仮想通貨だけではない。野口悠紀雄が説くブロックチェーン真の実力

2016/1/19
前回のスライドストーリーでは、ビットコインの根幹技術である「ブロックチェーン」について解説した。しかしブロックチェーンは、ビットコインのみならず、さらに広い文脈で世の中を変える可能性がある。ブロックチェーンの真の「応用可能性」とは。早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問・野口悠紀雄氏に話を聞いた。

POWという画期的な仕組み

ビットコインの仕組みを知るために、その根本にある「ブロックチェーン」という技術を理解する必要があります。まず、ブロックチェーンについて具体的に説明します。
電子的に決済をする場合は、その決済記録や送金記録が、信頼できる「第三者」によって管理されます。たとえば、金融機関や電子マネーの運営会社がそれにあたります。
一方、ビットコインでは、P2Pネットワーク(コンピュータ同士が対等に通信を行うネットワーク)によって管理されます。AさんからBさんへビットコインを送金するとき、「所有権が移った」という情報を、金融機関などの管理者ではなく、P2Pに入っている全員に通知します。
そこで、「Aさんは本当にビットコインを持っているのか」「同じお金をCさんにも送って、二重払いしていないか」など、不正利用の有無をチェックします。
その送金情報が正しいとP2P内のすべてのコンピュータが同意すると、送金記録は10分ごとに、誰でも閲覧できる「ブロック」に記録されます(全世界の送金記録が10分ごとに一つのブロックに記録されます)。
これを公開台帳方式といい、ブロックでつながる一連の記録を「ブロックチェーン」といいます。
ちょうど、広場においてある石板に取り引きの記録が刻み込まれるのに似ています。一度石板に彫ってしまえば、簡単に書き換えることはできません。
ただ、ブロックチェーンはP2Pで運営されているため、基本的に誰が入ってきているかわかりません。そのため、悪意のある人が、不正を働く可能性があります。たとえば、悪意のあるXが、「AさんからBさん」への送金記録を、「AさんからX」への送金に書き換えることも考えられる。