正しく体を揺らすと健康になる

正しく体を揺らすと健康になる・連載第15回

あなたは本当に自分の体をわかっていますか?

2015/4/23
操体法を極めた西本直は、施術を受けに訪れた多くの人から「自分の体は自分が一番良くわかっている」という言葉を何度も聞かされてきた。だが、西本の目からすると、まったくわかっていない人がほとんどだと言う。「体をわかる」ためには何が必要なのか?

まず離れるべきは「どこかを治すために」という考え

これまで紹介してきたように、人間の体は「部分」の寄せ集めではありません。

肩甲骨を動かそうと思っても、股関節を動かそうと思っても、最終的には「体全体」が動くようにできています。

ですから、皆さんが言葉として表現する「腰痛」「肩こり」「背中や首の痛み」といったものも、そこだけが悪くなっているわけではないのです。

日常の体の使い方から始まり、全体の連動を妨げる歪みを生んだ結果として、ある部分が代表して悲鳴を上げているということです

ですから、「肩こりを和らげよう」「腰痛を軽減させよう」というところから一歩踏み込んで、その両方がつながっていることを理解してほしいのです。

せっかく体全体が動きをひとつにつなげて、整えてくれようとしてくれているのですから、「部分」の意識は必要ないのです。

どうしても「この部分を治すためには、こういうところに行って、こういう施術を受けて」と、一対一の考えに終始してしまう人がほとんどです。

その意識が変わらない限り、本当の意味で体が変わることはありません。

体は丸ごとひとつで、「か・ら・だ」なのです。

朝起きたときに、意識すべきこと

古い話で恐縮ですが、私が車の免許を取った昭和52年(1977年)頃は、車に乗る前には必ず暖機運転を行って、エンジンに負荷をかけすぎないようにしていました。

それは人間の体も同じです。

目が覚めたら食事もそこそこにすぐに一日の生活が始まる、という人がほとんどではないでしょうか。そうなると痛みを認識するまで体を使い続け、体の不調が引き起こされてしまいます。

大きな問題になる前に、自分の体の小さな変化に気が付くことが大切です。

それは単に数値で示される体の状態ではありません。人間という動物として生まれてきた、われわれのもって生まれた本能の感覚のことです。

その感覚を知る努力は、さまざまな問題の予防・改善に役立つのです。

朝晩少しの時間を自分のために

2004年に著した『朝3分の寝たまま操体法』(講談社+α新書)に詳しく紹介してあるのですが、朝起きた時と夜に寝る前のちょっとした時間を、自分の体との対話に使っていただくことはできないでしょうか?

体はこちらが丁寧に問いかければ、きちんと応えてくれるようにできています。

そのことに気付かず、道具のように使い続けていたのでは、いつか必ず言うことを聞いてくれなくなります。

『朝3分の寝たまま操体法』は初版からすでに11年が経ちましたが、いまだに版を重ねており、「自分の体とうまく付き合えるようになった」とうれしい感想をいただくこともあります。

ほとんどの人は、違う意味で、「自分の体は自分が一番わかっている」と言います。

これにはとても賛同できません。

好きなように使い、問題が生じても自分のせいではないと、人任せにしてしまう人が、本当に自分の体のことを一番わかっているはずがありません。

そういう人の場合は、施術者である私のほうが、よほど体との対話ができ体の言い分を聞いて施術を行うことができます。

では、どうすれば自分の体と対話して、本当の意味で「わかっている」と言えるようになるのか。

次回、朝と夜に取り組んでほしい操体法のやり方を紹介したいと思います。

※本連載は毎週月曜日と木曜日に掲載予定です。