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スマホ競争地図──「現3強」の牙城に挑む「新3強」

2015/7/8

通信業界は、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI(au)による「3強」時代が長く続いている。しかし、MVNO、SIMロック解除義務化に伴う「格安スマホ」の勃興により、その業界地図が塗り替えられる可能性が出てきた。なぜ今、業界地図が変わろうとしているのか。「現3強」の対抗軸となる「新3強」はどこか。インフォグラフィック版「業界地図」でモバイル業界の競争地図を描く。

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現在、「格安スマホ」のプレーヤーは乱立しているが、そのタイプはおおまかにふたつに分けられる。

ひとつ目のタイプは、格安料金のSIMカードを販売する「格安SIM」の企業だ。格安SIMには端末は含まれないため、別途、端末を準備する必要がある。MM総研の調査によると、2015年3月末時点での「格安SIM」の上位プレーヤーとシェアは以下のようになっている。

・OCN(NTTコミュニケーションズ):22.6%
 ・IIJmio(インターネットイニシアティブ):16.4%
 ・BIGLOBE(ビッグローブ):7.1%
 ・b-mobile(日本通信):5.3%

ふたつ目のタイプは、格安SIMと対応端末をセットで販売する企業だ。「格安スマホ」という際は、このセット販売型のプレーヤーを指すことが多い。

この「格安スマホ」の主なプレーヤーとしては、ワイモバイル、イオンモバイル、楽天モバイル、トーンモバイル(TSUTAYA)、DMMモバイルなどがある(一部の企業は、格安SIMと格安スマホの双方を扱っている)。

この中でも「新3強」の有力候補として、夏野剛氏は、楽天モバイルとワイモバイルとトーンモバイルの3社を挙げている。

数ある「格安スマホ」の中で、なぜこの3社が有望なのか。3社とも運営母体のブランド力、認知度が高い点に加えて、以下のような理由がある。

第1に、ワイモバイルに関しては、前身となっているイー・モバイル、ウィルコムの遺産が大きい。全国での店舗数は1000店以上あり、格安スマホ勢の中では、圧倒的な販売力を誇っている。ユーザーにとっても、店舗が多いため、サポートを受けやすいというメリットがある。

ワイモバイルの特徴を一言で言えば、「大手キャリア未満、MVNO以上」。料金は、大手キャリアよりは安く、他のMVNOより高い。1GB:2980円、3GB:3980円、7GB:5980円というシンプルな価格設定だ。10分以内の通話が300回無料なので、短い電話を多くするユーザーにとってはおトクと言える。

ターゲットとして、ワイモバイルは、非スマホユーザーのレイトマジョリティーを狙っている。

第2の「新3強」候補である楽天モバイルは、早期に1000万契約を目指すと宣言。夏からは、サッカーの本田圭佑選手のCMもスタートするなど攻勢を強めている。

その強みのひとつは、値段の安さ。通話SIMの場合、10GBパックが月2960円という価格設定だ。しかも、端末のラインアップが充実している(現8機種)。

楽天とのシナジーも大きな強みとなる。9977万人に上る楽天会員に売り込めるのに加えて、「楽天市場でのポイントが2倍になる」という特典が、楽天ユーザーにとってプラスに働くだろう。

販売はネットが中心だか、リアル店舗も8店まで拡大。今後、家電量販店などでの販売を始める可能性もある。

第3の候補は、トーンモバイル。CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)とフリービットの合弁会社だ。

トーンモバイルは、他のプレーヤーとは異なる独自の路線を走っている。その最大の特徴は、垂直統合。ネットワークはドコモに借りているものの、販売、スマホ内のサービス、端末の開発は自社で行っている。

また戦略がとにかくシンプルだ。端末は一種類のみ(2.4万円)で、料金体系も「通話基本料+パケット使い放題=月1000円」という設定。さらに、Tポイントとの連動も、大きな魅力となる。

ターゲットとしては、スマホがはじめてとなる小中学生、プラチナエイジ(団塊世代)、大手3キャリアからの移行組となっている。

(構成・文:佐々木紀彦、インフォグラフィック:櫻田潤)

*NP特集「2020年のモバイル」は、明日掲載の「楽天モバイル・平井康文社長インタビュー」に続きます。