(ブルームバーグ): 米証券取引委員会(SEC)は10日、暗号資産(仮想通貨)ビットコインについて、現物投資型の上場投資信託(ETF)の上場申請を承認した。暗号資産交換所を経由せず、証券口座で売買できるETFを通じて、ビットコインのポートフォリオへの組み入れが容易になり、投資に弾みがつくと期待される。

現物投資型ETFが初めて承認されたことで、暗号資産で時価総額トップのビットコインへのアクセスがウォール街にとどまらず広く拡大する見込みだ。約1兆7000億ドル(約247兆円)規模のデジタル資産セクターにとって、歓迎すべき画期的な出来事といえる。

SECはブラックロック、インベスコ、フィデリティといった資産運用大手やヴァルキリーなど比較的規模の小さい会社からの申請を承認し、11のファンドに11日からの取引開始を認めた。デジタル資産運用会社グレースケール・インベストメンツが提供する「グレースケール・ビットコイン・トラスト」(銘柄コード:GBTC)のETF転換も承認された。

デューク大学のキャンベル・ハーベイ教授(金融)は「個人投資家も機関投資家も今やカストディーの面倒な問題を心配することなく、暗号資産エクスポージャーのポートフォリオを分散できることを意味する。ETFはポートフォリオの追加を容易にする」と指摘した。

SECの決定を受け、アジア時間11日午前の取引で、ビットコインの価格は一時4万7000ドル台に乗せ、3.8%高の4万7705ドルを付けた。日本時間午後4時すぎには4万6000ドルを若干下回る水準で取引された。

キャメロン・ウィンクルボス氏とタイラー・ウィンクルボス氏の兄弟が2013年にビットコインETFの申請を最初に行って以降、10年余り反対を続けてきたSECにとって、今回の決定はめったにない屈服を意味する。

ビットコイン現物投資型ETFをSECが承認したという虚偽の投稿がX(旧ツイッター)のSEC公式アカウントに一時表示され、SECがそれを否定した翌日に正式発表するという異例の事態も起きた。

グレースケールは、GBTCのETF転換申請を認めなかったSECの決定を不服として連邦高裁の判断を仰ぎ、昨年8月に決定が覆された。グレースケールに対する敗訴が、一連の申請を承認した理由の一つだとSECのゲンスラー委員長は認めた。

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ゲンスラー委員長は声明で、「きょう特定のビットコイン現物投資型ETFの上場と取引を承認したとはいえ、われわれはビットコインを是認したり推奨したりしてはいない。暗号資産に価値が連動する商品やビットコインに関わる無数のリスクについて、投資家は慎重であり続けるべきだ」と見解を示した。

ビットコイン先物ETFは21年に承認されており、連邦高裁はSECが類似の投資商品への異なる扱いを説明しておらず、GBTCのETF転換申請を認めなかった決定を「恣意(しい)的かつ気まぐれ」と認定した。

SECは承認の理由として新たな調査結果に言及し、「ビットコインのスポット市場価格に影響を与える不正や操作は、CMEのビットコイン先物価格にも同様に影響する可能性が高く、CMEとのサーベイランスシェアリング取り決めは、申請された現物投資型ビットコインETP(上場投資商品)に影響を与えかねない不正や操作の監視を支援すると合理的に期待できる」と説明した。

SECのウェブサイトに掲載された採決結果によると、ゲンスラー氏は共和党の委員2人と共に賛成に回り、3対2で承認された。民主党の委員2人は反対に回った。

ワシントンにおける暗号資産業界の最も熱心な支持者の1人、ヘスター・ピアースSEC委員(共和党)はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、今回の結果について「大きな節目だ」と歓迎した。

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原題:SEC Authorizes Bitcoin-Spot ETFs in Crypto’s Breakthrough (2)、Stung by a Judge, SEC Rethinks Its View on Crypto Surveillance(抜粋)

(司法判断やSECの承認理由を追加して更新します)

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