富士フイルムが北米に約1800億円投資、抗体医薬品原薬製造設備を増強
コメント
注目のコメント
抗体医薬品を含むバイオ系の医薬品は研究の難易度は高いのですが、製造についても難易度は高く、先発薬と同等の技術水準を確保することは難しく、したがってバイオ系医薬品のジェネリック薬を作ることが難しいことも、バイオ系医薬品への参入の動機になっています。
バイオ系の医薬品は、大学等の非商業系の研究室で原理が発見されることが多く、特に1980年代~2000年代には、低分子医薬品にはノウハウを持つ大手製薬企業に製造技術が蓄積できていないことが多くみられました。そこで、バイオ系医薬品の研究と量産化を早くから始めていた大手製薬企業には、受託生産事業を事業の中心に据えた企業(ロシュなど)がみられます。低分子医薬品の製造にはない特徴です。
今回、富士フィルムが米国で工場に投資する理由を3点あげます。
(1) バイオ系医薬品の製造は高利益
一般に低分子医薬品の製造コストは低いものの、バイオの場合は一般に非常に高くなります。低分子医薬品の原薬製造とは競争環境が異なるため、富士フィルムはこの領域への参入に対して積極的に動いています。
(2) 新薬研究との相乗効果をねらった製造技術の向上
基礎研究能力を有する企業が製造受託することにより、基礎研究能力が向上する傾向が見られ、その後ロシュなどはバイオ系医薬品にシフトして成功しています。
(3) 米国で事業を行う必要性
企業は医薬品の価格が安い国での事業性には魅力が低く、逆に米国市場には魅力を感じているはずです。日本発祥の製薬企業の米国シフトは加速しており、その一環として米国に製造設備を置く必要があるのも理由の1つだと思います。この手の記事、日本語のメディアでは競合環境とかが一切わからず、とにかく日本企業の規模感だけが提示されるのが疑問。半導体とかだったら比較的マシだけれども、この事業のプレイヤーたちの見方はだいぶ異なる。今国内で盛り上がっているCDMO拡充論はどちらかと言うと細胞治療、遺伝子治療用の先端的なCDMO。富士フイルムが入っていくのは生物製剤(タンパク質製剤)および抗体医薬の原薬製造で、糖鎖の付加とか、スケールアップのノウハウが結構生きるけれども、立ち上がって20年あまり経った成熟市場。ちなみにサムスンを始めとする韓国勢はBiosimilar狙いでボリュームゾーン狙いでどんどん増強し、そして手に入れた技術でどんどん新しいモダリティにも入っていく体力と技術力を蓄積しつつある。
経済規模に比べてアーリーアダプターが少ない日本企業、日本市場のままで良いか?