(ブルームバーグ): 大和証券グループ本社の株価純資産倍率(PBR)が15日、1倍を回復した。ブルームバーグのデータによると1倍回復は2018年2月以来、約6年ぶりとなる。銀行グループを含めた国内大手金融機関の中で、解散価値とされるPBR1倍の復帰をいち早く果たした。

大和証Gの株価は、前営業日比5.9%高の1069.5円で取引を終えた。23年9月末の1株当たり純資産(1046円95銭)をベースとしたPBRは1倍を超えた。株価水準も08年6月以来となる約15年7カ月ぶりの高値を更新した。

PBRは純資産に比べて株式時価総額がどれだけ高いかを示す指標。1倍を下回っていれば、上場を維持するよりも、会社を解散して資産を株主で分配したほうが効果的ともいえる。

低PBRは広く日本企業に共通する課題だ。東京証券取引所は23年3月、PBR1倍割れ企業に対し、「資本収益性や成長性といった観点で課題がある」として、改善に向けた取り組みの開示を求めた。PBR1倍回復に対する投資家からの関心は高い。

経営戦略を市場が評価と分析

1倍回復について大和証Gの佐藤英二・最高財務責任者(CFO)はブルームバーグの取材に対し、「PBR向上に向けたリテール部門の30年度経常利益1000億円の達成やアセットマネジメントビジネス強化などの戦略が市場から評価を得ていると感じている」とコメント。

その上で「PBR1倍はゴールではなく、あくまで一つの通過点に過ぎない」とし、今後、新たな少額投資非課税制度(NISA)などの資産運用立国に向けた進捗(しんちょく)が期待される中、資本市場の担い手として「市場からの評価を高め、PBRを一層向上させていきたい」とした。

大和証GのPBRは18年には1倍を上回っていたが、その後は下落傾向をたどり、20年には一時0.5倍割れの水準まで落ち込んでいた。

   日銀によるマイナス金利の早期解除観測の後退や新NISA開始に伴う業績拡大期待などから証券株は年初からTOPIXを上回る上昇率となっている。しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は大和証G株に関して「自社株買いなどの株主還元を重視する姿勢が投資家に好感されている」とも指摘する。

海外と比べて収益性で見劣り

ブルームバーグのデータによると、TOPIX(東証株価指数)を構成する証券関連23銘柄のうちPBRが1倍を上回っているのは15日時点で6社。松井証券やマネックスグループといったインターネット証券などが名を連ねている。野村ホールディングスのPBRは0.66倍、SBIホールディングスは0.89倍。3メガ銀行グループも全て1倍を下回っている。

一方、米国では金融大手のJPモルガン・チェースやモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス・グループなどでPBRが1倍を上回る。しんきんアセットの藤原氏は、海外金融機関の資本効率が高い点について「デジタルトランスフォーメーション(DX)や店舗網の見直しなどで、日本より業務効率化が進んでいる」ことを挙げる。

リテール分野では、全国に支店を持って幅広い顧客にサービスを提供する日本に対し、「欧米金融機関は富裕層に特化するなど収益が大きいところに経営資源を集中しており、日本のスタイルでは収益性で見劣りしてしまう」と分析した。

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--取材協力:谷口崇子.

(市場関係者のコメントを加えたほか株価を終値として記事を更新します)

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