(ブルームバーグ): トヨタ自動車は2日、2021年に日本製鉄がトヨタを提訴した電磁鋼板に関わる特許権侵害訴訟について、日鉄側が請求を放棄したため、同訴訟は終了となると発表した。

発表によると、トヨタは日鉄から電動車のモーターに使用する中国・宝山鋼鉄製の電磁鋼鈑に関わる特許権侵害があるとして、3件の特許権侵害訴訟を提起されていた。その後、特許権の侵害の有無について審理が行われていたが、日鉄が2日に全ての訴訟にかかる全ての請求を放棄したという。

国内最大の鉄鋼メーカーである日鉄が長年の取引関係にあるトヨタを相手に起こした訴訟は、伝統的に自動車メーカーが優位だった仕入先との関係に変化が出ている兆しだとされた。トヨタも日鉄も二酸化炭素(CO2)排出削減に向けた技術開発は待ったなしの状況で、今回の訴訟終了を受け両社が密接な協力関係を築いていけるかが注目される。

ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達夫アナリストは、両社の間に「しこりを残すとは思えない」と指摘する。その上で、今まで頂点に君臨しながら一方的な値引きを仕入先に要求していた自動車メーカーも、原材料高が続く中で「こればっかりではいけない」ことを学び、応分の負担をする新しい関係になるとの見方を示す。

トヨタは発表文で、「自動車業界の黎明(れいめい)期から長く支えていただいているサプライヤー、技術の変革に伴い新たな取引を始めた新規サプライヤー」などさまざまなステークホルダーの支援を受けながら業界を超えて未来に向けた取り組みを進めていくとコメントした。

一方、日鉄は自動車業界を含めたパートナーなどとの脱炭素などの分野での共同の取り組みをさらに強化していくとコメントした。また、「技術開発の成果としての知的財産権を守り抜くとともに、良質な鉄鋼製品を世界に供給することで、社会の発展に貢献」していく考えを示した。

日鉄の発表によると、三井物産と同社子会社三井物産スチールについても特許侵害を理由とする損害賠償請求訴訟を提起していたが、同様に請求を放棄するとした。宝鋼については、引き続き訴訟の場で知的財産権の保護を図っていくという。

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(背景情報などを追加して更新します)

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