戸籍の性別変更、手術要件は違憲 最高裁初判断、生殖能力喪失巡り
コメント
注目のコメント
大きな前進ですが、大きな論点が残っています。
性同一性障害特例法(現行法)は、戸籍上の性別の変更に以下の5つの要件をあげています。
①18歳以上であること
②現在結婚していないこと
③未成年の子がいないこと
④生殖不能要件:生殖腺(卵巣や精巣)がないこと又はその機能を永続的に欠くこと
⑤外観要件:変更する性別の性器に似た外観を備えていること
④と⑤を実現するには手術が必要とされるため、あわせて「手術要件」と言われてきました。
今回、最高裁が判断したには④が違憲であるということ。したがって、この要件を満たさずとも性別変更が可能になります。
しかし、⑤は違憲判断がなされず、一旦高裁に差し戻しました。高裁で改めて⑤の具備が検討されますが、もし要件を満たしていないとされれば、もう一度最高裁に上がってきて⑤の違憲性が判断される可能性があります。
⑤外観要件が違憲とされずに残されたままだと何が起こるかというと、トランスジェンダーの中でもトランス男性(FTM)は外観要件を具備するのに手術が不要なのに対して、トランス女性(MTF)は手術が必須なので、トランスジェンダーの中でも人によって手術の要否が変わってくる問題が生じます。そのあたりを踏まえて、今回の最高裁の決定では、3人の裁判官が⑤外観要件も違憲というべきと反対意見を出しています。
そもそも自身の内心の性と戸籍上・社会的な認知としての性が一致しない場合に、その一致を求めるために身体的な手術を強制させるというのは相当な合理性が必要です。(そしてそれはないと私も考えます)
この要件がなくなることと、社会的な混乱(公衆浴場・トイレの問題等)が起きることは全くイコールではなくいくらでも共生のための対応方法があります。一個人の生き方にどう社会が寄り添えるかという問題です。性的マイノリティの問題の中でも、同性婚の実現に向けた歩みは遅いのに、トランスジェンダーの方はそれに比べると早く動いています。2003年に今回問題となった性同一性障害特例法が制定され、戸籍上の姓の変更が認められるようになりました。こうしたことが起きるひとつの背景は、トランスジェンダーの一部が「病理」として「医学による治療の対象」となっていることがあげられます。「病気」なので「救済」へと直結しやすいのですが、同性愛は当然「病理」ではないために、個人の問題とされ救済の対象からもれ落ちやすいのです。
性同一性障害特例法により戸籍上の性別を変えるには性別適合手術が必要
↓
性別の変更に手術を強要するのは人権侵害として違憲訴訟提起
↓
2019年に最高裁で合憲判決「社会の混乱」「現時点では合憲」、裁判官2名「違憲の疑い」
↓
本日、最高裁が生殖不能要件は違憲と判断
性別適合手術を必要とする4号要件がないと、戸籍上男性の母親と戸籍上女性の父親が生まれることになり社会が混乱するという理屈に対し、現に子を持つトランスジェンダーは社会に存在するし法の不備だという論争でした。
トピックスにて、実際の最高裁の判決文をもとに解説しました。ネット上で問題になっている「男性器のある人が女子トイレや女風呂に入れるのでは?」という疑問についても答えます。
https://newspicks.com/news/9096746/body/