正しく体を揺らすと健康になる

正しく体を揺らすと健康になる・連載第16回

寝たまま気軽にできる操体法入門

2015/4/30
体を横にしているときは、体が重力から解放されて、体を整えるのには絶好の状態だ。朝起きたとき、そして夜寝る前、ベッドや布団で横になったまま何をすれば、肩こりや腰痛から解放されて快適に日常生活を送れるようになるのか? トレーナーの西本直が操体法を伝授する。

操体法1:かかと伸ばし

今回は拙著『朝3分の寝たまま操体法』(講談社+α新書)の内容から、朝起きたとき、そして夜寝る前に実践できる操体法を4つ紹介したいと思います。

まずは1つ目、「かかと伸ばし」と呼ばれる操体を紹介します。

西本直著『朝3分の寝たまま操体法』(講談社+α新書)を参考に作成

西本直著『朝3分の寝たまま操体法』(講談社+α新書)を参考に作成

寝床の中で、仰向けに体を寝かせ、手と足をゆったりと伸ばしてください。

どちらか片方の足のかかとが伸びていくような感覚で、腰や背中も同時に柔らかくしながら体を伸ばしてみましょう。

ここで一番大切なのが、筋肉が主役になってエイヤッと動いてしまわないことです。

ほとんどの方が、筋肉の動きを前面に出して一気に伸びてしまいますが、これでは体との対話にはなりません。

体の骨を動かしてくれるのは筋肉なのですが、先に筋肉ありきでは、「骨がどういうふうに動いていくのか」「骨格がどう変化していくのか」という、肝心な部分を意識しにくいのです。

力まずゆっくり伸ばすのがポイント

ここが一番口で伝えるのが難しいのですが、筋肉の仕事は最小限にとどめてほしいのです。

動きの途中につっかえる角度があったり、力を伝えにくい筋肉や関節があるぞ、という体の声を聞き分けるためには、「骨が勝手に動いている」というくらいの意識で動いてほしいのです。

力づくという言葉を、いったん頭の中から消してみてください。

そうすると、「このくらいの力加減なら、この辺りまではスムーズに動いてくれるのだな」という、その時その瞬間の、自分の体の状態がわかるようになります。

この感覚がわかってくれば、今日は何かいつもと違うから無理をせず用心して過ごそうとか、いい感じで一日頑張れそうだなとか、自分自身で判断できるようになります。

こうなったときに初めて、「自分の体は自分が一番わかっている」と言っていいのです。

筋肉の力に頼らず、全身の骨を動かして、目的の動きを表現する──。この感覚で動けるようになると、実に気持ち良く日常生活を過ごすことができます。

拙著には『朝3分』というタイトルがついていますが、実際に行った方から「気が付くと、朝に10分、20分が経過して遅刻しそうになった」というクレームをいただいたことがあります。うまく動けば、それほど体は喜んでくれるのです。

気持ち良さと楽しさを味わいながら

このかかとを押し出していく動作で、ゆっくり左右の動きを比べてみると、「こっちの方が楽に動けた」「逆側はちょっと」という差を感じるかもしれません。漠然とした違和感を含めて、いろいろなことに気付くはずです。

この「気付く」という感覚に目覚めてほしいのです。

右か左のどちらが良いとか悪いとか、白黒つける必要はありません。両方嫌だったら、この操法はパスしてもいいくらいです。

気持ちいいな、楽しいな、もう1度やりたいな、というときのみ行えばいいのです。

日本人は必ず言葉での理解を欲しがり、「どの角度で何秒間?」「回数は何回?」といった質問をしたがりますが、これが正しい、これが間違い、という問題ではありません。

かたちを自由に変えつつ、中身の様子が変わっていくのを感じられるのは、あなた自身しかいないのですから。