2024/3/21

【北野唯我】今振り返る、ビジネスパーソンとして大きく成長したきっかけ。

NewsPicks Brand Design Senior Editor
 なぜ、自分は組織内でいまいち評価されないのか、もっと評価されるにはどうしたら良いのか、どうしたらキャリアが上がっていくのか。
 多くのビジネスパーソンが日々の仕事の質をより良いものにし、キャリア向上を実現すべくさまざまな自己研鑽に励んでいる。
 しかし、自分の学習やスキルアップの方法が、本当にキャリアにつながるのか、日々自己研鑽に励みながら、そんな不安を感じている人も多いのではないだろうか。
 今回は数多くのビジネスパーソンのキャリアを見つめ、転職やキャリアに関するベストセラーを多数執筆している株式会社ワンキャリアの北野唯我氏に、キャリアアップするための「実効性のある努力の仕方」を伺った。
 北野氏からビジネスパーソンに必要な「3つの力」を軸に、学ぶべき内容の探し方、学習方法、仕事への活かし方についてアドバイスをいただいた。
 ぜひ、明日からの学習や自己研鑽に生かしてほしい。
兵庫県出身。新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局で中期経営計画の策定、MA、組織改編、子会社の統廃合業務を担当。その後、ボストンコンサルティンググループに転職し、2016年ワンキャリアに参画。子会社代表取締役などを経て2020年から現職。1987年生。

評価される人材になるために、必要なスキルとは?

──キャリアアップにつながるスキルとはどのようなものでしょうか。
 企業で評価されるスキルは究極的には3つしかないと私は思います。「物をつくる力」「物を売る力」「ルールに従う力」です。
「物をつくる力」は研究開発やプログラミング、デザインなど具体的な商品開発に関する能力です。
「物を売る力」には対人セールス能力のほか、マーケティング能力、統計調査の能力などが含まれます。
「ルールに従う力」は企業経営に関する総合的な知識に対する理解です。法務、労務、IRなど、バックオフィスが担当する業務分野の知識がこれに当たります。「ルールに従う力」を身につけておくと、社会やビジネスのルールが変わる瞬間に大きなチャンスをつかむことができます。
 直近の例で言うと、新型コロナウイルスで変化した社会のルールに適応できた企業が大きく成長できたのは、記憶に新しいと思います。
 企業は利益率を上げる、新しい市場を開拓する、経営を安定させるなど、全社的に貢献する人材を高く評価します。そのため、3つの能力に含まれる分野から「自分が学ぶことで、会社の利益につながる自己研鑽」を行うのが大事です。
 3つの能力を、会社のビジョンや必要とされる能力と合致する形で伸ばしていきましょう。逆に言えば、これとずれた学習をしてしまうと、社内での評価にはつながりにくいでしょう。
──自分が伸ばしたいスキルを重点的に磨けば良いのでしょうか。
 それは少し違っていて、「社内のポジションに応じて必要なスキル」をその都度磨いていくことが重要です。
 ビジネスパーソンの多くが、普段の業務の中で、先ほど挙げたスキルをすでにある程度身につけているはずです。しかし、社内のポジションが変わると、スキルの求められ方が大きく変わるのです。
 その際に、自分に備わっているスキルをバージョンアップしたり、自分に足りないスキルを適切に補ったりできるかどうかが、社内評価での大きな分かれ目になります。
 社内のポジションが変わると、同じ枠組みのスキルの中でも、求められる要素が変わることがあります。
 例えば「物をつくる力」を生かして仕事をしている人が、社内でのポジションが上がった場合、これまでは「従来型の商品を適切に作る力」が求められていたのに対し、「コンセプトから商品やサービスを作り直す力」が求められるといったことが起きるのです。
 セールス担当者がポジションが上がると、対面の顧客を満足させるだけでなく、商品の特性を深く理解し、競合他社に対する優位性を考えたうえで販売チャネルや商品設計についても考える必要が出てきます。つまり「物を売る力」の質が変わってくるのです。
 そうした時に「自分に求められている能力が変わった」と気づき、学習によってそれを補うことが、会社の求める能力に合わせて自分の能力を伸ばすことにつながります。
──北野さんは、どのような場面で「求められる能力」が変わりましたか?
 私の場合は祖業である新卒採用サービスを伸ばす段階が、一つの大きな転機でした。
 サービス設計の段階では、歴史のある競合他社に勝つためには「どのようなサイトの作りにしたら良いのか」「どのような価値提供を利用者にするべきなのか」を考え抜きました。
 自信の持てるサービスを作っても、当時わが社の認知度はまだまだ低く、セールスもゼロからのスタートです。サービスの信頼度を高めるため、大企業に商品やサービスを導入していただけるよう働きかけました。
 自社のサービスの価値や優位性、独自性を理解いただくために、試行錯誤を重ねましたが、プレゼンテーションでは失敗も経験しました。
 大企業を説得するうえで必要なのが、相手企業に対する理解です。コンプライアンスや決済ルートだけでなく、稟議の進め方や契約の進め方など、相手企業が大事にしているルールもしっかり理解する必要があります。
 これらのプロセスで、自分に必要な「物をつくる力」「物を売る力」「ルールに従う力」が質的に変わり、それを上手く身につけることができたため、ビジネスパーソンとして大きく成長できたと感じています。

