国内初の“薬局で買える”内臓脂肪減少薬「アライ」4月8日から販売開始 専門家からは「美容目的での使用」に警鐘も
コメント
注目のコメント
内臓脂肪減少薬「アライ」には、薬効成分に「オルリスタット」というリパーゼ阻害薬が含有されています。リパーゼは、大部分が膵臓由来で胃液などにも存在する糖タンパクであり、消化酵素として脂肪の分解に働きます。リパーゼを阻害すれば、脂肪は消化されずに排泄されますから、脂肪由来のカロリー摂取を抑えることができます。しかし、脂肪の摂取量を下げずに、また食事制限や運動といったダイエットにも取り組まずに、医薬品に頼ることは望ましくないでしょう。
同系統のリパーゼ阻害薬として、医療用医薬品の「オブリーン」(成分名:セチリスタット)があります。こちらは、2013年9月に厚生労働省より製造販売承認を取得しましたが、医療保険適応に必要な「保険薬価収載」が異例に見送られました。
リパーゼを阻害すると、副作用として脂質吸収抑制による下痢、脂肪便等が高頻度に発現することは避けられません。また開発時のデータから、ラット24ヵ月間がん原性試験において、雌雄ともに高用量群で背景値を超える腸間膜リンパ節における血管腫(良性腫瘍)の発現頻度の増加傾向、特に雄では有意な増加が認められています。また、関連する組織学的障害がなく、由来臓器・組織は不明ながら、動物試験(ラット及びイヌ)でAL-P(肝機能障害の指標の1つ)の著しい高値が認められています。
日本での医療用医薬品としての販売実績がない成分を含む医薬品が、いきなり一般用医薬品として販売許可されるケースは異例ですし、日本で医療用医薬品としての販売実績があったとしても、医療用医薬品から市販薬に転用されたばかりの薬は、未知の危険性の高さから、薬剤師による「要指導医薬品」に指定されます。
要指導医薬品に指定されているものは、購入の際には必ず薬剤師から対面での指導や情報提供を受けなければならず、インターネットでの販売も禁止されます。また、同医薬品は、発売後しっかりしたモニタリングが義務付けられる期間「再審査期間」が、前例のない長期間(8年間)設定されました。
許認可当局としては、医療用として医師の診察を義務付けたいところ、ダイエット用薬への保険適用を避けたいため、医療保険適用されない一般用医薬品として販売すると同時に、これまで医師に委ねていた役割を薬剤師に委ねたいという狙いがあるものと思います。医療行政の視点からも注目に値します。薬局で買える様にするということは、保険をつけないという意思表示に加え、自己責任で管理する必要性を示していると言えます。今後、どの様な危険性が報告されるのか、報告されないのか、注視していきたいところです。