米、ウクライナ戦略転換 領土奪還よりも侵攻抑止に注力
コメント
注目のコメント
ワシントンポストの当該記事は、こちらのURLになりますね。
”U.S. war plans for Ukraine don’t foresee retaking lost territory”
https://www.washingtonpost.com/national-security/2024/01/26/ukraine-war-plan-biden-defense/
記事によれば、ウクライナを戦場での状態を維持するように位置づけつつ、2024年末までにもっと強くなるように、別の軌道に乗せ、持続可能な道を歩ませることを目指すとなっています。
昨年の反転攻勢が現実的ではなかったとの反省がウクライナ、米側にあることを踏まえ、支援の質と量の限界を見極めつつ、長期的な戦略にシフトしようとしていると理解します。また、長期的な米の支援をコミットすることで、プーチン側にこの戦争を勝利で終わらせることはできないことを改めて伝えることも狙いです。
戦術的には、これまでの戦闘の大半を占めた大規模な砲撃戦よりも、今後フランスから提供される巡航ミサイルを含む長距離射撃、海上輸送を守るためのロシア黒海艦隊の阻止、特殊作戦による破壊工作でクリミア内のロシア軍を拘束することに集中するようウクライナ側に期待するとされています。
記事にありますが、米大統領選の結果によってはトランプ政権が誕生する可能性がある中で、バイデン政権としては米による対ウクライナ支援を長期的に確実なものにしたい考えです。
なお、対ウクライナ支援に関する支持を共和党からとりつけるために、26日、バイデン大統領は、中南米から不法移民が殺到した場合の「国境封鎖」に言及し、これまでの国境管理が十分でなかったことを認めたと報じられています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bb65d3fe9af9fc95489104b1bbd49a01101fa16f
国境と不法移民の管理は、世論調査で最も評価の低い問題とされており、米国に入ってくる不法移民の数は記録的に上昇してきています。
ウクライナ問題に加え、不法移民の問題も、日本にとって対岸の火事ではありませんので、注視していくべきであり、日本のメディアはもっと報じて頂きたいと思います。これは、米国政府が、ウクライナ政府に対して、「攻勢はあきらめて守りに徹するように」強く勧めている、という話です。
米国がウクライナをあまり支援できそうにないからです。
ウクライナは渋っています。ウクライナは、攻勢を続けられなくはないですが、あとはEUがどれだけ支援するか、特にドイツがどれだけ本気でやるかにかかっています。
これまでのEUの支援の水準では、攻勢は無理です。
守りは攻めよりもリソースが少なくて済みますが、ロシアとウクライナの間の国境は非常に長く、守るのも非常に困難です。
攻勢にはリソースが必要ですが、攻める側はどこで攻勢をかけるか選択することができます。
ウクライナには、国境にまんべんなく守備兵力を配置するリソースはありません。
ウクライナは地理的な理由から、大規模な陸軍の展開が容易で、歴史を通して大会戦が繰り返されてきました。
米国は、ウクライナに対して、機動防御を勧めています。
まんべんなく守備兵力を配置するのではなく、機動的に動ける兵力を用意しておいて、ロシア軍が攻勢に出た地点に適宜動かして撃退する、ということです。
これはいうほど簡単なことではなく、司令部の迅速な判断、充実した装備、高い練度が必要です。
第2次世界大戦では、ドイツのマンシュタイン元帥がソ連軍相手の第2次ハリコフ(ハルキウ)攻防戦でこれをやってみせて成功しましたが、むしろ成功事例の方が少ないくらいです。
ただ、地理上の理由で、もともとウクライナは大兵力が無ければ守りにくい土地で、こういう戦い方が必要になります。昔ならコサック騎兵軍団の機動的運動がものをいったのですが。2023年の反転攻勢が不発に終わり、米国内、とくに議会においてウクライナ支援の優先度が下がったことで、現実的な選択として侵攻の抑止と紛争の凍結(停戦ではない)を目指すことになったということなんだろうな…。