【徳谷智史】「キャリア3.0」時代は、個人にチャンスが来る

2024/4/10
実践第一主義のプロジェクト型スクール「NewsPicks NewSchool」では、2024年5月22日(水)から『「市場価値」を高めるキャリア戦略』を開講します。
プロジェクトリーダーを務めるのは、エッグフォワード株式会社の徳谷智史氏。
大手からスタートアップまで1000社超の企業変革コンサルティングを手掛ける他、個人を対象に2万人を超えるビジネスパーソンの意思決定・キャリアを支援している、キャリア戦略のプロフェッショナルです。
開講に先立ち、徳谷氏の著書『キャリアづくりの教科書』より、「キャリア3.0」時代の本質の箇所を抜粋してお届けします。
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私たちはどんな時代を生きているのか

これからの時代、キャリアは旅(ジャーニー)のように、自ら行き先を決め、方向性を見出し、必要な武器(市場価値)を身につけ、歩んでいく。
中長期の方向性を常に意識しながらも、状況に応じてジャーニーのあり方を柔軟に描き直す。
そんなイメージが当たり前になっていく。
ジャーニーに出るにあたって、まず、世の中の仕事や働き方、つまり外部環境がどのように変わってきたか、そしてどう変わっていくのかを考えていきたい。この変化の流れは不可逆だ。
結論から言おう。あなたをこれから迎えるのは、「キャリア3.0」の時代だ。

「キャリア3.0」時代の本質

一括採用、年功序列、終身雇用という、遠い昔にどこかで聞いた「三種の神器」は終焉を迎えて久しい。もう、会社があなたのキャリアの将来に責任を取ってくれる時代ではない。いや、会社側も存続することに必死で、「責任の取りようがない」と言うほうが正しいだろう。
つまり、どの組織に所属しているかにかかわらず、自らのキャリアは自らデザインすることが不可欠な時代になっている。
わかりやすいように、大雑把ではあるがあえて「キャリア1.0」「2.0」「3.0」時代に分けて説明してみたい。

キャリア1.0

この時代は、「年功序列」「終身雇用」が前提だ。1つの会社・組織に入る。与えられた業務を通じて必要なスキルを学ぶ。レールに沿って経験を積めば雇用は保証され、転職する人も稀まれだった。一生懸命に頑張っていれば報われた時代だ。
大きな流れに逆らわずに身を任せ、進んでいく。いわば、「川下り」のようなものだろうか。会社が決めた道に適応していけば、未来は保証されていた。

キャリア2.0

終身雇用が少しずつ崩れ、転職も徐々に一般的になってきた。ただ流されるだけではなく、自身でキャリアを選ぶ人も増えてきた。
この時代は、自ら登る山を決め、山頂を目指し進んでいく「山登り」に喩えられるかもしれない。1つの会社に留まる場合は、昇進・昇格という頂を目指す。あるいは、転職をして登る山を変えた場合、その組織でまた新しい山頂を目指す。
選択肢は広がりつつも、まだ転職が当然とまでは言えないため、組織もある程度は社員が長く在籍してくれることを期待し守ってくれる、そんな時代だ。

キャリア3.0

そして、これからやってくる「キャリア3.0」の時代。キャリアは、「川下り」とも「山登り」とも違う、「旅(ジャーニー)」のようなものになる。
誰かの決めた道を「川下り」のごとく流されるのでもなく、あらかじめ定められた「山の頂上」を目指すのでもない。
もちろん、旅の過程で、川を下ってもよいし、山を登ってもいい。ただ、「誰かに決められたルートを歩むだけ」のキャリアとは、一線を画す。仲間とともに旅を続けるなかで、必要な力を身につけ、成長し、また新しい旅の目的地を見出し、新しい仲間と合流する。自身を成長させるなかで、風景も変わっていく。
いきなり「旅」と言われてもピンとこないかもしれない。本書の重要な概念になる「キャリアジャーニー」の構成要素について、もう少し補足しておきたい。
構成要素1:目的地
「どこに行きたいのか」、そして「自身はどうありたいか、どんな状態で働けることを目指すか」という目的地を、誰かに任せることなく自分で決める。最初はぼんやりとしていてもかまわない。
その出発点として、「自分は、自分のことをどう捉えているのか」という振り返りが大事になるだろう。これまでの人生はどんなものだったのか。それをふまえ、どこに行きたいのか。キャリアづくりの文脈で言えば、自分がどんな性質や志向を持った人間なのかを知り、理想の職場・業務内容を思い描くことにあたる。
構成要素2:武器
旅を望ましいものにするためには、武器や力が必要だ。それはスキルかもしれないし、一緒に行く仲間かもしれないし、語学力かもしれない。すべては目的地次第だ。
キャリアづくりの文脈で言えば、どういう準備をして自身の価値を高めるかを考えることだ。
構成要素3:ルート
目的地に行くためのルートは1つではない。飛行機で行く人もいれば、船でゆっくり向かう人もいる。途中から電車や徒歩に切り替えたっていい。どういうステップで行くかを選ぶところから、旅は始まっている。キャリアづくりの文脈で言えば、「転職」なのか、「独立・起業」なのか、「社内でチャンスを掴む」のかなど、目的地に到達するための意思決定が該当する。
構成要素4:終わりなきプロセス
旅に山登りのようなわかりやすい「終わり」はない。道中で出会う仲間とともに、想定しない出来事にどう対応し、どう旅を楽しむのか。見知らぬ土地での旅に伴う不確実性をどうくぐり抜け、目的地にたどり着けるか。着いたら、どんな日々を過ごすのか。
キャリアづくりの文脈で言えば、転職や起業は、スタートであってゴールではない。常に遠くの理想を見据えつつ、日々の仕事を楽しむ。そこで想像もしない経験を積めば、次の目的地ができることもあるかもしれない。
旅は1回の意思決定で終わりではない。どこまでも続いていくのだ。
さて、この「キャリア3.0」の時代、どんな環境変化が起こっているのだろうか。もう少し詳しく説明していこう。

