正しく体を揺らすと健康になる

正しく体を揺らすと健康になる・連載第12回

あなたの「ふくらはぎ」は硬くなっていませんか?

2015/4/13
自分の「ふくらはぎ」を触って、硬くなっていたら要注意である。なぜなら「ふくらはぎ」は人体の構造上、腰痛と大きく関係しているからだ。ひどい場合、ぎっくり腰を引き起こしてしまう。操体法を極めたトレーナーの西本直が、腰痛予備軍に警鐘を鳴らす。

赤ちゃんがハイハイする意味

突然ですが、赤ちゃんの「ハイハイ」にはどんな意味があると思いますか?

答えから書くと、それは直立するために必要な「広背筋」を鍛えるためです。

立ち上がった時に体を真っすぐに保つためには、背中の筋肉、すなわち広背筋が必要です。赤ちゃんはハイハイによって、背中を鍛えているのです。

早く立ち上がって歩いてほしいのも親心ですが、体の基礎をつくる上でとても大切な時期です。この年頃のお子さんがいる人には、「しっかりハイハイさせて、今のうちから広背筋を鍛えさせておくんだよ」とアドバイスしています。

もちろん、広背筋だけでは立つことができません。

順序としては、次につかまり立ちができるようになり、下半身の筋肉が体を支えることができるようになってから、やっと歩けるようになります。

直立に必要な3つの筋肉

さて、なぜ人間は立っていられるのでしょう?

筋肉には、関節を曲げる時に働く屈筋と、伸ばす時に使われる伸筋という分類の仕方があります。

立っていられるのは、この伸筋という筋肉が無駄に力を使わず、必要最小限の筋力を発揮し続けてくれているからです。

「ふくらはぎの筋肉」「太腿の前の筋肉」、そして「腰から背中にかけての後ろ側の筋肉」が、前後に押し合うように体を支えてくれて立っています。
 20150414_立つときに使う筋肉

実にうまくできていますよね。しかし、いくら屈筋に比べてタフな伸筋とはいえ、頑張り続けるにも限度があります。

適度に収縮させることで血液の循環を促進しなければ、筋肉は柔軟性を失ってしまいます。

立っている時だけでなく、座っている時も同じです。一見すると足の筋肉には負担がかかっていないようですが、収縮がないという意味では、血液の循環を損なっています。

貧乏ゆすりには血行促進の効果がある

なぜそう呼ばれているのかはわかりませんが、貧乏ゆすりという行為があります。

足のかかとを浮かせて、小刻みにかかとを上げ下げする動きです。

貧乏ゆすりというくらいですから、あまり人前ではやらない方がいいのかもしれませんが、実際にはふくらはぎの筋肉を多少なりとも収縮させることができ、なかなか効果的な動きです。

ふくらはぎに張りを感じたら要注意

さて今回の本題である「ふくらはぎ」の話に入りましょう。

腰痛で私の元を訪れる人は、ほぼ100%ふくらはぎの筋肉が異常なくらい緊張しています。

なぜでしょうか?

人間の直立のメカニズムというのは、上述したように、「ふくらはぎの筋肉」「太腿の前の筋肉」、そして「腰から背中の筋肉」が前後に支え合って成り立っています。

腰痛の人は、どうしても腰に意識が向いてしまいますが、実際はもっと広い範囲に問題が生じているのです。

「腰背部の筋肉」に異常があるということは、体を真っ直ぐに支えているその下の「太腿の前の筋肉」、そのまた下の「ふくらはぎの筋肉」が、悲鳴をあげて耐えられなくなった結果なのです。

腰痛の方にじっくり話を聞いてみると、「ふくらはぎの筋肉に強い緊張があった」など、前兆を感じていた人がほとんどです。

ぎっくり腰は突然やってくる

その最もひどいケースが「ぎっくり腰」です。

「ぎっくり腰」を発症した人のほとんどが、朝に顔を洗おうと前かがみになった時や、仕事中に席を立とうとした瞬間など、何気ない動作が原因だったと語っています。「特に重い物を持ったわけではないのに、どうして?」と不思議がる人が多いのです。

しかし、よく話を聞いてみると、その数日前から体が硬くなっていたとか、ふくらはぎがパンパンでお風呂の中でさすっても痛みがあったなど、何かしらの危険信号に気付いていることがほとんどです。

くどいようですが、まっすぐ立つためには、ふくらはぎの筋肉、太腿の前の筋肉、そして腰から背中の筋肉が、前後から押し合うように体を支えなければなりません。

その一番下に位置するふくらはぎの筋肉は、体を真っ直ぐ支えるということに関しても、実に重要な役割を果たしています。

腰が疲れてきた、なんとなくだるい、すでに痛みがある――そういう感覚が出てきたときには、間違いなくふくらはぎの筋肉は柔軟性を失っており、触ってみると硬くなっているのが分かるはずです。

逆に言えば、ふくらはぎの筋肉が硬くなっていれば、いつ腰痛を発症してもおかしくない状態だということです。

「氷山の一角」という言葉がありますが、我慢できない痛みは水面から飛び出した部分にすぎず、実はその下に大きな問題があるのです。

※本連載は毎週月曜日と木曜日に掲載する予定です。