2024/2/26
【茂木健一郎】住宅選びで「緑豊かな郊外」の価値が上がるこれだけの理由
株式会社日本エスコン | NewsPicks Brand Design
コロナ禍をきっかけにリモートワークが広まり、都市部から郊外に引っ越す人や二拠点生活を始める人が増えている。住まいに求めるものや住む場所の条件が変わってきた人も多いだろう。
こうしたなか、「自然が身近にあり、利便性のいい場所に住みたい」といったニーズを持つ人々の注目を集めているのが、リニア中央新幹線の中間駅ができる神奈川県・橋本エリアだ。2027年以降のリニア開業に向け、現在は駅周辺の再開発が進んでいる。
なぜ橋本エリアが住む場所として魅力的なのか。そして、仕事とプライベートのどちらも充実させて人生をより豊かに生きるために、住む場所を選ぶ際に重視すべき条件とは。脳科学者の茂木健一郎氏に語ってもらった。
住まいがワークライフバランスの実践の場に
──近年、人々の住まいに対する意識はどのように変わりましたか?
昔は「家は帰って寝る場所」というのが多くの人の認識でした。
しかし、働き方が多様化し、コロナ禍も経験したことで、「家はワークライフバランスの実践の場である」と考える人が増えました。「家は働く場所、学びの場所でもある」という意識がすごく高まっていると感じますね。
特にリモートワークができる人にとっては、家は仕事場でもありますし、リフレッシュ機能も、学習機能も子育ての機能も必要になってくる。
そうしたなかで、「郊外の緑豊かな場所に住む」というのが魅力的な選択肢となってきたと思います。
実際に私の友人でも郊外に引っ越す人が増えました。彼らに聞くと自然が多くて散歩を楽しめるし、都心部への交通の便も悪くないから遊びに行くにも困らないそうです。
都心部に住んでいた頃に比べて、みんな生活満足度が高くなったと語っています。
日本では長らく都心部に近い住居のほうが、ステータスが高いと思われていました。しかし、時代の変化を受けて、多くの人が「住む場所を選べるなら幸せにつながるほうが合理的」と考えるようになってきたと言えるのではないでしょうか。
欧米では都心のど真ん中よりも郊外のほうが生活満足度が高く、ステータスも高いことは珍しくありません。日本では長らく都心に近いほうが高ステータスでしたが、今後逆転していく可能性もあります。
自然の中にある多様な視覚情報が脳を育む
──現代人にとって自然が多い郊外で過ごすことのメリットを教えてください。
人間の脳が進化してきた長い歴史の中で、ほとんどの時代は自然に囲まれた環境で過ごしてきました。だから、脳にとっては自然が多い場所にいるほうが本来快適なんです。
それに対し、都会で頑張っているときの私たちの脳は、感情の回路や脳に無理をさせている状態です。
脳への負荷をかけ続けるのは、持続可能な働き方ではありません。時々自然の中を散歩したり、海を眺めたりして脳のバランスを回復させる必要があるのです。
脳科学的にも、自然には「脳のバランスを保つ」という癒しの効果があることがわかっています。
自然の中にいると脳がリラックスして、免疫系の働きが高まることが明らかになっていますし、予防医療として森林浴を処方するという考え方も出てきています。
病院で緑が見える病室にいた人は退院までの日数が短くなったり、予後が良くなったりするという研究結果もあります。
都会に住んでたまに自然を見に行くだけでも効果はありますが、住んでいる場所や働く場所が自然豊かなほうが望ましいですね。
特に、子どもを育てる環境としては自然があふれている場所のほうが理想的です。
──なぜ、自然が子どもの脳にいい影響を与えるのでしょうか?
脳の情報処理能力の発達には、視覚情報の多様性が重要です。
人工的につくられたものは丸や直線などある程度形のパターンが限られているのに対して、自然の中のものは一つひとつ形が異なり、さまざまな色があり、それらが季節によっても変化していきます。つまり、自然の景観は多様性に満ちている。
子どもの頃に視覚情報が豊かな自然の中で過ごすと、脳の視覚野にあるデータベースが豊富になり、脳の回路の使われ方がよりバランスの取れたものになります。これが子どもの脳の発育を促すことにつながっていくのです。
僕は子どもの頃によく野外で蝶々を追いかけていたのですが、同じように研究者やエンジニアになっている人は子どもの頃の自然体験が豊かだった人が多いですね。
逆に、子どもが人工的な空間の中でスマホばかり見ているのは視覚情報の多様性が不足している状態であり、脳の成長にあまりいい状態とは言えません。
「再野生化」が都市の付加価値を高める
──最近では緑を多く取り入れたオフィスビルやマンションが増えていますね。
そうですね。近年、まちづくりや不動産関係で世界的なトレンドになっているのが「再野生化(リワイルディング)」です。
都市に自然を取り込む「再野生化」は世界各国でニーズが高まっています。身近に自然があることが、都市や物件の付加価値を高めていく。そのことに多くの人々が気づきはじめたのでしょう。
不動産価値を高めるためにも、「再野生化」をうまく取り入れることがまちづくりに欠かせない時代になってきたと感じます。
ニューヨーク・マンハッタンでは鉄道の高架跡地を緑化して、「ハイライン」と呼ばれる2キロ以上の遊歩道を整備しました。古くなって放置されていた高架跡地が多くの人が訪れる場所となり、経済波及効果も大きい。
