(ブルームバーグ): 楽天グループによるみずほ銀行など主要行からの借入残高が2023年末までの1年間で約4割減ったことが、4日開示された定時株主総会の招集通知で明らかになった。巨額の社債償還に向けた資金確保という課題に直面している姿が改めて浮き彫りになった形だ。

通知によると、みずほ銀と三井住友銀行、三井住友信託銀行からの借入残高は23年12月末時点で総額3081億8600万円と、前年末時点の4924億6100万円から37%減った。残高が最も多いみずほ銀で27%減り、三井住友銀と三井住友信託銀ではそれぞれ5割超減った。

楽天Gはモバイル事業の損失を主因に5期連続の最終赤字を計上する中、24年と25年に子会社と合わせて7000億円規模の社債の償還期限を控えており、資金繰りに注目が集まっている。借入残高の減少は、償還資金の確保に向けて市場からの調達を増やす必要性が高まる可能性を示唆する。同社は今年に入りドル建て社債で18億ドル(約2700億円)を調達し、社債型種類株で最大1000億円を調達する計画も明らかにした。

企業再生アドバイザリー会社アシストの平井宏治代表取締役は、「財務状況から判断すると各行にとって楽天Gは正常な融資先ではなく、返済圧力が強まり、新規の借り入れが難しくなっている可能性がある」と指摘する。比較的金利の低いローン残高が減る一方で、ドル建て社債の利回りが12%超に達したことを挙げ、資金繰りは難航しているように見えると述べた。

米モーニングスターの伊藤和典ディレクターは、「楽天Gがさまざまな資金調達手段を講じている背景には、貸出残高を減らしている銀行の姿勢もありそうだ」と話した。

米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは2月、モバイル事業の業績が改善する一方、25年に大量の社債を償還するための資金調達がまだ十分ではないとして、楽天Gの長期発行体格付けを投機的等級とされる「BB」、格付け見通しを「ネガティブ」に据え置いた。

楽天Gの広報担当者は借入残高の減少について、決まっていた契約に基づき返済したと説明し、新たな借り入れはないと明らかにした。銀行とは良好な関係にあり、1500億円のコミットメントライン(銀行融資枠)を更新したという。22年12月期の有価証券報告書によれば、同社は主要3行のほか、三菱UFJ銀行、農林中央金庫と契約している。

招集資料からは、楽天G全体の従業員数が3.9%減ったことも分かった。22年末時点で1万1000人を超えていたモバイル事業は5415人に半減。一方、フィンテック事業は6070人にほぼ1割増えた。

また、三木谷浩史社長と親族、ファミリー企業の持ち株比率は28%と、前年の34%から低下した。株主総会は28日に楽天G本社で開催する予定だ。

4日の東京株式市場で楽天G株は一時5.9%上昇し、22年5月以来の高値を更新した。終値は1.1%高だった。

関連記事

  • 楽天GのCDS低下、社債型種類株で最大1000億円調達-償還資金
  • 楽天Gの「BB」格付けを据え置き、社債償還の備え不十分-S&P
  • 楽天G、約2650億円のドル債発行へ-利回り12%超は日本企業最高

(第7段落の会社コメントを一部追記し、株価も更新しました)

More stories like this are available on bloomberg.com

©2024 Bloomberg L.P.