文系就活生に「学業」を質問しない日本企業。“文系コンプレックス”の原因を考える
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業種・職種を変えて転職する越境キャリアを支援する立場からは、「学業」そのものに焦点を当てるからアピールしづらいだけではないかと感じます。
社会人の転職においても、「やってきたことを活かせる」には、以下の3レイヤーがあると思います。
①同業種・同職種の経験があり、新しい会社の組織やプロダクトの知識さえ入れれば、まさにほぼ即戦力として前職を活かせる
(民間の例:保険の営業マンの他社営業への転職)
(公務員の例:市役所から他の市役所へ)
②テーブルの向こう側の経験があり、反対側の知識・経験を活かしてその付加価値も出しつつ、新しい仕事に早期にキャッチアップできる
(民間の例:人材エージェントから企業リクルーター、企業人事への転職)
(公務員の例:民間企業の行政向け営業への転職)
③業務から得られた(ポータブル)スキルをいかし、新しい仕事にチャレンジしつつ、組織の多様性の一部としてイノベーションにも貢献する
(民間の例:経営コンサルタントからの未経験業種への転職)
(公務員の例:国家公務員からスタートアップの経営/事業企画)
私が日々ご支援する国家公務員の方々は、政府で法令案を作成・調整したり、国会議員に国会質問の内容をヒアリングして政府のどこがどんな答弁をするのか調整をしたりしますが、そんな業務は民間にはほぼありません。ですが、人材を業務軸ではなく、スキル軸で捉えるなら、彼らはポーターブルスキルのかたまりです。
文系の学生が学業で学ぶコンテンツを仕事に活かしづらいかどうかは分かりませんが、①のような学業で得たものそのものではなく、③のような学業を通じて得たものに目を向けることも良いと思います。僕はガクチカという言葉があまり好きではないです。
自分の好きなことがすべて「就活のため」になってしまうからです。
学生団体やインターンなども経験しましたが(それらは就活のためにやっていたわけではないので)面接ではほとんど話しませんでした。逆に、今専攻している学問になぜ興味を持ったのか、なにをこれからしたいのかを自分なりの視点でたくさん話しましたし、それで有意義な面接になったと思います。
おそらく「大学での学びも高校と同じで机にむかっているだけだから主体性をアピールできないのではないか」と思っている人が多いのかもしれませんが、本気で取り組めば主体性は必ず生まれます。
指定図書以外に文献を読み漁れるというのはステキな能力ですし、授業で積極的にコミュニケーションがとれる、学会発表では資料作成やプレゼンスキルが必要になるなど、学びを深めるほど他の人が経験できないこと、自分にしか話せないことが増えていくと思っています。
だからこそ、3年前期から就職活動を始める風潮はあまり良くないと思っています。文系でも理系でもこれから専門科目を深めていくという3年生の段階で、「あなた頑張ったことは?」と聞かれても答えられないですし、アルバイトの話をしたくなるのも無理はありません。新卒の採用というのは、そもそも企業は「即戦力」として採用していないと思います。
コミュニケーションの仕方や仕事の進め方含めて、色々とゼロから教えていく覚悟で採用していて、新卒の人が会社で貢献できるまで三年くらいかかるということも聞きます。
記事では、学業で得られた抽象的スキルは仕事に実は役立つ、とあり、その側面もある程度あるとは思いますが、それよりも学業であれなんであれ、「どういう気持ちとどういう姿勢で取り組んだのか」という「あり方」の方を採用担当者は見ていると思います。
何も言うことがないから学業をアピールというのは、その浅はかさが採用側にばれてしまうと思いますが、ほんとうに心をこめて一生懸命学業に取り組んだなら堂々と伝えれば良いのではないでしょうか。
そこで「そんなの役立たない」と実用性の観点で不採用にする企業はそれまでですし、そうじゃない企業は人と丁寧に向き合う企業な気がします。