2024/3/15

【新技術】福島の廃炉が「究極の半導体」を実用化に近づけた

NewsPicks 編集部 記者・編集者
福島第1原子力発電所の事故から13年。今も燃料デブリが残されたままの原子炉格納容器をゆりかごにして、一つの新しい技術が生まれようとしている。
高い性能から「究極の半導体」と呼ばれるダイヤモンド半導体だ。
高温・高放射線量下でも動く特性から研究が行われてきたが、コストや技術面で課題が多く、実用化されていなかった。
それが福島第1原発の事故処理の中で採用されることになり、急速に実用化に向けた研究が進んだ。2024年末頃には福島県双葉郡大熊町で商用化のための工場の建設が始まる。
作られたダイヤモンド半導体は、原発の原子炉格納容器内の放射線を測る機器に使われるほか、宇宙や通信の分野への応用も想定されている。
究極の半導体はどこまで実用化に近づいているのか。生産の拠点となる工場建設を進めるスタートアップ、大熊ダイヤモンドデバイス(北海道札幌市)の星川尚久CEO(最高経営責任者)と共同創業者で北海道大学准教授でもある金子純一取締役に聞いた。
INDEX
  • シリコンの「次」
  • 原発の次は宇宙
  • 5G、6Gにもダイヤモンドが使われる
  • 「事故があったからこそ」

シリコンの「次」

大熊ダイヤモンドデバイス(北海道札幌市)は、次世代の半導体として期待される「ダイヤモンド半導体」の社会実装を目指して、北海道大学、産業技術総合研究所の研究者と起業家の星川尚久さんが2022年3月に創業した。

同社は福島第1原発からほど近い場所に数十億円を投じて工場を作る計画だ。2026年4月頃の稼働を目指す。数十人が働き、年間数万個を生産する計画だという。
──そもそも、ダイヤモンド半導体とは何ですか。