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「The Guardian」や「Forbes」は日経の報道姿勢を疑問視

日経のFT買収、欧米メディアはどう報じたか

2015/7/24

これはうまくいかなさそうだ

日本経済新聞社は23日、英教育・出版大手ピアソンから、英経済紙「Financial Times」(FT、フィナンシャル・タイムズ)を発行するFinancial Times Group(FTグループ)を買収すると発表した。日本経済新聞社はFTグループの全株式を8億4400万ポンド(約1600億円)で取得することで、世界的な事業展開を目指すという。

国内ではFTの電子版が報じた、日本経済新聞社による買収劇の内幕を明らかにしたディールの「最後の10分」が話題となっている。だが、この買収のニュースを受け、多くの欧米メディアは、日本経済新聞のジャーナリズムの信頼性と、出版の自由を疑問視し始めている。

たとえば、米国の大手ビジネス・メディア「Forbes」は、著名コラムニストのエーモン・フィングルトンが執筆したコラムを報道した。その見出しは、「日本がFTを手に入れた、これはうまくいかなさそうだ」。

そして、その内容とは「日本に英語圏のような“出版の自由”は存在しない。なぜなら、日本のメディアは猛烈な国家主義的な官僚社会に注意深く管理されている機関だからだ。FTは、日本の国家権力が管理するもうひとつの機関になる運命だ」と日本経済新聞社を批判している。

また、FTのライバルである英大手メディア、The Guardianの編集部も本件を社説で取り上げた。日本経済新聞社の買収は、ビジネスとしては納得できると報道した

一方で、東芝やオリンパスなどの企業の不祥事をリポートする際、日経新聞の報道は罪を犯した経営者を犯人扱いしないなど、甘すぎると批判している

このディールがうまくいくのかいまだに不透明だが、両社の社風の良き点を融合できることは理想的ではないか。世の中は正確かつ力強いジャーナリズムを必要としている。

FTは正確で力強い報道においては、世界一のメディアであることに疑う余地はない。

だが、そのジャーナリズムを運用するには豊富な資本力も必要だ。そこへいくと、デジタル世代にも成功するメディアをうまく築くシステムと資本は、日本経済新聞社が確実に持っている。

それをFTが持つ国際的なリーチ力やノウハウ、読者と融合すれば、メディア業界が全体的に革新する可能性は十分に高い。(文中敬称略)