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すべての前提を“フラット”に考えてみる

【堀江貴文】ビジネスでは「小利口」になるな、「バカ」になれ

2016/3/20
さまざまなヒット番組の企画で知られる鈴木おさむ氏は、その企画術を初公開する書籍『新企画』を刊行した。同書には、新たに考案された新企画22個がケース・スタディー風に記されており、面白いアイデアのつくり方を具体的に学ぶことができるようになっている。今回は、刊行を記念して行われた堀江貴文氏との対談から「企画術」をテーマにリポートする。第2回では、前回の新企画のアイデアを受けて、面白い企画を考え出す方法が語られる(本記事は、堀江貴文イノベーション大学校で2月に行われた対談の一部を記事化したものです)。

100個の引き出しを持つ

鈴木:仕事でうまくいかなかったときって、反省したりしますか。

堀江:反省というか再発防止策を考えます。

鈴木:今はいろんなジャンルでビジネスをされていますけど、ものすごい勉強をされてるんですか。

堀江:いろいろなビジネスをやってますけど、基本は一緒なんです。ただ、勉強は常にしていますよ。たとえば僕はメルマガをやってるんですけど、そこで扱う内容はオールジャンルなんです。読者からいろんな質問をされるので、もう何でも答えられますよ。

鈴木:じゃあたとえば「靴屋をやりたいです」って聞かれたら何て答えますか。

堀江:靴屋一つとってもいろんな引き出しがあるわけですよ。

ABCマートがいかにして成功したのかとか、イタリアまで修行に行った靴職人の話、ずっと閉店セールやってる靴屋の話まで知ってます。靴に関しても100個くらいの引き出しは持っていて、その人に最適な靴のビジネスを提案できますよ。

ビジネスに必要な“編集”能力

鈴木:じゃあ、僕のこの本を売りたいんですけど、たくさん売るためにはどうしたらいいですかね。

堀江:そうきますか(笑)。僕の『本音で生きる』って本が15万部売れたんですけど、実はそれがすごい悔しい経験で。僕に質問を何度かして、それが1冊にまとまっているんですが、聞き飽きた質問だらけで、僕のほかの本に書いてあることばかり答えているんですよ。

編集者の意図としては、僕のことを知らない人も出てきたから「堀江入門」みたいなものをつくりたかったようですけど。自分としては、新しいことを言っていない本が売れたことは悔しかったですね。まあただ、結果的に売れたので、編集者の戦略は正しかったということになりますけど。

なので、おさむさんの質問に答えると、いい編集者に編集をしてもらうのが、一番のポイントになりますね。

鈴木:なるほど。堀江さんもあると思うんですが、書店でどこに置かれるかも重要ですよね。僕の場合、ビジネス書っぽいエッセイを書いたときにも芸能コーナーに置かれちゃったりして……。芸能コーナーに置かれている時点で買わないじゃないですか。

堀江:僕も芸能コーナーに置かれちゃったりすることはありますね。やっぱりビジネス書コーナーに置かれたほうが売れてますよ。後は、メディアを有効に活用したらいいんじゃないですか? たとえば、NewsPicksは意識高い系のビジネスパーソンが読んでますから、目にとまりますよ。

鈴木おさむ(すずき・おさむ) 高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。バラエティーを中心に多くのヒット番組の構成を担当。映画・ドラマの脚本や舞台の作演出、エッセイや小説の執筆、CMの企画や監督等さまざまなジャンルで活躍している

鈴木おさむ(すずき・おさむ)
高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。バラエティーを中心に多くのヒット番組の構成を担当。映画・ドラマの脚本や舞台の作演出、エッセイや小説の執筆、CMの企画や監督などさまざまなジャンルで活躍している

バカこそビジネスの起爆剤になる

堀江:僕は、ビジネスで成功するのはバカなやつだと思ってます。バカはリスクがわからずに挑戦するからです。逆に「小利口」なやつはリスクのことばかり考えて実行しません。だから、中途半端に「小利口」になってはいけないんです。

