2023/12/18

【星野佳路×為末大】求められる仕事と、好きな仕事のはなし

Deportare Partners CEO
昨日より今日、今日よりも明日…。仕事でも料理や洗濯などの日常生活であっても、少しずつ上達すると楽しいものだ。
最初は何げなく始めたことも次第に基本のスタイルが確立され、どんどん「らしさ」が出てくる。大なり小なり、誰もが一度はそんな経験をしたことがあるだろう。
本連載では、こうした「熟達」をテーマに各界の第一人者にその方法論を聞いていく。聞き手を務めるのは、元陸上選手の為末大氏だ。
スプリント種目の世界大会で日本人で初めてメダルを獲得した為末氏は、短距離走の熟達のプロフェッショナルでありながら、他の業界との共通点を探し続けてきた。
そのメソッドを1冊にまとめた『熟達論』をベースに、あらゆる角度から質問を投げかける。
今回のゲストは星野リゾート代表、星野佳路氏だ。
経営者にとっての熟達とは?ビジネスを熟達させるって、どういうこと?
(第3回/全3回)
星野佳路(ほしの・よしはる)
1960年長野県軽井沢町生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。1991年、星野温泉(現・星野リゾート)の社長に就任。ホテル運営のほか、経営難に陥った旅館の再生を手がける。
為末大(ためすえ・だい)
1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2023年11月現在)。現在は執筆活動、身体に関わるプロジェクトを行うほか、アスリートとしての学びをまとめた近著『熟達論:人はいつまでも学び、成長できる』を通じて、人間の熟達について探求する。その他、主な著作は『Winning Alone』『諦める力』など。
INDEX
  • いかに成功体験から離れるか
  • 伸び続ける人間、そうでない人間
  • トップにしかできないこと
  • 他の企業を見て、思うこと
  • まずは「求められる仕事」から

いかに成功体験から離れるか

為末 いろいろなスポーツ選手を見ていると、非常に才能もあって努力するし、伸びるんだけど、ある段階で止まってしまう選手がいます。
とにかく自分が決めたことしか受け入れない。コーチからのフィードバックが全然入らない。
そういう選手は外から自分を眺める「メタ認知」がないというか、何かに執着しやすい自分とか、少ない情報しかないのにそれに基づいて「これしかない」と思い込んでしまう自分を認識していないんです。
だから自分を知った上で周辺環境をうまく設計する人と、毎回同じようなことに囚われて、毎回苦しむ人に分かれる。
スポーツの教科書には技術のほうは書かれていても、こういう自分の扱い方がほとんど書かれていないんですね。この自分の扱い方が経営者にとっても大事なものかなと感じます。
星野さんは、どう思われますか?
星野 私も過去の成功に囚われることはありますね。