことができるようになっている。今回は、刊行を記念して行われた堀江貴文氏との対談から「企画術」をテーマにリポートする。第3回では、前回に引き続き、鈴木氏と堀江氏のアイデアの源泉や面白い企画を考え出す方法が語られる(本記事は、堀江貴文イノベーション大学校で2月に行われた対談の一部を記事化したものです)。

企画の9割はタイトルが決める

鈴木:僕は、企画はタイトルが9割を決めると思っているんですけど、そういえば堀江さんもサロンの名前を最近変えましたよね。

堀江:実は夜に酔っ払った思いつきで考えたものなんですけど(笑)。でも、けっこう思うところがあります。有料サロンと聞くと月額1万円は高いと感じると思うんですけど、ビジネスの大学に通うと考えるならそれほど高くは感じないのではないかと思ったんです。

僕自身、慶應大学や早稲田大学に講師として呼ばれたりすることがあります。この前も、NewsPicksの企画で佐山展生さん・楠木建さんと公開授業をしたりしました。

ですが、よく考えたらこういう授業を全部ウチの大学でやればいいんじゃないかと思ったんですよ。そこでつけたのがこの名前(堀江貴文イノベーション大学校)です。

「鼻につく」企画が面白い

鈴木:僕は本の中で、企画に大事な要素として「鼻につく」ことを挙げているんです。もちろん良い意味で、ですけどね。

実際、堀江さんがやられていることもけっこう「鼻につく」じゃないですか。たとえば『Qさま‼︎』に堀江さんが出ているときに「堀江、失敗しろ」という人と「堀江がんばれ」という人との両方がいるんですよね。

さっきも堀江さんが大学って言ったときに、一瞬「鼻につく」わけですよね。普通「鼻につく」って良い言葉じゃないですけど、だからこそ「どれどれ見てやるか」となるので、とても大事なことだと思うんですよ。非もあって良いと思うんです。そこから話題になったりするので。だから堀江さんがクイズ番組に出て面白くなるのはそこなんだと思うんです。

堀江:僕としても勝てないと面白くないですからね。おさむさんの新著のタイトルは何でしたっけ?

鈴木:『新企画』というタイトルですね。これ、良いと思います?

堀江:僕は良いと思いますよ。

鈴木:タイトルも僕は「鼻につく」ことを意識してました。たとえばADや若い放送作家にとっては「新企画!? なんだこれ」ってケチつけてやろうと思ってもらえると思うので(笑)。

鈴木おさむ(すずき・おさむ) 高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。バラエティーを中心に多くのヒット番組の構成を担当。映画・ドラマの脚本や舞台の作演出、エッセイや小説の執筆、CMの企画や監督等さまざまなジャンルで活躍している

鈴木おさむ(すずき・おさむ)
高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。バラエティーを中心に多くのヒット番組の構成を担当。映画・ドラマの脚本や舞台の作演出、エッセイや小説の執筆、CMの企画や監督等さまざまなジャンルで活躍している

短時間で出したアイデアも面白い

会場からの質問:お2人のアイデアの源泉はどこにあるのでしょうか?

鈴木:『お願いランキング』の「美食アカデミー」を思いついたキッカケは、『家電批評』って本をコンビニで読んだことですね。新発売のテレビとかを家電好きの人が辛口で批評している本です。ばっちり写真も会社名も出てるのに思い切り批評しているのを見て、「これテレビでできないのかな」と思ったんですね。スポンサーがいるともちろんできないですけど、当時は『お願いランキング』をスポンサーなしでやろうとしていたんです。

テレビに関しては、絶対面白いのにどうしてやらないんだろうと思う企画ってけっこうあるんですよね。

堀江:テレビはその宝庫ですよね。

鈴木:堀江さんはたくさんインプットしていると思いますけど、どこからインプットしているんですか?

堀江:基本的には誰もがアクセス可能な情報源ですよ。ニュースアプリ、ツイッター、フェイスブック、メルマガ、あとは人ですね。

鈴木:堀江さんだったら会う人も多いでしょうし、人からの情報って大分濃いんじゃないですか?

堀江:いや、でも人に聞くのってそこまで多くないです。それに、聞いた話は全部メルマガに書いちゃいますからね。だから、特別なインサイダー情報に触れることは別にないですよ。

鈴木:情報は意図的にたくさん入れるように心がけていますか?

