Noriyuki Hirata

[東京 28日 ロイター] - トヨタグループによる政策保有株見直しが鮮明になることで、日本企業の資本効率向上に対する海外勢の期待感が再び高まるとの思惑が急浮上している。バリュー株全般に物色が波及すれば、指数の底上げにつながるとの期待も出ている。

<地殻変動の兆し>

ロイターは28日、トヨタ自動車など複数のトヨタグループ企業が、保有するデンソー株を売却する方向で調整していることが分かったと報じた。トヨタと豊田自動織機、アイシンが合計でデンソー株の約10%を売却する。

デンソー、アイシン、豊田自動織機はトヨタグループの御三家とされ、市場では「トヨタグループを挙げての有言実行で、本気度がうかがえる」(東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリスト)との声が聞かれる。

SMBC日興証券の太田千尋投資情報部部長は「トヨタグループで動きが出たのは、地殻変動の兆しと受け止められるのではないか」と指摘する。

トヨタの取り組みは「資本の効率化に加え、グループ会社に自立を促す動きにみえる」とニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストはみる。「同業他社や他業種にも影響を及ぼす可能性があり、日本株の魅力は高まるだろう。日本株の活性化を促す大転換点になるかもしれない」という。

<年末高の起爆剤にも>

日本企業の象徴でもあるトヨタグループのこうした動きは、海外勢による日本株の再評価につながり得るとの見方は多い。海外勢は企業の資本効率の悪化につながる政策保有株の扱いに注目しており「それががほぐれてくることは、中長期的にポジティブ」とSMBC日興の太田氏は指摘する。

JPモルガン証券の高田将成クオンツ・ストラテジストは「米株以外にも資産の振り向け先を探す海外投資家にとって、ガバナンス改革や賃上げ、デフレ脱却などの話題は好材料とみなされやすい」と受け止めている。

海外勢の売買動向をみると、株価が大幅上昇した4─6月には、デフレ脱却や東証の要請に基づく企業改革への期待感を背景に7兆円超の買い越しがみられたが、株価が伸び悩んだ7―10月は、約3兆円の売り越しに転じた。

11月は、第3週までに2兆円超の買い越し。短期筋が中心とされる先物が2兆円弱の買い越しとなる一方、中長期投資家が中心とされる現物は約5000億円の買い越しにとどまった。「中長期投資家は、日本株のアンダーウェートを解消する余地がまだある」とJPモルガンの高田氏はみている。

目先は米雇用統計や消費者物価指数(CPI)といった不透明要因があるが、現時点で米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ織り込みはほぼ消滅している。「金利の低下基調でグロース株が買われやすい中、バリュー株の底上げがあれば、指数の押し上げが期待できる」と、ニッセイ基礎研の井出氏は話す。