米アマゾン、ボーイング機20機をリース契約-自前の航空網を構築
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エアカーゴの運営は、結構難しいと思う。まず、なぜエア使うのかというと早いから。一方コストはざっくり10倍くらいだと思う。そして飛行機というか物流は稼働が重要。つまり「需要が一杯ある路線に定期的に飛ばして、速さを効用として提供する」が基本ビジネス。
UPSやFedExは、様々なところから需要を集めてくる。Amazonは現段階ではそれができない。オペレーションの規模を比較すると、世界ベースでだがUPSは318機(①)、FedExは685機(②)保有している。つまり、ネットワークの規模が違う(ネットワークの規模を支えているのは、貨物の収集力)。
Amazonが自社でやるとどうなるか推測してみる。まず、早さ・需要量で自社需要が多いところに自社機材を投入する。そしてそれらの路線は他社への発注を減らす。一方で、それ以外の路線は現在と変わらない。需要が埋められて、単価が変わらなければコスト優位になる。単価が変わらないかが分からず、自社でやることで価格構造も一層分かるからよりネゴるかもしれないし、競争を懸念して取引価格を他社が上げるかもしれない(法律的に何が可能かは見ていないが)。まぁ、一社としての圧倒的な物量で、ネゴれる可能性が高いと見て意思決定したのだろう。計算通りにいくだろうか?
①https://www.planespotters.net/airline/United-Parcel-Service-(UPS)
②https://www.planespotters.net/airline/Federal-Express-(FedEx)
注目のコメント
すごいニュースですね。
ボーイング社が公表している767型の貨物専用機の価格は150〜160億円/機なので、20機なら合計3,000億円強の設備投資です(キャピタルリースですが)。
アマゾンは1兆円近い営業キャッシュフローがあるとはいえ、かなり攻めている印象。
別の記事によると、20機は全てアメリカ国内向け。
この20機という規模感ですが、スカイマークの保有機数が15年3月時点で31機*ですので、推して知るべし(佐山さん、違ってたらご指摘ください)。
自前で国際輸送に踏み出す日も近いと思うが、既存の貨物輸送サービスは戦々恐々でしょうね。
【追記】
注* 現在は26機を運航中とのこと。
佐山さん、わざわざ補足いただき、ありがとうございました。
King HIDIEさん、確かにリース期間は5〜7年とかなり短いですし、正価ではない可能性が高そうですね。ご指摘ありがとうございます。
ついでに補足すると、2014年12月末時点でアマゾンが稼働させていた物流倉庫の広さは米国で約5.5㎢、海外で4㎢、合わせて約9.5㎢です(平方メートルではなく、平方キロメートル単位です…)。
1年前の数値なので、直近では10㎢を間違いなく超えているでしょう。
これは東京ディズニーランドの20倍で、日本にある全ての物流施設面積の6割に相当します。すさまじい。
「利益?それって美味しいの?キャッシュフローはひたすら投資に回しますが何か?」という強い意志を感じますね。常人ではない。。。「ついに航空物流網に手を出した」ということで注目されるニュースではありますが、私の見解は少々違います。
①投資額としてはそんなに大きなものにはなっていない可能性
②本ニュースは投資額がすごいというより、AMAZONの圧倒的(でもまだ潜在的)なパワーにより、リース会社に対する囲い込みが注目される
■今回のリースは5~7年
上記リンク記事によると5~7年契約。それに対し航空機の経済的耐用年数は30~40年。しかも「新規」の機体をリースするとは言っていない。従って新規機体購入価格を丸々支払うことにはならないはずです。(なお、5年間はエア・トランスポート社が運行も担うようです。)
■そもそも航空機のカタログ価格はあてにならない
半値半額というと大袈裟ですが、極端に言えばそれに近い価格で取引されるのが通例。
■エア・トランスポート・サービシーズ社は小さい
傘下にCargo Aircraft Management(CAM)というリース会社を抱えています。保有機数は80機くらいで、シェアで言うとたぶん20位前後か。ただしトップのGECASは1700機くらいを保有するような業界ですので、相対的に見ればかなり小さい企業です。ちなみにエア社のFY14売上高は590百万USドル。下記は2013年度の資料ですが、767のリースに関してP17に記載があります。
http://www.atsginc.com/docs/investor/2013/2013-ATSG-SHP.pdf
■リース取引関係だけでなく資本関係/経営への参画も視野に
下記リンクによると
- 5年間に同社普通株の最大19.9%を1株9.73ドルで取得する権利(新株予約権)をアマゾンに割り当てる
- 取締役会の1議席を提供
とのこと。
https://newspicks.com/news/1438542/body/?ref=user_225356
これらから、相対的にエア社への交渉圧力が強い(逆に言えばエア社のアマゾンへの依存)。従って、相当安い価格でリースされると思われます。初期投資としては抑えめじゃないでしょうか。一方、資本関係や経営への参画をするところから鑑みるに、「コストを相当抑える」或いは「自社物流を超えた世界を見据えている」可能性があるのではないでしょうか。