正しく体を揺らすと健康になる

「からだほわっと」編 第3回

足下から身体を揺らすことで、血行が促進される

2015/5/25
西本直は施術を行うとき、ほぼ必ず行う操体がある。仰向けに寝た人の両足にそっと手を起き、全身を優しく揺らす「からだほわっと」だ。血流が促進され、さらに骨が本来あるべき位置に収まり、表現しようのない心地良さを得られる。その極意を伝授する。

「からだほわっと」の3つの効果

みなさん、前回紹介した「からだほわっと」に挑戦していただいたでしょうか?

これまでに見聞きしたことがない動作だけに、難しさもあると思います。

ただし、自分の身体への向き合い方と同じように、100点も0点もありません。楽になってもらいたい、気持ち良さを伝えたい、そう思って相手に向かい合うことで、すでにお互いの関係は100点満点なのです。

まずは想像で構わないので、仰向けに寝た相手の足下に座って、足の甲に手を置いてみてください(親指は土踏まずあたりに添える感じです)。そして手を前後に小さく動かして、相手の身体全体がほんの少しだけ前後に揺れるようにします。

何度も言いますが、力づくではダメです。強く揺すると下から突き上げられるような感じになって逆に不快です。自分も力を抜いて、優しく前後に手を動かしましょう。

相手の皮膚をこするのと、優しく包み込むのとの中間くらいで、ヒフミ(皮膚と身)の間の液体を揺らすイメージです。相手に感想を聞きながら、力加減やリズムを微修正するとうまくなると思います。

では、この「からだほわっと」にはどんな効果があるのでしょうか?

大きく分けて、「血行促進」「骨をあるべきところに戻す」「胃腸の働きを整える」という3つの効果があります。

今回は「血行促進」に注目したいと思います。

自分の手が相手の第二の心臓になる

私たちの日常では、歩くという行為がどんどん少なくなっています。あえて歩くということ自体を目的とした時間をつくることが、必要となってきているくらいです。

では、なぜ歩くことが必要で大切な行為なのでしょうか。これは身体の中を循環する血液の問題です。

人間は自律神経という、自分が意図していなくても臓器をコントロールする仕組みがあって、心臓は休むことなく働き続けてくれています。

その心臓の拍動から送り出された血液には、呼吸によって取り込まれた新鮮な酸素と、食事によって摂取した各種の栄養素がたっぷり含まれています。

心臓の送り出す力と、重力によって血液は上から下へ、動脈を通って全身の毛細血管にまで行き渡り、身体中の細胞に栄養を運んでいきます。

しかし配り終わった血液が自然に静脈を通って戻って行く、というほど甘くはありません。重力に逆らうためには、心臓の拍動の他に助けが必要です。

その役目を担うのが、ふくらはぎです。ここの筋肉が「第二の心臓」となり、血液を下から押し上げるのを助けてくれます。

つまり、じっと座ったままだと血行が悪くなり、たとえばエコノミー症候群と呼ばれる症状が起こってしまいます。

もちろん、歩かなくても血液は循環してくれますが、ふくらはぎによって血行を促進するに越したことはありません。だから歩くことが奨励されるのです。

とはいえ、ウォーキングの時間を取れない場合もあるでしょう。それを補うのにうってつけなのが「からだほわっと」です。

すでに書いたように、「からだほわっと」には血行促進の効果があります。

相手の足の甲に置かれた手が「第二の心臓」になるからです。足下からの揺れによって血液が上半身に押し戻され、受けている側の人は身体がポカポカしてくるのを感じるはずです。

心臓への負担が減って、血圧が下がり、まさに身体中がリラックスできる状態となります。

※本連載は毎週月曜日と木曜日に掲載予定です。