「課長席」をなくした総務省。その狙いと効果

2015/7/10

課長席をなくしたら、働き方が変わった

つい半年前まで、課長は最も奥まった場所に座っていた。大きな窓を背に、職場全体を見渡せる絶好の席だ。
目の前には、課のメンバーが並んで座る。課長に最も近い場所から、課長補佐、その隣に係長。入り口に近い、いわゆる「下手」に平職員。「職員と課長との距離感」はおそらく席の距離に比例していた。
総務省行政管理局行政情報システム企画課。電子政府を推進する組織で、行政事務の電子化や政府共通ネットワークづくりなどを行う。15年1月に生産性向上などを理由にオフィスのレイアウトを変えた。課長の役職も権限もそのままなのに、その席を変えただけで、職員との「心の距離」が縮まったという。
登庁するとまず、フロア脇にある自分のロッカーに向かう。カギを開け、パソコンを取り出し、好きな席で仕事を始める。
フロアでは、外部の協力企業も含めて総勢100人ほどが働く。チームごとに座るエリアは決まっているものの、個人の座席は固定しないフリーアドレス制。個人用デスクも撤廃し、電話はそれぞれのPHSにかかってくる。

「声が聞こえる」が重要

課長の橋本敏さん(58)はこの日、入り口から最も近い「下手席」に座っていた。隣には1年目の職員。入り口に近いため、職員の出入りも多い。でも、このフラットな空気に手応えを感じていると言う。
「自分の周囲で、職員が仕事をし、会話をする。近くで職員の声が聞こえていることが重要なんです」
平職員から係長、そして課長補佐を経由して課長に。課内では、業務報告もお伺いも、下から上に順繰りに行われる。課長に情報が上がってくるときは、いわゆる「A4一枚モノ」と呼ばれる資料にまとまっている。
今回の改革を推進した課長補佐の加藤彰浩さん(30)も、「結構な用件がないと、課長に話しかけることはなかった」と言う。でも橋本課長は、それが問題だと感じていた。