(ブルームバーグ): 米アマゾン・ドット・コムは、ロボット掃除機「ルンバ」を製造するアイロボットを14億ドル(約2070億円)で買収する計画を断念した。同買収計画は欧州連合(EU)の競争当局が阻止する構えを見せていた。

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同買収計画の中止は、自社の行動が競争を阻害しないと証明しなければならないという強い圧力にアマゾンが直面していることを浮き彫りにする。同社は小売やクラウドコンピューティング、エンターテインメントなど複数の分野で影響力を増している。半面、買収断念によってアマゾンは、近年業績が悪化しているアイロボットの損失を食い止める作業は免れることになる。

アイロボットは、従業員の31%に相当する約350人の人員削減を伴う再編計画に着手するとし、コリン・アングル最高経営責任者(CEO)の退任も合わせて発表した。29日の米株式市場でアイロボット株は一時19%安と急落し、2009年以来の安値を付けた。

計画の中止でアマゾンはアイロボットに9400万ドルの違約金を支払うことになる。

欧州および米国で反トラスト法(独占禁止法)の執行を担う当局は、米大手ハイテク企業による競争の芽を摘むようなスタートアップ買収を阻止しようと神経をとがらせている。

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非公開情報であることを理由に匿名で語った関係者によると、アマゾンは先週、米連邦取引委員会(FTC)の反トラスト法担当幹部と面会。同幹部らはアマゾンに対し、アイロボット買収を巡る提訴の可能性に言及したという。アマゾン幹部と同社弁護士は今週、FTCの委員3人と有って同買収の最終的な働きかけを行う予定だったと関係者は明らかにした。

違約金を払っての買収計画中止という今回のアマゾンの動きは、米ソフトウエアメーカーのアドビとフィグマによる合併合意の解消に続くものだ。アドビとフィグマは昨年12月、欧州委員会および英競争・市場庁(CMA)から必要な規制当局の承認を受ける明確な道筋がないとの共同評価に基づき、合併計画を撤回。アドビはフィグマに10億ドルの違約金を支払うとしていた。

アマゾンのシニア・バイスプレジデントで法律顧問のデービッド・ザポルスキー氏は発表文で「今回の結果により、消費者はイノベーションの加速とより競争力のある価格を享受できなくなる」と主張。「過度な規制のハードルは、買収を成功への道の1つと考える起業家の意欲をそぎ、消費者にも競争環境にも打撃を与えるものだ。それこそ、規制当局が守ろうとしていると主張するものに他ならない」と述べた。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のシニア・アナリスト、プーナム・ゴヤル氏は「財務面から言えば、この取引はアマゾンの売上や利益にとって重要ではない」と指摘。その上で、今回の買収計画中止は「米欧の現在の規制状況を考えると、大手テクノロジー企業が買収を成立させるのには苦労するという我々の見方を裏付けるものだ」と語った。

原題:Amazon Drops iRobot Deal; Roomba Maker Cuts 31% of Staff (1)(抜粋)

 

(株価情報を更新し、第5段落以降を追加します)

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