「会社に求められる能力」の見つけ方

──組織が求める能力を身につけるうえで、まず何から始めたら良いでしょうか。
 とにかく課題にぶつかることだと思います。ほとんどの人は何かしらの課題にぶつからない限り、学習意欲は発生しません。なので、新しい仕事やポジションは積極的に受けるべきです。
 学習を続けるには、何かきっかけが必要です。ご自身の学生時代を振り返ってみてほしいのですが、「テストがない時期」に勉強をしていたでしょうか。
 解決したい課題や目標が目の前にあるから、学習は続けられるのです。
 会社から新しい事業やポジション、担当を打診されたら、まずは手を挙げることが大事です。企業は多額の予算がかかる事業の担当者を選ぶ際に、数多くの社員の中から、「この人に何かやらせてみよう」と考えて打診している。これは会社からその人への投資でもあるのです。
 私は、多くのビジネスパーソンの成長を見てきましたが、やはりポジションが変わることによって変化することが圧倒的に多いですね。
──学習のきっかけを見つける方法はありますか。
 機会になかなか恵まれないと思うのであれば、部署の新しい仕事の担当に手を挙げてみるとか、社内のアイデアコンテストに応募してみるとか、ちょっとしたことでもきっかけになるはずです。
 チャレンジしてみて初めて、自分の能力の幅の狭さを知ったり、理解の浅さを知ったり、プレゼンやマネジメントなど新しい能力の必要性を痛感したりするものです。
 その時に、何が自分に必要なスキルなのかをしっかりと見据えて、どうなりたいかという目標を設定することがスキルアップの出発点になります。
 仕事で課題にぶつかっている時って、仕事へのスタンスや考え方でつまずいているパターンと、仕事の進め方や取り組み方でつまずいているパターンがあると思います。前者を見直すのにはそれなりに時間がかかると思いますが、後者は1時間程度の学びでも大きく変わると思います。
 成長を目指す人たちに加え、「仕事がつまらない」と感じているビジネスパーソンも、ぜひスキルアップを真剣に考えてください。
 仕事がつまらなくなる理由って、仕事という一つのスポーツが上手じゃないから、という要素も結構あると思うんです。サッカーでも野球でも、試合に関与するスキルがないと、全然楽しくないですよね。
 仕事を楽しむためには、一定のスキルが必要になる。だから、仕事がつまらないと感じている人は、まずは身近なスキルから学んでほしい。