「複数社」で働くことが前提に

まず、企業の寿命や、個人が1社で働く期間が縮む。キャリアがより「流動化」していく。正確に言えば、仮に同じ会社で働き続けるとしても、仕事の中身や組織形態は大きく変わることが前提となる。
たとえば、製造業でも、商社でも、IT業でも、金融機関でも、同じ社名の会社の事業の中身が10年前と大きく入れ替わっていることはざらにある。
新しい事業・組織が生まれ、その反面、過去の主要事業・組織が淘汰されていくこともある。
少なくとも、変化し続けないかぎり、事業・組織は生き残れない。そして、事業の変化に応じて、求められる人員もまた変化する。
従来の事業でしか通用しない人員の入れ替えや適正化(リスキリング)、抱えきれない人員(正社員)を、柔軟に活用できる雇用形態の人員(業務委託・有期社員など)に置き換えるなどの流れは進まざるをえない。
以下の図は、いわゆる「安定企業」とされる上場企業における、2009年からの希望・早期退職者募集の社数と対象人数の推移だ。
リーマンショック後の例外を除くと、上場企業であっても、早期退職者は増えている。かつては早期退職者といえば給与水準が高い50歳以上がメインだったが、最近は年齢制限を設けないか、もしくは35歳以上などという形で対象年齢が下がっている。
いち経営者としての私の視点から見ても、今とまったく同じ事業で、変化を起こさずに会社を存続させられると考えている会社はまずない。
そして、事業を変えれば、求められる人材も変わる。過去と同じマインドやスキルセットの社員を抱え続ける前提で経営するのは難しくなってきている。
働く個人の視点から見れば、生涯同じ会社で、あるいは同一の業務で働く前提はなくなり、複数の組織で複数の職種を経験し、転職や副業もさらに一般化していく。
実際に厚生労働省のデータでは、30代半ばまでの転職経験率は65%程度だ。就活で起こるミスマッチでやや数字が高く出ている可能性を考慮しても、もはや1社のみに勤めるケースのほうが稀になっているといえる。

個人にチャンスがある時代

何度か環境を変え、組織を渡り歩き働くことは今後もはや「前提」となる。
働き方も流動化し、起業やフリーランスはもちろん、正社員として働きながら副業に携わる人は、すでに加速度的に増えてきている。
特に、エンジニアやデザイナー、広報やマーケティング、財務など専門性の高い職種、仕事が切り出しやすい職種の人の副業は、すでにわかりやすく活発化している。
今後は、労働人口の減少により人手不足が進むため、価値の高い人材ほど、同時に複数の組織への関与が求められてくるだろう。
企業側の視点で捉えても、健康寿命がこれだけ延びると、終身雇用を保証することは、収益構造からみても難しい。費用対効果の悪い人材を抱えることも、年配の人材の好待遇を若手の労働で支えることも、もはやよほどの高収益企業でないかぎり不可能だ。
あくまで労働法制の範囲内でだが、「年次の高い、つまり費用対効果の悪い人材にどう円満に退職してもらうか」という相談を受ける機会が近年増えてきた。
企業側も、人員のピラミッド、つまり年次別の構成割合を一定若くキープしたい、「年齢」よりも「付加価値」に応じて報酬を払いたいというニーズが強まっている。
ただ逆に言えば、価値の高い人材には、年齢によらず非常に高い報酬を出す意向も強い。
一世代前までは終身雇用が珍しくなかったことを考えると、「なかなか厳しい時代になった」と思われるかもしれない。しかし見方によっては、個人にチャンスがある時代とも言える。
複数社、複数組織で働くことが前提ということは、最初に入る会社を決めた後も、自らの意思決定次第で常によりよい環境を選び、自身の望む姿の実現に向かうチャンスが広がっているともいえるのだ。
「市場価値」を高めるキャリア戦略』は、2024年5月22日(水)からスタートです。
皆様のご参加をお待ちしております。
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