天気予報もAIが高精度にこなす時代になる:Google DeepMindの研究成果がもたらす波及効果
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一見しただけでは何がすごいのか分かりにくいニュースですが、これはすごいニュースです!
スーパーコンピューターで数時間かかってようやくはじき出される数値演算よりも精度が高いような予報が、ノートパソコンでわずか1分で出力できるというものになります。
今までは物理法則の数式をもとに、それをいかに細かく計算し、また地球規模に展開して広げるか、ということが天気予報におけるテーマでした。世界初のコンピュータといわれるENIACにより初めて数値予報が成功し、現代では地球全体をおよそ10日ほど先まで数値予報を行うことができるようになっています。ただ、コンピュータが桁違いに進化したとはいえ、その程度です。
なぜこれほどまでにコンピュータの進化を必要とするかといえば、基本的な物理法則を無視しては正確な予報ができないという、言ってしまえば当たり前の考え方によるものでした。ところが近年のAIの進化により、細かな物理法則についていちいち計算しなくても割と精度の高い予報が出せるのではないかという試みが始まり、各国でAI天気予報合戦の様相を呈しています(プレイヤーは主に米国と中国で、日本は残念ながらほとんど蚊帳の外でした)。
AI天気予報においてベンチマークとなっているのが、数値予報モデルとしては精度が高いと名高い、欧州中期予報センターのモデルです。各国の数値予報モデルを比較する中で平均的な精度が最も高いとされており、私も全体的な大気の場の流れを確認するときにはまず内容を確認するモデルです。これと同じかそれ以上の精度の計算がわずか1分というのは驚きですし、今までの地道な数値予報の取り組みは何だったのかと落胆するほどの衝撃もあります。
しかしよく考えれば、今までも数値予報モデルの出力結果に対し、人間が経験で補正するということは多く行われていました。自分も数値予報モデルの結果をそのまま受け取るのではなく、モデルによる再現が苦手な現象は特に注意して補正して捉えるように心がけていました。これはまさにAI天気予報が行っていることであり、そう考えればAI天気予報は「お天気博士」をパソコン上に再現したようなものと考えることもできます。
基本的な物理法則によるアプローチと、お天気博士によるアプローチ、これからはその二つをうまく組み合わせて天気予報を行うようになるのでしょう。