(ブルームバーグ): 暗号資産(仮想通貨)交換業者バイナンス・ホールディングスと趙長鵬最高経営責任者(CEO)は21日、マネーロンダリング(資金洗浄)防止法違反に加え、イスラム組織ハマスや他のテロリスト集団との取引を容認するなど米制裁に違反した罪を認めた。同社を存続させるため米司法省などと交わされた包括的な取引の下で行われた。

バイナンスは刑事責任を認め、43億ドル(約6400億円)の罰金支払いに同意した。米シアトルの連邦地裁に出廷した趙CEOは銀行秘密法違反の罪を認め、司法取引の一環として退任と5000万ドルの支払いに同意した。

米財務省や商品先物取引委員会(CFTC)なども加わった今回の司法取引により、複数年にわたったバイナンスへの調査は終了する。

21日に開示された資料によると、バイナンスはマネーロンダリング防止法違反、無認可の送金事業を実施するための共謀、米制裁違反を含む3つの罪に問われた。同日公表された裁判所への提出資料によれば、バイナンスは18億ドルの罰金を支払い、25億ドルを没収される。

趙CEOは最長10年の禁錮刑が科される可能性があるが、司法取引により刑期は1年6月以内と予想される。仮想通貨業界で有罪となった他の著名人が受けたような厳しい刑罰を免れたと見受けられる。ただ司法省は求める刑期の長さを決めていない。

財務省によると、バイナンスの違反には、ハマスの軍事部門カッサム旅団、パレスチナ自治区の武装組織「イスラム聖戦」(PIJ)、国際テロ組織アルカイダ、イラクとシリアの過激派組織イスラム国(IS)などのテロリストとの疑わしい取引を阻止・報告しなかったことが含まれた。

裁判所への提出資料によれば、同社は米国とイランの顧客との間で、少なくとも110万件、8億9800万ドル強相当の取引を容認した。

ガーランド司法長官は「バイナンスが世界最大の暗号通貨交換業者になった背景には、同社が関与した犯罪がある。今回、企業として米史上最大級の罰金を支払うことになる」との声明を発表した。

バイナンスが発行した仮想通貨、バイナンスコイン(BNB)はニュースを受けて一時約5.2%下落した。BNBはこの日、司法省がバイナンスとの取引を近く確認するとの報道を受け5カ月ぶりの高値を付けていた。

イエレン財務長官は発表文で、「バイナンスは利益を追求するあまり、法的義務に目をつぶった」とし、「その故意の違反はプラットフォーム経由でテロリストやサイバー犯罪者、児童虐待者への資金流入を許した」と批判した。

当局と同社の交渉で実現した取引は刑事上の不正行為に関する全ての案件を決着させる見通し。取引についてはブルームバーグ・ニュースが20日、報じていた。ガーランド、イエレン両氏は21日の記者会見で取引の詳細を発表した。

司法取引の一環として趙CEOはバイナンスのCEOを退任し、3年間は経営に関与できない。後任にはリチャード・テン氏が就任する。

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原題:Binance Pleads Guilty, Loses CZ, Pays Fines to End Legal Woes、Binance and CEO Plead Guilty, Agree to Pay Billions in Fines(抜粋)

(司法長官の声明などを追加して更新します)

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