(ブルームバーグ): 香港高等法院(高裁)は29日、経営再建中の中国不動産開発大手、中国恒大集団に清算を命じた。しかし、清算は困難なプロセスとなる公算が大きい。

陳静芬(リンダ・チャン)判事は、今回の命令で中国恒大が暫定管財人によって管理され、創業者の許家印会長による支配を含め、幾つかの問題に対処することになると述べた。その後、管財人にアルバレス・アンド・マーサルを選任した。

香港に上場する中国恒大の株価は29日に一時21%安。時価総額がわずか21億5000万香港ドル(約400億円)に落ち込んだ後、売買停止となった。ブルームバーグの集計データによると、ドル建ての中国恒大債の大半は26日遅くの時点で、額面1ドルに対して約1.5セントで取引された。返済に対する投資家の期待がほとんどないことを示唆している。

今回の清算命令は、中国の経済成長を妨げ、相次ぐデフォルト(債務不履行)を招いてきた不動産危機の最大の象徴として、中国恒大の立場を確固たるものにした。

クレジットサイツ・シンガポールのクレジットアナリスト、ツェリーナ・ツェン氏は「債権者がいまだに再編の条件に合意できていなかった点を考えれば、今回の清算命令は市場にとってサプライズというわけでもない」と指摘。大半の資産が本土にあるため、「清算命令によってオフショアの債権者が実質的な回収金を受け取れるかは疑わしい」と話す。

法律事務所アシャーストで再編パートナーを務めるランス・ジアン氏は、管財人が任命された後に何ができるか、特に中国と香港間の2021年の取り決めに基づいて、3つの指定された中国の裁判所のいずれかから認められるかどうか、市場は注視することになるだろうと指摘。「そうした承認を得られない場合、管財人は中国本土の資産に対する執行権限を非常に制限されることになる」と語る。

危機が21年に始まって以降、香港の裁判所が他の中国不動産開発企業に清算命令を出したのは少なくとも3件に上るが、複雑さや資産規模、利害関係者の数では中国恒大に遠く及ばない。また、佳源国際や陽光城集団傘下の陽光城嘉世国際の清算が大きく前進している兆候もほとんどない。

香港の破産手続きが中国で認められることは限定的で、中国の裁判所が自らの管轄で管財人を任命する可能性もある。

中国恒大の肖恩最高経営責任者(CEO)は発表文で、「当社は最善を尽くしてきたつもりであり、清算命令は遺憾だ」と表明。「住宅の引き渡しを確実に進め、グループの通常運営を着実に推進する」とし、管財人と意思疎通を図るとも説明した。

今回の清算申し立ては、恒大のオンライン販売プラットフォームの戦略的投資家だったトップ・シャイン・グローバル・リミテッド・オブ・インターショア・コンサルト(サモア)が22年6月に行っていた。

ただ、管財人が選任されても中国の不動産開発企業を相手に困難なプロセスに直面する公算が大きい。中国恒大の大半の事業は現地部門によって運営されており、オフショアの管財人が引き継ぐのは難しいかもしれない。

ナティクシスのシニアエコノミスト、ゲーリー・ウン氏は「打撃を受けた不動産セクターに、今回の清算自体がより大きな圧力をもたらす可能性は低く、マクロ経済面の影響は限定的にとどまると考えられる」としながらも、「投資家は他の事案にも雪だるま式に影響が及ぶことを懸念しており、センチメントは悪化するだろう」と述べた。

原題:Evergrande Heads to Liquidation in Milestone for Property Crisis、Hong Kong Court Names Alvarez & Marsal as Evergrande Liquidator(抜粋)

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