鈴木:なるほど。この本にも書いてるんですが、「バカ」や「イタい」こそが大事だと思っています。

僕は、22歳くらいのときに、自分に発注がくるであろう仕事を先輩にとられたことがあるんです。そしたらその先輩は「待ってたら仕事を取られるぞ」と言ったんです。だから、そこからは図々しいくらいにやりたいことを口にするようになりました。

でも若手なのにやりたいことを言いまくるって、周りからすればけっこう「イタい」じゃないですか。それでも意外とそういう「イタい」声を聞いている人はいて、ちゃんと次の仕事につながることってあるんですよね。

「イタい」といえば堀江さんもそういうところありますよね(笑)。でもそれってすごいことだと思うんですよ、99人がバカにしたとしても1人はちゃんと見てたりしますから。そんな堀江さんは、どんな人を採用しているんですか。

堀江:僕は基本的に技術者しか雇わないんですよね。僕の採用基準にはNG基準しかないんです。メンヘラや自殺しそうなやつは不採用とか。今まで不祥事を起こす人間の特徴を散々見てきましたから、なんとなくわかるんですよ。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)  1972年福岡県八女市生まれ。血液型A型。実業家。元・ライブドアCEO。民間でのロケット開発を行うSNSのファウンダー。東京大学在学中の1996年、23歳のときにオン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2004年から2005年にかけて、近鉄バファローズやニッポン放送の買収、衆議院総選挙への立候補など世間をにぎわせ時代の寵児(ちょうじ)となるが、2006年1月、証券取引法違反で逮捕され懲役2年6カ月の実刑判決を下される。2013年11月に刑期を終了し、再び多方面で活躍する

堀江貴文(ほりえ・たかふみ) 
1972年福岡県八女市生まれ。血液型A型。実業家。元・ライブドアCEO。民間でのロケット開発を行うSNSのファウンダー。東京大学在学中の1996年、23歳のときにオン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2004年から2005年にかけて、近鉄バファローズやニッポン放送の買収、衆議院総選挙への立候補など世間をにぎわせるが、2006年1月、証券取引法違反で逮捕され懲役2年6カ月の実刑判決を下される。2013年11月に刑期を終了し、再び多方面で活躍する

朝食にスイカを食べてみる

鈴木:30代くらいの人たちに聞いてみると、堀江さんが出てきた頃に彼らは大学生だったから、「ビジネスかっこいい!」ってイメージがあったらしいんです。堀江さんがビジネスのモデルを一気に引き上げたから、それに続こうという人が出てきた時期があったと思うんですよね。

つまり、堀江さんがビジネスの偏差値を上げたと言ってもいい。そこで「バカ」の話に戻りますが、ビジネスの全体の平均値が上がったからこそバカがいなくなっていくことがあると思うんですけど、これについてどう思いますか。

堀江:最近はそうかもしれないですね。小利口でも、小利口でなくなるのが大事だと思います。

鈴木:小利口なやつが小利口じゃなくなる瞬間って、どういうときなんですか。

堀江:何かで小さな成功体験を得たとき、じゃないですかね。たとえば、明日の朝ごはんでスイカを食べてみようとか、そういう小さなことからでも「変わる一歩」を踏み出すことじゃないですか。

だって朝ごはんはパンかご飯だなんて、誰が決めたんだって話じゃないですか。あまりにみんながどっち派か聞いてくるから、どっちでもねえよって(笑)。

でも、こういう風に考え直してみると、いろいろとおかしいことがわかってくるんですよ。なんで毎日満員電車に乗らなきゃいけないんだろうとか、そもそもなんで新卒採用って一括じゃなきゃダメなんだろうとか。

そういう前提をぜんぶ一度フラットに考えてみることが、大事なんじゃないですかね。
 【鈴木おさむ】新企画.001

(撮影:是枝右恭)

*続きは明日、掲載します。

*目次
第1回:6新企画大公開。ヒット企画はこうして生まれる
第2回:ビジネスでは「小利口」になるな、「バカ」になれ
第3回:面白い企画は“心の貯金”から生まれる