2024/2/8

【新潮流】今、面白い本は「一人出版社」から生まれる

最近、似たような本が多いなあ。
書店を訪れたり、アマゾンで本を探したりしている時に、こう感じることはないだろうか。
その感覚は、きっと正しい。
今、毎日約200冊が新たに世に送り出されていて、出版社も編集者もとにかく「出しまくる」サイクルに陥っているからだ。
過去のヒット作を模倣したり、売れ筋のテーマに本が偏ったりするのも無理はない。
そうした出版業界にあって、多産多死のビジネスモデルから離れてユニークな本を手掛けようとするムーブメントがある。
著者の発掘から編集、営業、経営までをたった一人で手がける一人出版社だ。
地方を拠点に活動をする人も多く、1つのライフスタイルとしても確立されつつある。
出版界の新たなムーブメントを追った。
INDEX
  • 「万葉集訳」で23万部!
  • ピークの半分以下に縮小
  • 答えは大手の「逆」にある
  • 「売れる」の定義が違う
  • 博打に勝って「2億円」
  • 創業理由は「生きる」ため

「万葉集訳」で23万部!

「ますらをや 片恋せむと 嘆けども 醜のますらを なほ恋ひにけり」
これは日本最古の和歌集、万葉集に収められた一首だ。天武天皇の子、舎人皇子が叶わぬ恋心を抱いてしまい、相手の女性に対して詠んだとされる。
今から1300年前、奈良が首都だった時代に編まれた万葉集は、その半分が恋歌で構成されている。
万葉集と聞くだけで難しいと構えがちだが、内容は意外なほど普遍的だ。その「普通さ」は現代語で読んでみるとよくわかる。
今、万葉集の現代語訳で大ヒットを飛ばしているのが、一人出版社の万葉社が手がける『愛するよりも 愛されたい』だ。
1300年前の恋歌たちを現代の奈良弁に訳してまとめ、すでに2タイトルを出版している。
冒頭の舎人皇子の歌の訳は、以下の通り。