ブラジルから来て20年。「日本育ち」の子どもに寄り添うミヤワキ・シズカさんの挑戦
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ニッポン複雑紀行で新しい記事をつくりました。岐阜県大垣市のアフタースクール「エスパシン」で、主にブラジルルーツの子どもたち、親たち、スクールを運営する方たちからお話を聞きました。
かつて「ニューカマー」や「デカセギ」と言われた人々の受け入れ開始からすでに30年以上の時間が経ち、それぞれの地域で定住が進み、かれらの子ども世代（1.5世、2世以降）が日本社会で生まれ育っています。
そんな子どもたちが、日本社会や学校の中で様々な壁や葛藤に直面している現実が見えてきました。それらは一人ひとりの個別的な特性や事情に帰せば済むものではなく、この社会が抱える問題の反映として捉える必要があります。
「パウリーニョは学校ではブラジルルーツの友だちとほとんどしゃべらないの。ここでの彼の様子をみていればわかるけど（ブラジルが）嫌いじゃないのに学校では話さない」
「どうしてだと思う？ そうしないと周囲からの扱いが変わるから。自分に対する扱いが変わらないように、彼は学校では異質な（外国ルーツの）友だちを避けている」
子どもたち一人ひとりのこうした「自発的な」行動の裏側にある「社会的な」背景をこそ見ていかなければいけないと思います。
記事の最初の企画からインタビュー、執筆まで、自身も1991年にブラジルから来日した宮ヶ迫ナンシー理沙さんが担ってくださいました。理沙さんのおかげで、ポルトガル語でのインタビューが可能になり、また、ニッポン複雑紀行として初めてとなる二つの言語での記事制作も実現できました。理沙さんの気持ちがこもった記事になっていますので、ぜひ読んでみてください。
また、お近くにポルトガル語話者の方がいらっしゃったら、ぜひポルトガル語版もシェアしていただけたら嬉しいです。「エスパシン」という小さな場所に集う様々な人々の姿や言葉が、同じ社会で暮らす多くの人に届くことを願っています。
注目のコメント
ウェブマガジンのタイトルそのままの、一つの答えなどない綴られた困難の複雑さになかなか言葉にまとまらない。
最終的には「個の確立」であるアイデンティティも、子供にとっては両親、家族、同級生、世間、日本社会という連続性の中で形成されるもの。
そんな子供たちが成長に伴い視野が広がるのに歩調を合わせるように現れる、アイデンティティを形づくる大きな核の一つであるはずの「ルーツ」を隠し否定する、まるで防衛反応のような振る舞いをの事例を読むのは、実に胸が痛い。
ただこの記事が印象的なのは、そこから日本社会といったマクロな議論に向かうのではなく、ミクロの視点に留まり個々の子供に寄り添い試行錯誤し悩む大人たちの葛藤も丁寧に綴っていること。
大人にもそれぞれに生活の困難があり、日本社会における自身の立ち位置の問題があり、特にアイデンティティについて子供にどうあって欲しいかの願いや悩みもある。
それでも、そんな制約や困難の下でも、子供を育てる親や様々な形でサポートするアフタースクールのサポーターたちの言葉が胸に残るとともに、う～ん、安易にマクロな方向に考えが行ってはダメだと思いつつも、やはり行政はどのような形でこのインテグレーションの問題に取り組んでいけるのかは、考えてしまう。
何処の国でも後年難題として立ち現れる問題ですが、現在進行形に日本にとっては待ったなしの問題のはずです。
これは「複雑紀行」の記事全てに言えることだけど、複雑なことを無理に還元せず、丁寧に複雑さそのものを提示している。そのため読後はいつも何処から手を付けてよいか見当もつかない大きな宿題を抱えた気持ちになるも、考えることを促すトリガーとしてこれほど優れた媒体も他にないと思います。