ビジネスパーソンの理想の学び方

──スキルアップをするうえで、理想的な学習方法について教えてください。
 一見遠回りに感じるかもしれませんが、まずは体系的な知識やスキルを座学で習得することが大事です。
 自分の中にある「物をつくる力」「物を売る力」「ルールに従う力」をひとまわり大きく育てるには、それらをあらためて俯瞰的に捉え直す必要があります。
 ビジネスパーソンの場合、OJTで業務を学び、社内のマニュアルに従って仕事をしている場面が多いと思います。しかし、その背景にある考え方や全体像を十分把握している人は、どれくらいいるでしょうか。
 研究開発やデザインであれば、物作りの原理原則の考え方や最新の事例を学ぶことで、ブレイクスルーが生まれるかもしれません。
 マーケティングであれば、社内の調査マニュアルやデータ分析に習熟するだけでなく、本来のマーケティングの理論やテクニックを学ぶことで、社内業務への理解が深まったり、改善点が見つかったりするはずです。
 まずは新しい課題にぶつかり、自分に不足しているスキルを洗い出すこと、それを踏まえて体系的に学ぶこと、学習を通じた別視点を持ちビジネスに活用することを上手くサイクルとして続けることが、大きな成長につながるはずです。
 キャリアアップのためには、実務や実践が大事であることは間違いありません。ただ、それ以上に、会社から与えられた業務に対して「別の視点」を持ち、理想の状態とのギャップに気づいて、新しい提案ができるようになることが重要です。そのためには、体系的なスキルや知識が必要不可欠なのです。
 また、体系的に学ぶということは、知識や経験がスケーラブルになるということです。以前は寿司職人を育てるのに、何年も下積みが必要でしたが、必要な能力を体系化して教育する専門学校が登場し、半年もかからず、板場に立てる職人を数多く輩出しています。
 皆さんの中にある言語化されていない知識や経験を部下に伝えたり、社内に共有したりする際に、知識を体系化し直すというプロセスは効果的です。
──最近は動画で学習する人が増えています。動画学習サービスの1つである「Udemy」について、使った感想を教えてください。
 私は普段から新しい課題にぶつかり、足りないスキルに気づいたり、今よりも高いスキルを身につけたいと思ったりした時には、動画コンテンツで学習をしています。
 文字に比べて、動画の方が記憶に残りやすいですし、視覚と聴覚の両方から情報を得られるので、学習効率が高いと感じます。
 動画学習サービスであるUdemy(※)は、スキルや知識が一つの講座として構造化されているので、網羅的・体系的に学ぶことができますね。
 講座の章立てやレビューを見るだけで、学びたい内容がどのような要素からできていて、どのようにステップアップをしていけばいいのかをイメージできます。
 Udemyの講座のなかにはワークシートやクイズが挟まれているものもあります。自分で答えを考えてアウトプットすることが定着を促すので、非常に効果的な学習につながると感じました。
 また、動画学習は他の学習方法に比べて、圧倒的に楽です。資格と聴覚を両方使ってイメージを膨らませながら学習できるので、ビジネスパーソンの学習に合っていると言えるでしょう。
 それに加えて、再生速度を上げて学習できるのも利点ですね。移動時間や隙間時間でも学習できるのも大きなメリットだと思います。
Udemy:講座数21万以上を誇る動画学習サービス。プログラミング、デザイン、AI活用など幅広い講座があり、受講者数は世界で6900万人以上、日本で160万人以上。講座ごとの受講者数と評価を確認し、受講することができる。講座は1本ずつの買い切り制となっている。(※数字は2023年12月時点)
 動画学習サービスとしてYouTubeを使っている方も多いですが、YouTubeは学術系、学習系のコンテンツであっても、視聴者の興味関心を刺激するような作りの動画が多い印象です。
 学びの入り口としては非常に便利ですが、雑な視聴になってしまいやすく、スキルを定着させるには向いていないかもしれません。
──Udemyで学ぶことの価値をもう少し深く教えてください。
 一つは、ビジネスシーンで再現性のある知識を学べる点ですね。
 講座の多くが理論で終わらず、実践的な内容を含んでいるため、仕事で壁にぶつかっている人には即効性があるはずです。
 次に体系的な学習によって、業務の本質的な意味をつかみやすくなります。
「なぜこの業務があるのか」を深く掘り下げることで、より効率的な業務の進め方を考える姿勢が身についたり、新しい商品やサービスの開発につながったりするような視点が手に入ります。
 こうした視点は自分にとって役立つだけでなく、後輩の指導などにも有効です。また、体系的な業務理解はクライアントへの信頼獲得や人間関係の構築にもつながります。
 仕事を円滑に進めるには、クライアントや社内の他部署の業務フローや考え方、価値観への理解を深めておくことが必要です。
 例えば転職サービスの営業担当者の場合、相手企業の業界事情や採用・育成フローの背景にある考え方を知っておいた方が、相手に寄り添った営業活動ができますよね。
──Udemyでおすすめの講座を教えてください。
 成長を志しているけど何から学習したらいいかわからないという人には、「物を売る力」「ルールに従う力」に関係する講座を受講することをおすすめします。
 Udemyには21万以上の講座があるため、少しでも気になっているスキルがあるならまずは検索窓に打ち込んでみるのがおすすめです。
「物を売る力」でいえば、マーケティング、営業販売スキル、コミュニケーションなどが汎用的でいいかもしれません。「ルールに従う力」でいえば、企業会計やファイナンスを学んでおくことをおすすめします。
 社内でプロジェクトを任されるようになったら、プロジェクトマネジメントを学んでおくのも良いでしょう。
 プロジェクトマネジメントは目的・目標に向かって期限を設定し、周りを巻き込みながら達成するという技術ですが、与えられた仕事をこなしていたり、我流で仕事をしたりしているだけだと身につきません。
 年齢とキャリアを重ねて業務のレベルが高くなっていくと、絶対にこのスキルが必要となってくるので、責任あるポジションにつく前に体系的に学んでおくと、のちに仕事をスムーズに進められると思いますね。
 ぜひ、Udemyでの学習を通じて、スキルや知識を身につけて仕事が面白くなっていくのを感じてほしいですね。成長を志すビジネスパーソンにとって、人生の転換点になると思います。