堀江:はい。それから、インプットとアウトプットはペアにしていますね。インプットした情報は必ず自分の中でそしゃくして自分の言葉でアウトプットするようにしています。だから、アウトプットがしやすくなっているこの世の中はとても良いと思ってます。メルマガとかで、いくらでも制約なしで書けるわけだから。

鈴木:僕の場合は、アウトプットを長引かせないようにしています。ある程度の時間で制限して出すんです。たとえばじっくり3カ月かけて企画を出すより、短期間集中して出す22個のほうが大事だと思います。

堀江:つまり3カ月かけるのって、99%を99.9%にする作業なのであまり変わってないわけですよね。それよりは粗くてもいいから7、8割出してみて、とりあえずやってみる方が生産的だってことですよね。

鈴木:堀江さんはメルマガで読者の質問に答えてらっしゃいますけど、それ自体がインプットになっているともいえますよね。自分と異なる世代の人たちの質問や意見を聞く機会って、それほどあるわけじゃないですから。

堀江:僕のメルマガを購読している人は、自分で質問の答えを考えてみればいいんですよ。質問は毎回何十問も来ているので、それに対して思考すれば相当いい訓練になりますよ。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)  1972年福岡県八女市生まれ。血液型A型。実業家。元・ライブドアCEO。民間でのロケット開発を行うSNSのファウンダー。東京大学在学中の1996年、23歳のときにオン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2004年から2005年にかけて、近鉄バファローズやニッポン放送の買収、衆議院総選挙への立候補など世間をにぎわせ時代の寵児(ちょうじ)となるが、2006年1月、証券取引法違反で逮捕され懲役2年6カ月の実刑判決を下される。2013年11月に刑期を終了し、再び多方面で活躍する

堀江貴文(ほりえ・たかふみ) 
1972年福岡県八女市生まれ。血液型A型。実業家。ライブドア元CEO。民間でのロケット開発を行うSNSのファウンダー。東京大学在学中の1996年、23歳のときにオン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2004年から2005年にかけて、近鉄バファローズやニッポン放送の買収、衆議院総選挙への立候補など世間をにぎわせ時代の寵児(ちょうじ)となるが、2006年1月、証券取引法違反で逮捕され懲役2年6カ月の実刑判決を下される。2013年11月に刑期を終了し、再び多方面で活躍する

企画のコツは「心に貯金をつくること」

鈴木:この世界に入ってから映画をたくさん見るようになって、1日1本見ることを3年くらい続けてきました。初めのうちは特に変化は感じなかったんですが続けていくと、あるときにふと会話の最中に、自分の検索データに引っかかったことがアイデアに結びつくことがありました。

そこで、アイデアを出す以前に自分の中にデータが少なかっただけなんだと気づいたんですね。

ただし、誰かほかの人がオススメした映画を見るようにしていましたね。自分の選んだものだと結局、自分の価値観に近いものばかりになってしまいますから。自分の価値観と違うものをどれだけ取り込むかが、かなり重要だと思います。

堀江:僕の場合は、何かを突き詰めるときは、ほかの生活を一切捨ててしまいます。パソコンにハマったら、たとえ周りがテスト勉強をやっていてもパソコンのことばかり考え続けるし。

ゴルフにハマったときは、1年で300日以上ゴルフをやったこともありますよ。14日連続で行ってましたし。そのおかげで知り合いも増えたし、道具にもめちゃくちゃ詳しくなったし、それにゴルフの本まで出したりしました。

鈴木:結局、本にせよ映画にせよ、知っていて損はないですよね。対象は何でもとことんハマることが財産になると思います。

あとは、単純に人と会うことも重要ですよね。僕は、ここ最近お相撲さんと仲良くさせていただいているんですが、これまで興味をもっていなかった領域の人と関わるのってすごく面白いんですよ。

堀江:相撲って、両国国技館という専用ステージでの圧倒的なライブ感、メディアの活用、スター選手という3つのプロスポーツの条件を兼ね備えているんです。

鈴木:なるほど。堀江さんは分析されるのが早いので話していて面白いですね。改めてお話しできてとても良い刺激になりましたよ。これでまた僕の「心の貯金」が貯まりました(笑)。
 【鈴木おさむ】新企画.001

(撮影:是枝右恭)

*目次
第1回:6新企画大公開。ヒット企画はこうして生まれる
第2回:ビジネスでは「小利口」になるな、「バカ」になれ
第3回:面白い企画は“心の貯金”から生まれる