正しく体を揺らすと健康になる

「からだほわっと」編 第2回

西本直が伝授する「からだほわっと」の極意

2015/5/14
西本直は施術を行う時、ほぼ必ず行う操体がある。仰向けに寝た人の両足にそっと手を起き、繊細にからだを揺らして全身をほぐす「からだほわっと」だ。全身の血流が促進され、さらに骨が本来あるべき位置に収まり、表現しようのない心地良さを得られる。その極意を伝授する。

誰かのためにという優しい気持ちがスタートです

今回はいよいよ「からだほわっと」のやり方を紹介したいと思います。

「からだほわっと」は、基本的に誰かにしてあげる行為です。

できるものならしてあげたいけれど、素人が手を出して何かあったら困るから……と不安に思う方もいるかもしれません。

しかし、この「からだほわっと」に関しては、まずその心配は必要ありません。

誰かにしてあげることで、マイナスになる要素はゼロだと思っていただいて結構です。

というよりも、自分が誰かにやってもらった時に感じた、何とも言えない心地良さを、大切な誰かにも味あわせてあげたい、その優しい気持ちがスタートになります。

受ける方はからだの力を抜いてリラックス

畳の上か、痛くないように薄めのものを敷いた平たい床の上で行います。

あまり柔らかい物の上だと、からだが沈み込んで揺れにくいので、それぞれに適した状態をつくってください。

受ける側は仰向けに横になり、からだ中の力を抜いてリラックスします。

足の幅や手の置き場所、顔の向きなど、途中で変えても構いません。こうでなければいけないという決まりごとに縛られず、ゆったり横たわってください。

その時、自分のからだと床の関係に意識をおいてみてください。

普段の生活では、からだのあちこちに力が入っているため、ゆったりと横たわっているつもりが、たとえば、かかととお尻と肩甲骨と後頭部だけが床と接していて、後の部分は床から離れているような感覚になっているかもしれません。

「からだほわっと」を受けると、その感覚に驚くような変化があるはずです。

施術者は背筋を伸ばして

施術する側は、相手の足元に正座して向き合います。相手の開いた足首の間辺りと言えばよいでしょうか。

10分から20分間座っていますので、こちらが疲れてしまわないよう、お尻の下に枕のようなものを入れて、膝が痛くならないように工夫してください。

スポーツと同じで、やはりこの時も自分の背中がすっと立っていると、疲れずに施術をすることができます。この時の姿勢が悪いと、逆に自分の肩が凝ってしまうことになりかねません。しっかりと骨盤を立てて、背筋を伸ばしてください。

もちろん施術台があれば一番楽にできるのですが、一般の家庭にはなかなかないですよね。もし会社に事務机があれば、それが代用になります。

「からだほわっと」の極意

いずれにせよ、施術者は相手の足下にポジションを取ります。

その姿勢から、相手の足の甲に手を乗せます。いろいろなやり方があるのですが、まずは感覚をつかむために親指を土踏まずの辺りに置いてみてください。

操体法では「足指もみ」という呼び方をしていますが、もむというよりも、「足を持ってからだを揺らす」という表現のほうが正しいと思います。

足の甲に乗せた手を前後にゆっくり動かして、相手のからだを優しく揺らしてみましょう。

西本直が「からだほわっと」を施術する様子。足の甲に手を置き、親指は土踏まずの付近に添え、からだ全体の皮膚と身の間を揺らすイメージ。(写真:木崎伸也)

西本直が「からだほわっと」を施術する様子。足の甲に手を置き、親指は土踏まずの付近に添え、体全体の皮膚と身の間を揺らすイメージ(写真:木崎伸也)

大切なのは、「皮膚」と「身」の間を揺らすという感覚です。このコツは略して「ひふみ」と呼ばれています。

手が皮膚をこするわけでもなく、指先の力でもむのでもなく、つかんで力任せに揺らすのでもありません。こするのと、揺らすことのちょうど中間の繊細な力加減。それが「ひふみ」の感覚です。

相手のからだが「皮袋に包まれた柔らかい流体」(私の造語で、個体でも液体でもないという状態)だというイメージをもつと、こちらが頑張らなくても微妙に揺れてくれるのがわかります。

誰しも最初は力任せになってしまうかもしれませんが、だんだん必要な力加減がわかってきます。

外から見ると、施術者はすごく大変な作業をしているように思われるかもしれませんが、ほとんど力は必要ありません。

背中をすっと伸ばしたまま、手首と肘だけをしなやかに動かしてみてください。腕だけがロープのように波打つ感じです。

私の感覚は、横になっている人のからだが勝手に揺れていて、その揺れているからだの一部に触れさせてもらっていることで、自分のからだも揺れている。そんなイメージでやっています。

やってあげている、やってもらっているという関係を超えて、ひとつになったような一体感を感じるところまできたら、効果も倍増すると思います。

手を止めたときに起こること

そして、しばらく体を揺らしたら、施術者は息をふぅーっとゆっくり吐きながら、相手に波を送るようにして手をとめてみてください。

受けている側の人は、足下から頭に向かってさざ波が走るような感覚を得られると思います。

ずっと揺れていたものがすっととまることで、その波が止まった部分が伝わっていくのを感じるからでしょう。

この感覚を1度でも味わうと、「からだほわっと」のとりこになると思います。

※本連載は毎週月曜日と木曜日に掲載予定です。