Charlotte Van Campenhout Toby Sterling

[アムステルダム 12日 ロイター] - オランダ最大の企業で半導体製造装置メーカーのASMLが最近、国内で成長が不可能になれば国外に出て行くと警告を発し、企業にとってオランダでの事業環境が悪化し続けている実情が浮き彫りになった。

ASMLは全面的な国外移転は否定している。ただロイターがオランダの主要企業十数社に聞き取り調査を行ったところ、ASML以外にも多くの企業が国外に拠点を移すことを選択肢として考えていることが分かった。

近年オランダでは企業への増税が相次ぎ、シェルなど複数社に不利な裁判所の判決が下されるなどの動きが広がり、2023年の総選挙ではポピュリズム(大衆迎合主義)を掲げる政党が躍進。このため企業側は、移民の抑制や企業と投資家の税負担強化につながる政策への反対姿勢を明らかにしている。

これらの政策は有権者にアピールできるかもしれないが、ASMLなど働き手として外国人に依存するハイテク企業は、オランダの将来の繁栄を損なうと訴えている。

米半導体NXPのオランダ支社長を努めるヤン・シュルール氏も、ASMLの移民規制を巡る懸念に同調。今のところオランダの国際的な評判は全般的に良好だとしつつも「(国外の)人々が歓迎されていないと感じるようになれば、オランダは自らが目指す(世界)トップの国にはなれない」と述べた。

オランダ主要企業の間では、自社株買いへの課税案や、投資控除の縮小計画などが、特に他国が外国資本の誘致に熱を入れているタイミングで、重大な結果を招くことを考えずに推進されているとの不満が聞かれる。

同国最大の経営者団体、オランダ産業雇用者連盟(VNO─NCW)を率いるイングリッド・ティッセン氏は「多くの上場企業は本拠を他国に移すことを検討中だ」と明かした。

オランダ財務省の委託でSEOエコノミック・リサーチが1月に実施した調査でも、多国籍企業の3分の1が向こう2年で国外への事業移転を検討していると判明している。

こうした中でオランダ政府は、ASMLの引き留めに全力を注ぐためのプロジェクトを始動させ、具体的には高技能の移民向けの税額控除打ち切りがもたらす弊害を帳消しにする方法などが模索されているという。