アフリカ市場を攻略せよ 第1回
【亀山敬司×牧浦土雅】死んでも文句言わないようなやつだけ、アフリカに行かせた
2015/10/27
DMM.comの次の目標を「アフリカへの進出」と定め、手を挙げた社員をアフリカに送り込んだ亀山敬司氏。ルワンダで農業・流通などのビジネスを展開する、牧浦土雅氏。異色の起業家2人が、アフリカのビジネスチャンスについて語り尽くす。
清い心を取り戻すために、旅に出た
亀山:俺は何年かに一度、誰にも行き先を告げずに旅に出るんだけど、今年の8月から1カ月ほど、アフリカを旅してきた。南アフリカのケープタウンから入って、そのまま北上していくルートで。ボツワナやジンバブエ、タンザニアなどを当てもなくぶらぶら歩いてきたんだよ。
牧浦:アフリカは一人で行かれたんですか?
亀山:うん。
牧浦:そうなんですか。もっと大勢で行ったのかと思いました。
亀山:いやいや、旅に出るときは一人だよ。まあ、「心の旅」のようなものかな。金儲けばかりしていたら人間汚れてしまうから、ちょっと清い心を取り戻そうと思って。
牧浦:なるほど。清い心を取り戻すためにアフリカを選んだ、と。
亀山:そうなんだよね。南アフリカからボツワナに移動して、オカバンゴ・デルタ(ボツワナ北部の世界自然遺産)にセスナ機で行って、野生のライオンが肉を食っている様子を見てね。それでやっぱり「自然っていいな」と思った。
牧浦:僕はルワンダでビジネスをしているのですが、ルワンダのサファリもいいですよ。野生のゴリラがそこらじゅうにいて、あそこに行った後は、富士サファリパークなんてぬるすぎて行けないです。ルワンダのサファリが普通の車だとしたら、日本のサファリパークはチョロQのようなレベル感ですから。
亀山:向こうは完全オープンで見放題だもんね。
牧浦:その分全部自己責任なんです。ゴリラはちょっと手が触れるだけでも人間が吹っ飛んじゃうぐらいの馬力を持っているんですが、たとえけがをしても命を落としても、運営側が責任を取ってくれることはありません。
現地にいるのは中国人ばかり
牧浦:アフリカは案外、近い場所になりましたよね。昨年には成田とアディスアベバ(エチオピアの首都)の直行便が就航しました。
これまではドバイやドーハ経由で、20時間以上かかっていましたから。オリンピックに向け、安倍首相はアフリカとの関係を強化する方針を示していますが、直行便の就航もその一環かもしれませんね。
亀山:どんどんやってほしいよ。やっぱりアフリカが旬だね。うちもそう思ったから、「アフリカに行きたいやつ、手を挙げろ」と社内で募って、手を挙げた24人の中の何人かに100万円ずつ軍資金を渡して送り込んでいる。俺自身は行きたくないから、社員を代わりに行かせた(笑)。
牧浦:その24人はどういった部署の人たちなんですか?
亀山:営業からエンジニアまでいろいろだよ。職種問わず、「行きたいやつは誰でも手を挙げろ」と。その代わりに「保証はどうなるんですか?」とか眠たいことを言っているやつは行かせなかった。行かせたのは死んでも文句を言わないようなやつだけ。
牧浦:どこに派遣したんですか?
亀山:とにかくバラバラに現地に向かわせた。群れて行ってもしょうがないからね。そこで、道をつくるでも、物を売るでも、何でもいいから、とにかく商売の種を見つけてこい、と。まだ何も報告が上がってこないけどね。
牧浦:どうしてまた、そんな手を打ったんですか。
亀山:5年、10年たったらアフリカの時代が来ることがわかりきっているから。今は、日本人はほとんどアフリカに行ってないよね。現地にいるのは中国人ばかり。中国人100人に対して、日本人は1人ぐらいしかいない。これはいいな、と思ってね。
牧浦:中国人はアフリカに進出していても、現地の経済に貢献していないという批判もあります。中国は国際協力の一環として、アフリカにホテルを建てるけれど、雇っているのは中国人ばかりで、現地の人の雇用を生み出していない、と。
ナイジェリアや東アフリカ諸国も、電線などの通信インフラを引くのは中国で、LTEなどを通すのは韓国のKT(韓国最大の通信事業者)という状況です。
亀山:だからこそなのかもしれないけど、現地で「チャイニーズ?」と聞かれて、「ジャパニーズ!」と答えると、結構優しくしてくれるわけよ。そのときは先人に感謝したね。
おそらく商社マンや青年海外協力隊の人たちなど、以前アフリカに行っていた日本人が優しかったんじゃないかな。一方で中国人は、「ものを奪っていく」というイメージがあるらしい。
牧浦:そう。ゴリゴリと土地を開拓して、自分のものにしたり。
亀山:人間って最後は好きか嫌いかなんだよね。日本人が好かれてるってことは、根本の部分ではビジネスもうまくいくんじゃないかと思ったんだ。
表敬訪問は結構喜ばれる
牧浦:実は日本人とアフリカ人は、性格的なところも似ています。中国や欧米の人たちは、最初から本音をガンガン出して、ビジネスを進めるじゃないですか。
でも日本人は、一見無駄にみえる表敬訪問を大事にする。とりあえず会って何も商談をしないなんて、中国や欧米の人からみたらあり得ないかもしれないけど、アフリカの人たちは結構そういうのが好きだったりする。
僕もケニアの奥地の部族を訪れたときに、酋長(しゅうちょう)の家まであいさつしに行ったら、絵の具で顔を塗られて歓迎されました。
亀山:いろんな人に海外に行く理由を聞くと、「人間関係ができるから」という声が多いよね。だから、アフリカに送り込んだ社員に言っているのは「とにかく何でもいいからやってこい。現地で人間関係をつくれば、そこから見えてくるものがあるから」ということ。
牧浦:そうですね。消費財からエンタメまで、すべてがブルーオーシャンなんで、何をやってもいいと思います。
亀山:日本だったら隙間を見つけるのは本当に大変だからね。DMMが今さらコンビニをつくることはできないし、物流に進出することも難しい。ITでもグーグルやアマゾンに対抗するのは大変だよね。でも向こうに行ったらやりたい放題。
牧浦:特に中古車ビジネスが儲かりそうですね。日本や欧米で使われなくなった中古車をどんどん流していく。トヨタの30年前のバンが、ケニアのナイロビでバスとして使われているぐらいですから。
もちろん、座席に座るのは怖いですよ。ブレーキが利かないやつもありますし、鍵じゃなくてアクション映画で出てくるような、中をいじくって導線でエンジンをかけるものもありますから(笑)。
亀山:加えて、日本が技術を教えて、中古車を直せる技術者を現地で育てれば、さらにいいよね。現地の経済にも貢献するから、日本の評判が良くなる。これこそが国益だと思う。
(構成:野村高文、撮影:遠藤素子、協力:DMM英会話)
*本対談はDMM英会話との連動企画であり、本編終了後には「裏・アフリカ対談」が同社公式ブログに掲載予定です
*続きは明日掲載します。