周辺の不動産価格の向上にもつながっている。都市の再開発の成功事例として注目されています。
以前学会で行ったワシントンDCでも、ホワイトハウスのすぐ近くの一等地に「再野生化」した公園がありました。自然がまちのど真ん中にあることで人の心を豊かにしますし、まちの付加価値を高めることにもつながります。
人の側に自然があるべきだという考えは、今後も空間づくりで重視されていくでしょうし、それに伴って「生活満足度の高い郊外」は物件価値が高まるはずです。
自然環境と利便性の良さが両立できる場所
──今回、見学していただいたマンション「レ・ジェイドシティ橋本」についての印象を教えてください。
まず、神奈川県の橋本エリアについてですが、自然環境の豊かさと都市の利便性を享受できるという点が魅力的だと感じました。
橋本はすぐ近くに自然がありますし、周辺には大学も多いエリアです。一方で、八王子や立川、町田といった人気のまちも近いので、買い物にも困らないエリアだと思います。
イメージが近いのは横浜エリア。橋本には横浜のように、周辺エリアだけで生活が完結できる利便性の良さがあると思います。
そして、何より魅力的なのが中央リニア新幹線の中間駅ができることです。完成すれば橋本から品川まで10分、名古屋まで60分で行けるようになります。
リニアという最先端の科学技術によって、豊かな自然環境と都市部へのアクセスという、従来なら相反していた条件をどちらも享受できる時代がやってきます。
次にマンションについてですが、敷地内にプロムナードがあるのがいいですね。約200種類、4700本以上の木々や植物が自然の景観に近づけるようにランダムに植えられている。視覚情報の多様性という点でも、脳にいい作用をもたらす空間だと感じました。
今はまだ植え込みレベルですが、今後成長していけばもっと緑が豊かになり、ちょっとした森のような雰囲気に成熟していくと思います。
プロムナードは適度に木漏れ日が差し込んできて、日を浴びることで脳内でセロトニンが分泌され、幸福感が高まりやすいという印象を受けました。
──公園や山のような自然ではなく、植え込みでも脳にとって良い影響があるのでしょうか。
住まいの近くにこういった植栽があると、仕事の前後や合間にちょっと散歩したくなりますよね。散歩は脳をリフレッシュさせ、創造性を高めることが実証されています。
人がぼんやりとしているとき、脳はいろいろな情報を整理する神経活動「デフォルト・モード・ネットワーク」を行っています。自然の中で散歩をしているとき、座禅をしているとき、リラックスしているときなどに活性化します。車で言うところのアイドリングのような状態です。
「デフォルト・モード・ネットワーク」によって脳内が整理されると、情報の点と点が結びつけられて、新しいひらめきが生まれることがあります。
たとえば、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズはマインドフルネスを実践し、重要な意思決定をするときは散歩をしていたそうです。
現代人は頭を空っぽにしてぼんやりすることが苦手です。すぐにスマホを見てしまう。
頭を空っぽにするためにはまず、リラックスできる視覚環境をつくることが必要です。その点で身近に植栽がある環境は脳をリラックスさせ、創造性を高めることにもつながると思います。
また、家の周りに緑があることは、脳に「この先はリラックスしていいよ」と認識させる効果が期待できます。脳科学では「プライミング効果」と呼ぶのですが、脳はあらかじめ受けた刺激によって、その後の判断や行動が無意識レベルで影響を受け、認識や行動に影響を与えます。
「リラックスする」と自己決定して実行することは難しいですが、こうした空間が引き金となって自然とリラックスできる空間づくりになっているのは、大きなメリットだと思いますね。
少し先をイメージした住環境選びを
──従来の家選びの視点ではあまり感じられない魅力が多いですね。
確かにそうですね。
脳はちょっと先の未来について、具体的に思い浮かべることを苦手としています。脳にとって自然が近いことの快適さ、リニアが開通する利便性はいずれも自分事としてイメージするのが難しい分野です。
そのため、少し未来のことはイメージよりロジックで考えてみて判断してほしいですね。
「何年後にまちの価値がどう変わっていくのか」「街の人口はどうなっていきそうか」「そうなったら商業施設がどう増えていくか」「その頃に子どもは何歳になっていて、どんな施設が必要か」などと、論理的に考えていくことが未来を予想するためには大切です。
また、多くの現代人は都会の中で日々脳を使って、自分がどんな環境にいるとリラックスできるのかを把握できていません。
この点については、現代人はなんでもエビデンスを求めますが、ある意味で自分では判断せず、人に判断を委ねているとも言えます。
自分はどういう環境にいると心地がいいのか。私たちはもっと自分自身の心を見つめて、気づけるようになったほうがいいでしょう。
一度ぜひ、「レ・ジェイドシティ橋本」のプロムナードを見学し、周囲の自然を堪能して自分にとってどれくらい心地良い空間か確かめてみてほしいですね。
執筆:村上佳代
撮影:小池大介
デザイン:田中 貴美恵
編集:金子祐輔
撮影:小池大介
デザイン:田中 貴美恵
編集:金子祐輔
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