電通岸氏、6年間プレゼン無敗の秘訣は「思考量」と「怒り」

2015/8/31
水素エネルギーで走るトヨタ自動車の「MIRAI」という車のコミュニケーションデザインや、コナミスポーツの事業戦略、サービス開発など多岐にわたるコンサルティングを行う電通CDCエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターの岸勇希氏。30代の若さながら同社でエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター職を務めるのは、異例のスピードだ。
過去には、トヨタ自動車「アクア」キャンペーンや、商業施設「東急プラザ表参道原宿」のプロデュース、「すみだ水族館」の展示演出などを手がけ、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル金賞をはじめ、グッドデザイン賞ほか、国内外の賞を多数受賞する奇才の仕事とは、どのような思考プロセスから生み出されるのか? 
広告代理店に勤めていますが、最近は広告に加えて、事業領域の仕事が増えています。戦略コンサルティングの仕事にかなり近いかもしれませんね。たとえば、トヨタ自動車では水素エネルギーで走る「MIRAI」という車のコミュニケーションデザインを丸ごと担当していますし、コナミスポーツであれば料金改定から事業戦略、サービス開発などにも携わらせていただいています。

知識量より稼働率

基本的に自分の思考法は訓練によって誰でも身につけられるものだと思っています。やっていることはいたってシンプルで、「質より量」。誰よりも多く考えたと言えるところまで量を考える、それだけです。僕は自分が、あまり頭が良くないことを知っています。
実際、僕より頭の良い人は山のようにいます。でも自分で言うのもなんですが、スピードには自信があります。謙虚さが足りないかもしれませんが、自己暗示の意味も含め、考えるスピードが僕よりも速い人は少ないと思い込んでいるんです。
もうひとつ、脳に情報を格納する技術が人より優れているかもしれません。ある情報を見たときに、「これはこのカテゴリ」とタグ付けして脳にしまい、必要に応じてそれをいち早く出してくることができるのは特技です。
そのせいか、脳が影響を受け過ぎてしまうので、基本的に本は読みません。その代わり、見聞きした情報は全部脳内にストックされていて、眠ることなく活用されます。知識量は多くないけれど、稼働率が高い感じ。それが思考の速さを支えている構造だと自己理解しています。
頭は良くないけど、速さなら戦える。だからこそ僕は、この「速さ」を思考の「強さ」に変える方法を一生懸命研究してきました。予想するに、天才的な人はたぶん何をやるにせよ最初から神の一手が見えているのだと思います。瞬間的に「これが答えだ!」と。憧れますが、僕にはそれができない。