正しく体を揺らすと健康になる

正しく体を揺らすと健康になる・連載第11回

椅子に座ったまま「骨盤」の柔軟性を高める方法

2015/4/9
これまでの連載では主に肩こりに焦点をあててきた。体はすべてつながっており、それは同時に腰痛の予防・改善の効果もある。ただし、腰に焦点をあてると、より体全体の動きを把握しやすくなる。今回からは腰痛に意識を置いた動きを紹介していく。
西本直が広島で運営する『Conditioning Studio 操』にて。Jリーガーやプロ野球選手が訪れる(写真:Shinya Kizaki)

西本直が広島で運営する『Conditioning Studio 操』にて。Jリーガーやプロ野球選手が訪れる(写真:木崎伸也)

どうして腰が痛いと感じるのか

今回から「腰痛」について掘り下げていこうと思います。

肩こりもつらいですが、腰痛の場合、歩く動作そのものに支障が出る可能性があります。

そもそもなぜ腰が痛いと感じるのでしょう?

肩こりと同じく、「無理な姿勢で座り続けて、筋肉の正しい収縮が行なわれない」ことや、「一定方向への動きを繰り返し行ったことによる、筋肉の緊張のアンバランス」など、原因はさまざまです。

腰には座っていても、立っていても、いや応なしに体の重さがのしかかってきます。二足歩行に進化したことで、受け入れなければならない宿命と言ってもいいかもしれません。

「硬くなった筋肉」を無理して使うと、筋肉自体が損傷し、炎症を起こしてしまうことがあります。ギックリ腰はこういう状態です。

椅子に座ったまま骨盤を前後に揺らす

肩甲骨のところでも紹介したように、体はすべてつながっており、肩甲骨を動かせば股関節が動きます。つまり、これまで紹介してきた肩甲骨を緩める動きは、おのずと腰痛の予防や改善をもたらします。

とはいえ、骨盤に意識を置くと、より体全体を調整しやすくなります。

そこで今回は、椅子に座ったまま骨盤をほぐす運動を紹介したいと思います。

まず椅子に座って、背筋を自然に伸ばしてください。キャスター付きの椅子が望ましいですが、ない場合は普通の椅子でも大丈夫です。ただ、お尻の部分が滑りやすい素材の方が、以下の動きをしやすいです。

椅子に座ったら、両膝を交互に前にゆっくりと押し出してみてください。お尻が一緒に動き、膝を少し動かしただけでも、骨盤が大きく動いているのが分かるでしょうか。
20150409_腰痛持ちは骨盤と背骨が揺れづらい

こうやって膝を前後に動かすためには、背中を(あくまで自然に)反らせていないとうまく動きません。うまくやると腰から背中にかけて、広い範囲がねじられます。

イメージしやすいように筋肉を動かす感覚で伝えましたが、この動きの本当の狙いは他の部分にあります。

真の狙いは、背骨を構成する約20個の骨のつなぎの部分。すなわち椎間板(骨と骨との間でクッションの役目をしている組織)を左右にねじることで優しく刺激し、本来の柔軟性を保ってもらう効果を期待しています。

この椎間板の柔軟性は、悲しいことに年齢とともに失われていきます。水分が少しずつ失われていくからです。このことで骨と骨との間隔が狭くなり、若い頃よりも身長が縮んだということが起きるのです。

かくいう私も、すでに2センチ近く、若い頃より身長が縮んでいます。当然、柔軟性が失われると、動きにも影響が出ます。

日常生活では「限られた方向」へ「限られた範囲」でしか背中や股関節を動かさなくなることが、本来のクッションとしての働きを弱め、それが腰痛の一番の原因になると思います。

腰痛を訴える方のほとんどは、骨盤をうまく揺らすことができなくなっています。骨盤を無理なく揺らせるようになることが、そのまま腰痛の改善・予防につながるのです。

力みすぎてもいけません

とはいっても、これらの動きはあくまでも体の自然な範囲で動かすことが大事です。

我々の悪い癖ですが、やれと言われると頑張りすぎて、もっと強く、もっとしっかりと意気込んで、歯を食いしばってしまいがちです。これでは何の効果もありません。

ここで紹介した動きは、背骨を構成する20数個の骨と骨盤を普段あまり使ってない方向に丁寧に優しく動かすことで、関節をさび付かせてしまわないようにすることが目的です。

力んでしまって、全身が連動しないような動かし方では、逆効果となりますので要注意です。「お尻を動かしてください」と強調すると、そこに意識が引っ張られて、背骨や肩甲骨を固めてしまう方がいます。大事なのは、全身がつながって動く感覚をつかむことです。

くれぐれも頑張りすぎず、自分の体の動きを楽しんでください。

※本連載は毎週月曜日と木曜日に掲載する予定です。